レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
ヤマハ0W69について、ヤマハ 1984年 YZR700(0W69) - コミュニケーションプラザ | ヤマハ発動機(リンク) は、
「~翌84年にはスライド式YPVS、サブラジエーターなどを加えて中低速域の扱いやすさと耐久性を高め~」
としています。確かに現存する0W69のYPVS(ヤマハパワーバルブシステム)はスライド式です。
RACERS Volume 02(三栄書房2010)では
「'84年にはYPVSを鼓型からスライドバルブに変更したり」(79頁写真説明)
「YPVSのバルブをスライド式に変更したり~」(80頁本文)
と、1983年型0W69は鼓型バルブのYPVSだったとしています。
しかし、0W69のシリンダー、シリンダーヘッドは長いスタッドボルトでクランクケースに組付けられますが、鼓型パワーバルブではスライド式パワーバルブより幅(マシンの進行方法を縦として)が大きくスタッドボルトが邪魔です。
1981年に登場したスクエア4気筒・0W54、翌年の0W60の何れも共締ですが、そもそもスクエア4気筒で分離締あれば、スクエアに配列された各気筒の4気筒中央寄りの4つのナットの脱着ができません。といって、シリンダーの4隅の場所によって締付方法が異なればピストン焼付の原因になりかねません。
スクエア4気筒のYPVSは、YPVSの性能・特性以前の問題でスライド式にならざるを得ないのです。
ですから、ヤマハが「スライド式YPVS~を加えて」としているのは、1983年型0W69が鼓型YPVSだったことを意味するのではなく、1983年型0W69はYPVS無装着だったことを意味している可能性が高いと考えます。
2009年にコミュニケーションプラザに展示されていた0W69のマシン説明板では
0W69のベースとなったマシンを0W54と誤っていますが、1983年型では「~排気量をアップし、加速・最高速性能を向上('83年型0W69)」とし、YPVSについて書かれていないのはこのためでしょう。