レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
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出典は
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。
次にフリクションについて見てみます。
Fig.3.1に市販NR75とVFR750のフリクションロスが出力で示されています。例によって曲線から数値を読み取り、それからトルクを計算して曲線を作成しました。横軸がrpm/100、縦軸はフリクショントルク(kgf・m)です。なお、3000rpm以下では2つのエンジンの違いが読み取れないので、ここでは4000rpm以上を示しました。
NR750のフリクションが小さいことが分りますが、これが真円ピストンV型8既往に対するメリットかどうかはこのグラフから分りません。というのは、この曲線は同一排気量で気筒数が異なる場合によく見られる傾向です。
エンジンの摩擦損失 (ganriki.net)で示したように、フリクションは
低回転:気筒数小<気筒数大
高回転:気筒数小>気筒数大
です。
、
Fig.3.1で読み取れなかった3000rpmでの比較は、出典Fig.3.4で示されていますが、NR750の方が大きいことが分ります。数値を読み取ると
NR750:2.5kW
VFR750:2.4kW
と、
低回転フリクション:気筒数小<気筒数大
になっています。
なお、Fig.3.4での「バルブ駆動ロス」、「ポンピングロス」、「その他」の配分は誤りです。
バルブ駆動ロス(トルク)は回転数上昇に伴って「減少」するので、バルブ駆動ロス(出力)が大きく増加することはないはずですが、Fig.3.4では
NR750:0.77kW(3000rpm)→9.35kW(12000rpm)
VFR750:0.72kW(3000rpm)→12.7kW(12000rpm)
と増加しています。トルクに換算すると
NR750:0.25kgf・m(3000rpm)→0.76kgf・m(12000rpm)
VFR750:0.23kgf・m(3000rpm)→1.03kgf・m(12000rpm)
と回転数上昇に伴って大きく増加しています。明らかに誤りです。
こちらの図5では、バルブ駆動ロス出力は回転数増加で大きく変化していません。
http://www.jsae.or.jp/~dat1/mr/motor26/mr20072616.pdf
なお、フリクションの合計値は出典Fig.3.4と同じですので、Fig.3.4の合計値そのものは正しいと思われます。
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出典は
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。
Fig.3.2から有効開口面積を比較してみます。 本文中に「バルブの最大リフトが1.4mm低いにもかかわらず、(VFR750より)29%大きな開口面積が得られた」とあります。 まず、Fig.3.2に表示されたNR750とVFR750の有効開口面積の最大値を比較すると、NR750:7.14c㎡(8mmリフト)VFR750:6.20c㎡(9mmリフト)で、NR750が15%大きいに留まります。なお、グラフからの数値の読み取り誤差にご留意ください(以下、同じ)。
VFR750の最大バルブリフトを9mmとすると、「バルブの最大リフトが1.4mm低いにもかかわらず」からNR750の最大バルブリフトは7.6mmになりますから、NR750の有効開口面積はこれより若干小さくなりますが、それでも「15%」は変わらない程度です。
次に平均有効開口面積を見てみます。最大バルブリフトをNR750:7.6mm、VFR750:9mmとすると、平均有効開口面積は
NR750:4.86c㎡
VFR750:4.05c㎡
になり、NR750が20%大きい結果になります。(読み取り誤差を考慮しても)「29%大きな開口面積」には程遠い数字です。
仮にFig.3.2において、NR750もVFR750も同じ8mmバルブリフトで比較すると、平均有効開口面積は
NR750:4.86c㎡
VFR750:3.79c㎡
になり、NR750が28%大きい結果になり、「29%大きな開口面積」とほぼ同じです。
さらに同じ7.4mmバルブリフトで比較すると
NR750:4.86c㎡
VFR750:3.67c㎡
と、NR750が32%大きい結果になります。
「29%大きな開口面積」は、NR750とVFR750の最大バルブリフトの差・1.4mmを無視した評価なのかもしれません。
NR750のバルブ面積が5.8%しか大きくないのに、有効開口面積が29%も大きくなるのは不思議です。例えバルブリフトを大きくとり、(出典中にあるように)NR750の「シリンダーによるマスク効果が小さい」としても。
なお、Fig.3.2から、バルブリフト7.4mm時のNR750と(仮想)8気筒との平均有効開口面積を比較すると、NR750が10%大きいという結果で、出典の12%とほぼ同じでした。
出典は
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。
VFR750と比較し市販NR750の体積効率が低い回転数域が広くなっていることに関し、吸気管、排気管の形状、サイズ以外の要因の2つ目は
(2)市販NR750のバルブ面積、バルブ開口面積はV型8気筒としては小さい
です。
出典の本文中に「NRの吸気バルブの全周長がVFRに比べて45%も長い」とあります。NRの吸気バルブ径は20mmですので、VFRの吸気バルブ径は27.5mm辺りになります。
VFR750の吸気バルブ径を27.5mmとし、バルブ面積を比較すると
NR750:50.3c㎡
VFR750:47.5c㎡
で、NR750の吸気バルブ面積はVFR750の5.8%増に留まります。
本来、4気筒・バルブ径27.5mmエンジンを8気筒化すれば、バルブ径27.5mmを2の1/3乗で除して
バルブ径:21.83mm
バルブ面積:59.9c㎡ (VFR750の26%増、NR750の19%増)
を確保できるにも関わらず。
NRの評価 HONDA (ganriki.net)
でも書きましたが、NR750のバルブ径は当時の一般市販車レベルより小さいのです。
さて、出典のFig.3.2に次の図があり、本文では吸気バルブの有効開口面積で比較しています。
縦軸が「Geometrical~」になっていますが、これは誤りで、
http://www.jsae.or.jp/~dat1/mr/motor26/mr20072616.pdf
では、「Effective Opening Area」になっています。そもそもGeometrical~がこんな曲線になるはずはありません。
(続く)
出典は
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。
前回お示ししたように、VFR750と比較し市販NR750の体積効率が低い回転数域が広くなっています。体積効率は特に吸気管、排気管の形状、サイズが大きく影響しますが、ここでは他の要因として2つのことを指摘します。
(1)2吸気口が近接し、かつ同時に吸気する
V型8気筒であれば各気筒の吸気行程は90度ずつずれています。しかし、NR750はV型8気筒を2気筒ずつ連結したような形のため、その2気筒分の吸気行程が重なっています。しかも、2気筒分繋いだために2気筒に比べシリンダー幅が18%短くなり、吸気口が隣接してしまいます。
こちらに写真があります。
Honda NR750 fixing no.2 修理 その2 : SHINYO MAG / シンヨ マグ (livedoor.jp)
このため、2ストロークV型4気筒で同時点火にしたのと同じことが起きると考えられます。
JFRMCブログ 同時点火化による出力低下(2) (tou3.com)
JFRMCブログ 同時点火化による出力低下 (tou3.com)
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)
中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」のFig.3.3で、市販NR750とVFR750の体積効率が比較されています。
体積効率については、
体積効率 [JSME Mechanical Engineering Dictionary]
このFig.3.3の数値を読み取り、再現してみました。横軸はrpm/100、縦軸が体積効率(%)で、赤線がNR750、黒線がVFR750です。10000rpm以下でのNR750の体積効率の低さが目立ちますね。
例によって、横軸を各エンジンの最高出力発生回転数比で整理しました。幅広い回転数比域でVFR750>NR750です。
これにトルクを重ねます。左縦軸が体積効率(%)、右縦軸がトルク(kgf・m)。
回転数比0.65前後で、2機種の体積効率とトルクの関係が変化することが分ります。