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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

現存するKR250(4)


61E-054/601F-7803

 RACER Volume42の68-69頁のマシンです。

シリンダーヘッド:1979年型
一体型シリンダー:1979年以前
クランクケース:1981年以前
クラッチカバー:1979年に登場した大穴型ではない。ただし、この小穴型は1979年以降も用いられた。
カラーリング:1979年仕様。それほど奇麗ではないので、撮影時は現役当時そのままか。

 おそらく、1979年シーズン後に日本に返却されたマシンと思われます。

  このマシンは明石に現存しているでしょう。
LIME GREEN - 挑戦者の証し (khi.co.jp)




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現存するKR250(3)



61E-051/601F-7810

 シリンダーヘッド:1978年型
 一体型シリンダー:1979年以前
 クランクケース:1981年以前
 クラッチカバー:1979年に登場した大穴型ではない。ただし、この小穴型は1979年以降も用いられた。
 スイングアーム:1980年に姿を見せた三角型
 カラーリング:1979年仕様 ただし、奇麗すぎるので再塗装されたものか。

 RACERS Volume 42の70頁では、このマシンを「’78年型とされるKHI所蔵の個体。テールカウル形状やスクリーンの大きさなどは間違いないが、リンクに直接接合する三角形のスイングアームは最終の’82年型のみ採用。修復時に再構成された仕様と思われる」としています。

 JFRMCブログ 1980年型KR250のスイングアーム (tou3.com)
 で書いたように三角スイングアームは1980年後半に姿を見せていますから、RACERSの「’82年型のみ採用」は誤りです。そもそも1982年に三角スイングアームのマシンは確認できませんし、できたとしても「1982型=三角スイングアーム」といえるものではなかったことは間違いありません。

 ただし、このマシンは1978年型シリンダーヘッドと1980年型スイングアームの組合せですから、「修復時に再構成された仕様」である可能性は十分あります。

 さて、The Ultimate Motorcycle Book by Hugo Wilson,  Dorling Kindersley 1993にこのマシンと思われる写真が掲載されています。ですから「修復時に組み合わされた」とするなら、遅くとも1993年までにこの状態になっていたことになります。

 もう一つの可能性は「カワサキUKチームから日本にマシンを返却する際に、このような形でマシンを組み上げた」です。

 他メーカーの例ですが、スズキが保有する2台の1982年型RGΓ500の1台のエンジンが1981年型なのも、この類の理由ではないかと思います。
 
 「カワサキUKチームから日本にマシンを返却する際に、このような形でマシンを組み上げた」と仮定しますと「1981年からカワサキUKチームが500㏄クラスに専念したのになぜ?」という疑問が生じますが、次のことが考えられます。

〇KR250を日本に返却する時点では、1981年のUKチーム500㏄クラス専念は決定していなかった。

 あるいは

〇カワサキUKチームが他のKR250/KR350使用レーシングチームに対してパーツ等を提供するため。「使用する予定がない部品を組み合わせて返却すれば、使う可能性のある部品がイギリスに残る」からです。

 なお、三角スイングアームは1980年後半で確認できますが、バリントンはレース本番では使用しなかったようで、返却対象部品になったとしても不思議ではありません。
 
 どちらにしても、このマシンは実戦で使用された形態(部品の組合せ)ではないと考えます。
 


現存するKR250(2)


TE601-106/601F7802

 クランクケース:1981年以前
 シリンダー/シリンダーヘッド:1980-81年型
 クラッチカバー:小穴型
 スイングアーム:1978-81年型
    テールカウル:1979年シーズン中に登場した新型。ただし、旧型も引き続き用いられた。

 エンジン番号の形式がそれまでの「61E-××」と異なり1982年型(後述)と同じ「TE~」です。1981年頃にはKR1000のフレーム番号は「TF605~」という形式になっていましたので、このKR250クランクケースは新造されたもので、「106」の「1」が1981年を意味するならこのエンジンは1981年型と思われます。

 

ペンションシルバーストーンにあるKR250

 外装は1979年シーズンのスポンサー「AKAI」のステッカーが貼られていますが、スイングアームは1977年型で、エンジンは1977-78年型と思われます。おそらく、このマシンは1977年型でしょう。

 「シルバーストーン KR250」で検索してください。


RMDモータースでfor saleになっていたKR250
(を紹介するブログ)
For sale 1982 KAWASAKI KR250 Racer 〜RMD Motors (inmycab.com)

 エンジンは1982年型。



現存するKR250(1)


61E-057/601F7835

 フレームへの打刻が弱い箇所があって読み取りにくい数字がありましたが、上のフレーム番号が正しいと思います。

 おそらくRACERS Volume 42の71頁のマシンが上の写真の最近の姿でしょう。


 シリンダーヘッド:1980または1981年型
 シリンダー:1980または1981年型
 クランクケース:1981年以前
 クラッチカバー:1979年に登場した大穴型。
 スイングアーム:1980年後半に姿を見せた三角型
     テールカウル:1979年シーズン中に登場した新型。ただし、旧型も引き続き用いられた。
 カラーリング:国内仕様(赤ゼッケン)。 

