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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

ヤマハ250/350㏄市販レーサーのクランクケース(10)

 実は73~75TZのクランクケース形状がよくわかりません。現存するマシンではレストア、リビルドの段階で他機種・年式のクランクケースを流用しているものもあるでしょう。そもそもレーシングマシンではエンジン積替えが実戦時に行われるのが常ですから、現役を退いた段階でオリジナルのクランクケースでなくなっていることは珍しくなかったと思います。

 このTZ350もフレーム番号からすると74年型のようですが、


アッパークランクケース左上面の形状、


クランクケース左後下の赤矢印のリブの形状、
 
そして、クランクケース右前端に使われないネジ孔部分があること(写真なし)からすると、クランクケースは76年~TZのものではないかと思われます


 ただ、クランクケースの部品番号はTD/TRと73~75TZで共通です。そして、TD/TR、そしてTZプロトタイプというべき72年のYZ634/YZ635の幾つかの写真からすると、TD/TRと73~75TZのクランクケースは共通のようですし、上のアッパークランクケース左上面の形状、クランクケース左後端のリブはTDでは見られないのです。

 これらと一般市販車DX/RXのクランクケースは酷似しており、前側フレームマウント部の違い、そして、前回書いたベアリング保持部の溝(サークリップが嵌る)の違いは鋳造後の加工によるものでしょうから、DX/RXとTR/TR・73~75TZのクランクケースの鋳型は同じではないかと思われます。

 
 では、DX/RXとTD/TR・73~75TZのクランクケースの違いは鋳造後の機械加工の差だけなのでしょうか?
(続く)
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ヤマハ250/350cc市販レーサーのクランクケース(9)

   一般市販車と市販レーサーの鋳型以外の違いについて触れておきます。クランクケース前側のフレームマウント部分の違いはすでに書きましたが、クランクケース内側にも機械加工の違いがあります。

 パーツリストを見ると、クランクシャフトをクランクケースに組み付ける時に用いるサークリップの数が、一般市販車と市販レーサーで異なります。一般市販車は右端に1つなのに対して、市販レーサーは75年までは両端に2つで、76年以降はクランク中央のラビリンスシール両側の2つが加わって4つになります。

 これは76年以降のRD400。

 赤矢印がサークリップが嵌る溝で、ロワクランケース上端(アッパークランクケースとの接合面)にも溝が達しています。この溝の外側にもう1つ溝がありますが、オイルシールの一部が噛み合う溝です。72年のDX/RX、73~75年のRDも同じです。

 この溝に加え、72年のTD/TRではクランクケース左にも溝があります。下写真ではクランクシャフト左端のベアリングがあるので分りにくいですが、ロワクランクケース上端に溝が達しています。


 これは73年型TZ350。写真右側がクランク右側(クランクギア装着側)です。TD-3と同様にクランクケース左側のベアリング保持部に溝があります。


 この2本の溝に加え、76年以降のTZでは中央部に溝が2本(計4本)あります。
(続く)

ヤマハ250/350cc市販レーサーのクランクケース(8)

 一般市販車では1976年にクランクケース内部形状も変わりました。
 これは73-75年のRD。


 これは76年型のRD400。

 赤囲みのボルト孔が追加されて、青囲みの孔の形状が変わっています。他にも変化している部分があります。
 なお、外形でも黄色部分が追加され、
黒囲み部分のリブが高くなっています。黄色部分は前回紹介しましたが、黒囲み部分は下(これはTZ)のクランクケース右側の黒囲み部分でリブが高くなっています。

 
この外形変化は76~のTZでも同様に見られます(確実に76年型からとは言い切れませんが)。なお、黄色部分はないものもあります。元からないのか、実戦時に切断したのかはわかりません。

 内部形状に話を戻すと、上のような内部の変化はTZでは見られません。ですから、76年以降のTZとRDのクランクケースは内部形状からも鋳型が異なることがわかります。
(続く)

このマーク

 あるクランクケースのこのマーク、神戸製鋼でしょうか。

ヤマハ250/350cc市販レーサーのクランクケース(7)

  これは1972年のRX350(R5)のクランクケース左後ろ。


 これは73-75年のRDの同じ部分。赤囲み部分のリブが太くなっています。なお、73年の初期のモデルはRX350と同じクランクケースだった可能性があります。
 

 そして、これは76年以降のRDの同じ部分。黄色囲みは前回書いた外形変化部分。
 
 赤囲み部分のリブが消えボルト孔が基部も含めて広げられエンジンマウントダンパーが入り、青囲み部分が増え、白囲み部分の形状が変わりました。
 そして、これは76年以降のTZ。なお、後端の突起状の部分が切断されているようです。

 76~RD青囲み相当部分は同じ(穴の形は違うけど)ですが、76~RD赤囲み・白囲み相当部分は76~RDと異なり73~75RDと同じです。
 つまり、外形からすると76年以降のTZのクランクケースは、基本形が同じとはいえ、76年以降のRDとは微妙に鋳型が異なることがわかります。
 そしてクランクケース内部も違いがあります。

(続く)

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