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電気自動車のヒーター

低位発熱量(LHV)と高位発熱量(HHV)が区別されていない提言?

を9月24日に書いたのですが、その時に引用した産業技術総合研究所の櫻井氏のtwitterの記事は、その後に大幅に修正されました。

 水素発熱量:高位発熱量
 発電効率:低位発熱量

で計算するというミスも修正され、低位発熱量ベースで統一されています。その結果、「水素を自動車に利用するならFCV(燃料電池車)ではなく、ガスタービンCC(コンバインドサイクル)で発電しEV(電気自動車)で利用した方が高効率」という結論も「同じくらい」に修正されました。

 現在の櫻井氏のtiwtter。
Keiichiro SAKURAIさんはTwitterを使っています 「水素1kg=33.3kWh(LHV) (33.3-5)/33.3=85% 402x1.6/5.6x0.85= 輸入水素1kgあたり98km走れる。 留意点:輸入からタンク充填までの損失・消費電力の見積もりが大雑把。 (もっと良いデータがあれば、このコメントにぶら下げます)」 / Twitter

 で、次のようにも書いています。
「なお水素を発電所で電力に変換するなら、熱も同時に利用して、さらに全体の効率を上げることも可能です。車ですと、冬期に暖房に利用するぐらいになります。」

 「ぐらい」ということですから、

「なお水素を発電所で電力に変換するなら、熱も同時に利用して、さらに全体の効率を上げる」

の方が

「車ですと、冬期に暖房に利用するぐらい」

より効果がある、という櫻井氏の意識が見えるように思います。


 さて、電気自動車の暖房=ヒーターについて、こちら
三菱i-MiEVの性能評価と効果的な活用策 (chuden.co.jp)
では三菱自動車のiMievの市街地実走行時航続距離を

空調未使用   約160km
クーラー使用時 約120km
ヒーター使用時 約80km

としています。この数値の元データは三菱自動車の資料です。

 FCVではFC作動後にはFCの廃熱をヒーターとして利用できますが、EVでは電気ヒーターを使用するため、これが電力を消費し、航続距離が大幅に低下するのです。また、低温になると、電池の性能が低下することも影響しているでしょう。
 もちろん、どの程度ヒーターを使用するかは気温等によります。

 仮にヒーターを使用する期間を年間3か月とすると、航続距離は年間平均

 (160×3+80)/4=140km

となり、

140/160=0.875 

 年間平均では航続距離が12.5%低下することになります。

 さて、櫻井氏のtwitterの計算ではGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)の発電効率を60%と50%(何れもLHV:低位発熱量ベース)で計算していますから、ガスタービンの廃熱は蒸気タービンの熱源になっており、排気ガス、排水の温度は100℃以下になっています。
100906325.pdf (nedo.go.jp)

 この排気ガス、排水の廃熱を近隣の工場等で利用できればいいのですが、100℃以下の熱源を利用できる需要には限りがあります。
 
 低温熱源から発電する方法として、バイナリー発電、熱電対等がありますが、発電効率60(50)%のGTCCの損失:40%(50%)からどの程度の電気エネルギーを回収できるものでしょうか?


 電気自動車の電気ヒーター(ヒートポンプではない)利用による航続距離低下に対抗するためには、GTCCの発電効率60%を

60/0.875=68.6%

まで高める必要がありますが、GTCCの廃熱利用でそこまで高められるのなら、とっくの昔に行われているように思います。


 なお、 電気自動車でヒーター熱源にヒートポンプを使用するものもあり、この場合はヒーター使用時の電力消費をかなり抑制することができます。ただし、ヒートポンプのCOP(成績係数:発生熱量/消費電力)は外気温に大きく左右され、低温になればなるほど低下することに注意が必要です。



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0W16/0W17のフレーム等(1)

 1973年と1974年の0W16/0W17のフレーム、スイングアームはよく似ています。これはアゴスチーニの1974年型0W16。

 赤、黄、青がそれぞれ1本のパイプです。

 これはTZ350。

 パイプの取り回しが異なることが分ります。

 上の写真でもスイングアーム形状が分ると思いますが、下は異なるアングルから見た1974年型TZ350のスイングアーム。後端が板状になっていますし、クッションユニット取付部より前もきれいな箱型ではありません。

 というより、下写真で分るように板状スイングアームの外側・後車軸前側に別の構造物が溶接されています。


 一方、Teuvo Länsivuoriの1973年型0W16のスイングアーム(登場したオランダGPでの写真)は、きれいな箱型です。

 
 ですから、1973、1974年の0W16/0W17とTZ350/TZ250の車体は全く異なるものです。

 なお、1973年シーズン前半にサーリネン、金谷が使用した0W17のフレーム番号は

0W16-B-305
0W16-B-306
0W16-B-307

だと思います。
 そして、この3台がLänsivuoriに与えられ、1~2台が0W16(350㏄)に改修されたのではないかと思います。

 なお、0W17なのに打刻が0W16と考えたのは、0W16/0W17の2機種のフレームは共通で、2機種の開発計画の計画名が0W16だったことによります。0W20のフレーム打刻が0W19なのと同じです。
OW20-OW23 YAMAHA (ganriki.net)