 私がこのマシンを見たのは1984年です。見た場所を書くのは控えますが、おそらく1982年からその場所にあったと考えています。

 エンジンが1982年型ではなく1980または1981年型であること、三角スイングアームの登場が1980年後半であること等からすると、このマシンは展示用に新たに組まれたものではなく、この状態のマシンが1981年に存在し1982年から某所に置かれるようになったものと考えています。

 RACERS Volume 42ではこのマシンを「'83年向けの先行開発型」としていますが、その前提である「1982年型は三角スイングアーム」は誤りですし、エンジンは1982年型ではないので「'83年向けの先行開発型」は誤りの可能性が高いと考えます。

 さて、このマシンは1980年シーズンと思われる下の公表写真のマシンの可能性もあります。

 カラーリングは1980年のバリントン仕様。




KR250/KR350のスイングアーム(3)

 現存するマシンについて書く予定にしていますが、その前に現存するマシンに時々見られる三角スイングアーム、加えて1982年型スイングアームについて書きます。

 RACERS Volume 42では71頁の三角スイングアームのKR250について「'83年向けの先行開発型。~スイングアーム右側の補強追加、マグネシウム削出しのリンク(ベルクランク)など、足回りのパーツが’82年仕様とは明らかに異なる」、「’82年からはアルミ製の三角スイングアームを採用。’83年先行開発型はマグ製ベルクランク」(72頁)としています。

 また、61頁のマングのゼッケン304KR250の写真に「1982 Daytona」とあります。そして81頁の同じゼッケン304KR250の写真について「’82年型では上部がベルクランクに接合するアルミ製三角スイングアームを採用。♯340はマンクのデイトナ車で~」と書かれています。

 しかし、私は
こちら(リンク)
 で、1980年後半にバリントンのKR250用の三角スイングアームが姿を見せていたこと。そして
こちら(リンク)
 で、1981年のピエルルイジ・コンフォルティのKR250のスイングアームに三角のものがあることを書きました。

 つまり、三角スイングアーム=1982年型ではないのです。

 しかも、RACERSで1982年デイトナとされた写真は、1982年ではなく1981年のものです。1982年のデイトナにマングは出場していません。ライダースクラブ誌1982-5にそのことが書かれています。
 こちらの1982年デイトナの記事にもマングの名前はありません。
Daytona’s 20th Annual International Lightweight Road Race – Rider Files (wordpress.com)
 
 また、1981-82年のKR250/KR350の写真を確認した限りでは

1981年
 世界GP以外で、マング(デイトナ)、コンフォルティのマシンで三角スイングアームを確認できる。

1982年
 三角スイングアームのマシンを確認できない。

です。

 RACERSのライター氏が「1982年型は三角スイングアーム」とした根拠を知りたいところです。まさか、1982年世界GPの写真を確認せず(1981年撮影のものを1982年と勘違いした)デイトナの写真だけを見て、「1982年世界GP第1戦の前のデイトナで三角スイングアームだったから1982年型は三角スイングアームと判断」ではないと思いますが・・・

 さて、1982年、三角スイングアームではなく、1981年までのものに似ている新型スイングアームがマング、バルデのマシンによく用いられました。

 こちらは現存する601F7821のスイングアーム(旧型)。


 これは1982年のバルデの新型スイングアーム。
左後端         右後端
 
 偏心シャフトを締め付けるボルトが2→1本になっていますし、横から見た後端形状も旧型と少し異なります。
 もちろん、これだけではなく(例えば)スイングアーム板厚、内部構造も異なる可能性があります。

 1982年に新型スイングアームを使用したのはマング、バルデで、限られた写真からすると、他のKR250/KR350ライダーのうちJean-Louis Guignabodet、ヘルバート・ハウフは旧型を使用しました。コンフォルティはどちらを使用したのか写真では分りませんが、おそらく旧型でしょう。

 私は次のストーリーではないかと推察します。

1 1980年シーズン後半に三角スイングアームをGPの現場でテストしたがバリントンの評価は低かった。
2 1981年、同じタイプ(あるいは若干の改良を加えた)三角スイングアームのKR250をマングのチームに貸与し、マングが1981年世界GP前のデイトナで使用したが、マングの評価は低く世界GPでは用いなかった。
3 コンフォルティのチームにも貸与されたが、コンフォルティは旧型スイングアームを使用した。コンフォルティは世界GPではイタリア、サンマリノ以外には出場しなかったようだ。
4 三角スイングーアームはこの時点で事実上お蔵入りになった。
5 1982年に(旧型に外見が似た)新型スイングアームがマング、バルデのチームに提供された(フレームも新型の可能性はある)。

 もちろん、このストーリーは、1982年シーズン中に三角スイングアームがマング、バルデのマシンに装着された写真がないことが前提です。



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