レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
MOTO-GPマシンのエンジン等で用いられるクランクケース減圧システムですが、
・ホンダRC211Vはオイルポンプ
・ヤマハYZR-M1は排気管負圧
により減圧しています(いました)。
RACERS Vol06(カワサキ特集)62頁では「MotoGPマシンではポンプを用いたり負圧を用いたりして強制的に減圧している。損失低減に積極的なZX-RRでは、ロスを減らすためのポンプによるロスを嫌い、排気負圧を用いた強制減圧システムを採用~」とありますので、ポンプを使用する方がロスが大きいと考えているようです。
では排気負圧を利用する減圧システムではロスがないのでしょうか。連続的に減圧するからには何らかのエネルギーが必要です。当然のことながらこの減圧システムでは排気管の流速を下げる(エネルギー低下)ことになり(排気抵抗を増やしたのと同じ)、排気管だけみれば出力低下のシステムです。もちろん、ポンピングロス低減によりトータルではプラスになります。
まあ、「エネルギー保存の法則」ですね。勝手に何のロスもなしに減圧できるのであれば苦労はしないでしょう。
標題のもの、発売されました。今回はカワサキ特集で、特にX-09の開発史が白眉といっていいでしょう。他にも私が見たことのない写真も少なくなく、嬉しい内容です。ただ、KR500、X-09、ZX-RRとごちゃ混ぜに取り上げているので、まとまりがないというか、掘り下げが足りないというか、そんな感じがします。また、間違った記述があるのはいつもどおりですが、今日は一つだけ指摘しておきます。
48頁に82年型KR500の燃料タンクが、通常のタンクとフレーム内タンクの2つがあったことについて「ただし、これは「燃料は単一の構造体に入れる」というレギュレーションに違反していた可能性が高い。ライバルメーカーは知っていたか、知らなかったか。もし'82シーズン、コーク+KR500が表彰台に登っていたら、レース後の再車検で指摘・問題になっていたかもしれない、いまだから語れるエピソードだ。」とあります。
1982年型のKR500がレギュレーション違反だったとの”ご指摘”ですが、燃料タンクが1つでなければならないというレギュレーションは1983年からのものです。だからこそ1983年のヤマハ0W70が当初、フレーム内燃料タンク+通常の燃料タンクで製作され、レギュレーション変更によりフレーム内燃料タンクは使用されなかったのです。また、1974~1977年当時、ベルギーGP等、高速(エンジン高負荷時間が長い)で長距離のレースでは、シート内に補助燃料タンクを設けたレーサーもありました。
RACERS Vol02で、0W70のフレーム内燃料タンクに触れられているのに、なぜこんなおかしな記述がされるのか不思議です。「カワサキはこんなもの」というライターの意識のせいかもしれませんね。
ところで、レース後の再車検は上位3位だけなのでしょうか?
ホンダRCBの車体設計者、というよりその後のホンダの多くのスポーツバイクの開発に関わられた山中勲さんの本が出版されています。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF%E9%96%8B%E7%99%BA%E7%89%A9%E8%AA%9E%E2%80%95%E5%90%8D%E8%BB%8A%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%BF%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E7%86%B1%E3%81%8D%E6%8A%80%E8%A1%93%E8%80%85%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84-%E5%B1%B1%E4%B8%AD-%E5%8B%B2/dp/4769814836/ref=sr_1_1?s=gateway&ie=UTF8&qid=1285240361&sr=8-1
RCBについての記述は、バイカーズステーションに掲載された記事と比べ、新事実はあまりないように思います。