 また、フレーム番号301~304の0W17がサーキットの現場で用いられなかった理由は、GPに持ち込まれた0W20のフレーム番号が302~304だったからでしょう。仮に250のフレーム番号が0W16-B-302なら、チーム内で単に「302」といった場合、500なのか250なのか区別できなくなるからです。







ヤマハ0W16/0W17エンジン

 前に書いたように、私は0W16/0W17エンジンは、TZ350/TZ250のプロトタイプというべきYZ634/YZ635エンジンのボアピッチ、軸配置等を受け継ぎ、0W19/0W20も参考とし、YZ634/YZ635よりコンパクトになるよう再設計されたものと考えています。
JFRMCブログ ヤマハ0W16/17エンジンとTZ350/TZ250エンジンの差異(2) (tou3.com) 
 このため、0W16/17エンジンとTZエンジンは同じ2ストローク水冷並列2気筒で、クランクシャフト右端ギアで同じ、クランクシャフト→変速機メインシャフト→変速機カウンターシャフトの3軸構成なのも同じです。吸気制御もピストンバルブで同じ。

 
 そして、0W16のボア×ストロークは、当時のヤマハニュースでは64×54mm(TZ350と同じ)とされています。
141_YamahaNews_J_1975.pdf (yamaha-motor.com) (20頁のYZR350の記事)

 0W17のボア×ストロークの公式数字は見当たりませんが、56×50mmとする海外記事があります。私はTZ250と同じ54×54mmだった可能性はあると思います。

 さて、(これも前述のように)TZと異なり0W16/0W17の回転計ケーブル取付部はクランクシャフト右端辺りにあります。これはアゴスチーニの1974年型0W16(350㏄)(再掲)。
 
  しかし、1973年型0W16の回転計取付部の形状は異なります。シーズン中、オランダGPで登場したLänsivuoriの1973年型0W16(写真のレース名不明)。

http://home.kpn.nl/twostrokes/images/OW16teuvo.thu.JPG

 水ポンプ作動部、回転計ケーブル駆動部が並んでいます。おそらく1973年型0W17(250㏄)もこれと同じでしょう。

 また、シリンダーヘッド端に段があるのは下の1973年型0W17(250㏄)と同じですが、右前・右後端(左前・左後端)のナット(スタッドボルトに繋がる)の座面の高さが異なります。


 そして、1974年型0W16ではシリンダーヘッド端の段はなくなり、1975年型0W16/0W17も同様です。1975年型0W16/0W17の回転計ケーブル取付部も1974年型と同じです。
 1975年型0W16のシーズン前公表写真。






低位発熱量(LHV)と高位発熱量(HHV)が区別されていない提言?(10/3追記)

 以下の記事の前に、低位発熱量(LHV)と高位発熱量(HHV)についてはこちら。
発熱量 - Wikipedia
・・・・・・・
産業総合研究所・櫻井啓一郎氏の

Keiichiro SAKURAIさんはTwitterを使っています 「水素1kg=33.3kWh(LHV) (33.3-5)/33.3=85% 402x1.6/5.6x0.85= 輸入水素1kgあたり98km走れる。 留意点:輸入からタンク充填までの損失・消費電力の見積もりが大雑把。 (もっと良いデータがあれば、このコメントにぶら下げます)」 / Twitter


で、水素を自動車に利用するならFCV(燃料電池車)ではなく、ガスタービンCC(コンバインドサイクル)で発電しEV(電気自動車)で利用した方が高効率だと主張されています。
(注:いつの間にか元記事が修正されており、この主張も修正されています)


 で、ガスタービンCCが高発電効率である根拠として、こちらの資料のP20を示しています。
アンモニア燃料システム状況報告 (pref.aichi.jp)

 P20の資料はこれを指すのでしょう。三菱パワーの製品です。

 「GT」はガスタービン単体の発電出力で、CCはコンバインドサイクル(GT+排熱利用蒸気タービン)発電出力です。

 さて、19頁に発電プラントの出力と発電効率の関係について、GTW 2014 Gas Turbine Handbookから作成した図が示されています。

 縦軸のEfficiencyはLHVによるものです。20頁の表で示された製品の発電効率はこれを少し上回る程度ですので、20頁の表の発電効率もLHVによるものでしょう。
 実際、三菱パワーのウエブサイトでは、はっきりLHV基準と書いてあります。
三菱パワー株式会社 | M701J シリーズ (mhi.com)
 発電効率は高位発熱量基準でなく低位発熱量基準で示した方が高くなります。

