https://lrnc.cc/_ct/16798410
について書きます。
「“オーバー・ザ・トン”という言葉を、皆さんは聞いたことがあるでしょうか? このトンとは、マン島TTの周回平均時速100マイル(約160km/h)を指し、オーバー・ザ・トンはそれを超える記録を意味します。」
トンは100mph(マイル/時)の意味ですので、そこに「マン島」の意味はありませんし、オーバー・ザ・トンだけで「周回平均時速100マイル突破」の意味になりません。「周回平均時速100マイル」を言いたいなら、「ラップ・オーバー・ザ・トン」 、「〇周目にオーバー・ザ・トン」のように1周であることを示す単語が必要です。
加えて言うなら、レース(複数周回数)の平均速度でもオーバー・ザ・トンと表現されることがあります。
「(1957年500㏄クラス)ジレラ4気筒を駆るマッキンタイアは、MVアグスタ4気筒、モトグッチV型8気筒(!)などの強力なライバルを退け、ついにマン島TT史上初のオーバー・ザ・トン=平均時速101.12マイルを達成して優勝します」
1957年のセニアクラス(500㏄クラス)は50周年のために例年の6周ではなく8周で行われたのですが、初のオーバー・ザ・トンは2周目に達成されました。そのタイムは22分24.4秒で101.03mph(1周37.73マイルで計算)です。
101.12mphは4周目に記録したこのレースの最速ラップ速度であって、「初の」オーバー・ザ・トンの速度ではありません。
「~ホンダは、1965年のマン島TTでJ.レッドマンが350cc、250ccの両クラスでオーバー・ザ・トンを達成。6周の350cc決勝でのレッドマンの優勝タイムは、500cc王者のマイク・ヘイルウッド(MVアグスタ)よりもはるかに速いものでした。もっとも500ccクラスではライバル不在で、ヘイルウッドがペースを上げる必要がなかったこともありますが・・・」
ジュニア(350㏄クラス)でのラップ・オーバー・ザ・トンが1965年にレッドマン(ホンダ)によって達成されたかのように書かれていますが、誤りです。350㏄のレース(6周)タイムの初オーバー・ザ・トンは1965年ですが、ラップ・オーバー・ザ・トンは1962年にギャリー・ホッキング、マイク・ヘイルウッド(何れもMVアグスタ)によって達成されました。
レッドマン自身は1963年350ccクラスでラップ・オーバー・ザ・トンを記録しています。原文には「初の」と書いていないので誤りではないなどと言わないでくださいね。
また「6周の350cc決勝でのレッドマンの優勝タイムは、500cc王者のマイク・ヘイルウッド(MVアグスタ)よりもはるかに速いものでした」のは、1965年の500㏄クラスでの天候が悪かったこと、ヘイルウッドが1度転倒したことなどが原因です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
350ccレースでの初ラップ・ザ・トンについて触れます。
MVアグスタに乗るマイク・ヘイルウッドはゼッケン3、ギャリー・ホッキングはゼッケン6で、ヘイルウッドが10秒先にスタートします。そしてホッキングが先に1周目を終え、その1.4秒後にヘイルウッドが1周を終え(タイム上は11.4秒の遅れ)、ホッキングが100.90mph、ヘイルウッドが100.05mphで2人共100mphを超えました。先にフィニッシュラインを越えたのはホッキングですが、同じ1周目の出来事ですので、私は350㏄クラス初のオーバー・ザ・トンはホッキングとヘイルウッドの両者が達成したと評価しています。
(続く)
PR