 さて、twitterでは、水素の発熱量1kg=39.4kWhとしています。

 水素の発熱量について、こちら
☐ 文献の整理 (jari.or.jp)
では、

LHV:120MJ/㎏ HHV:142MJ/㎏
となっています。MJをkWhに換算すると
LHV:33.3kWh/㎏ HHV:39.4kWh/㎏
になります。ですから、twitterの水素発熱量は高位発熱量です。

 twitterの記事は、水素のエネルギーを高位発熱量で示したのに、発電効率は低位発熱量ベースで示しているのです。

 twitterでは
FCV
 115km走行/充填水素1kg(輸送・貯蔵・充填等の損失は?)
EV ModelS LR
 147km走行/輸入水素1kg

ですが、水素発熱量を低位発熱量にして計算し直すと、
 147×33.3/39.4=124km/kgになり、FCVとの差は小さくなります。ここまで差が小さくなると、発電所の部分負荷時の発電効率低下、負荷変動そのものに消費されるエネルギー、急速充電時の充電効率の低下、走行時の気温変化による燃料電池、蓄電池の効率変化等々はもちろん、自動車の生産に消費されるエネルギーも十分考慮する必要があるでしょう。
 
 まあ、高位発熱量と低位発熱量の区別という基本が押えられていない提言は無視するに限ります。

(10月3日追記)
 いつの間にか、元のtwtterの記事が大きく修正されていますね。水素の発熱量もLHVで計算し直されています。

 元記事と同じ計算過程はこちらに残っています。
https://twitter.com/kei_sakurai/status/1440311949217046535


ヤマハ0W16/17エンジンとTZ350/TZ250エンジンの差異(2)

JFRMCブログ ヤマハ0W16/17エンジンとTZ350/TZ250エンジンの差異 (tou3.com)

 で書いたように、TZ350/250ではクランクケース後部にある回転計ケーブル取出部が0W16/0W17にはありません。
 0W16/0W17では回転計ケーブルはクランクシャフト右端からギアで作動されます。これはアゴスチーニの1974年型0W16(YZR350)。

 右上に伸びている明るい色のケーブルが回転計ケーブルで、クランクシャフト→平行シャフト→ウォームギアで作動されます。
 その左上の黒色のケーブルがクラッチケーブルです。TZではこの撮影位置からクラッチケーブルは見えません。クラッチ作動機構も異なるのです。

 これはTZのパーツリストの図。

 クラッチケーブルが32ジョイントを介して26プッシュスクリューを引っ張ると、プッシュスクリューが回転し左側にずれプッシュロッド(番号なし)を押しクラッチが切れます。
 
 0W16/0W17は、同時期に登場した0W19/0W20(700/500)、0W19をベースとしたTZ750と同じクラッチ作動機構です。
 これはTZ750のパーツリスト図。

 クラッチケーブルが33プッシュレバーを引っ張ると30プッシュレバーアクスルが回転しプッシュロッド(番号なし)を押しクラッチが切れます。ですから、0W16/0W17ではプッシュレバーアクスルが収まる部分がクランクケースにあります。
 これは1975年型0W17(YZR250)(再掲)。

 前チェーンスプロケットの前にプッシュレバーアクスルが収まる部分が写っています。

 さて、これは前出のアゴスチーニの1974年型0W16エンジンを拡大したもの。

 黄色矢印が指すのがクランクシャフト右端が収まる部分ですが、これとクラッチの位置関係からすると、
Yamaha Racing Motorcycles: All Factory and Production Road-Racing Two-Strokes from 1955 to 1993 by Colin MacKellar, The Crowood Press  
の「engine running backward, and an extra jackshaft driven from centre of crankshaft」
は誤りで、各軸配置等は(キックシャフトの有無を除き)TZと同じで、クラッチギアはクランクシャフト右端ギアから直接駆動されると考えられます。

 ただ、このエンジンの外観は下のTZエンジンとはかなり異なり、クランクケース上下方向がコンパクトになっているように見えます。

モトパドック キムラ TZ350エンジン (fc2.com) 

   次に、これはサーリネンの1973年型0W17。

 シリンダーヘッド左端(写真手前側)に段があります。これは1973型0W20(YZR500)の2種類のシリンダーヘッドのうち、下のシーズン前公開写真、実戦時のものによく似た形状ですし、シリンダー形状も吸気ポート周辺を除けば0W20によく似ています。

シーズン前公開写真


 おそらく第1戦フランスGP。
 
 私は0W16/0W17エンジンは、TZ350/TZ250のプロトタイプというべきYZ634/YZ635エンジンのボアピッチ、軸配置等を受け継ぎ、0W19/0W20も参考とし、YZ634/YZ635よりコンパクトになるよう再設計されたものと考えています。



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