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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

次亜塩素酸 空間除菌脱臭機(1)(修正あり)

あるメーカーの製品について疑問点を書きます。

空間除菌試験の内容
https://panasonic.jp/ziaino/start.html
      
対象 機種 部屋 時間
付着菌 F-MV4100 約18畳 約12時間
浮遊菌 F-MV3000 約6畳 約20分
付着ウイルス F-MV4100 約18畳 約12時間
浮遊ウイルス F-MV3000 約6畳 約20分
風量は両機種とも「強」、電解強度は両機種とも「強」。

1 取扱説明書によると、両機種の仕様は

https://panasonic.jp/p-db/support/manual/jiaensosan/jiaensosan/index.html
「強」風量 連続運転時間 水タンク容量
F-MV4100 6.5m3/min 6.5時間 2.1L
F-MV3000 5.2m3/min 7.5時間 2.1L

 付着菌、付着ウイルスについて見ていきます。試験時間が「連続運転時間」より長いです。連続運転時間は湿度が低いと短くなるということですから、試験中に湿度が(噴霧により)上昇して連続運転時間が伸びたのでしょうか?あるいは水を補給したのでしょうか?

2 上の仕様の使用条件ですと、F-Mv4100では「6.5時間で2.1リットル噴霧」です。室内高を2.5mとすると、室内空間は(18/2)×3.3×2.5≒75m3になります。20℃の飽和水蒸気量を17.2g/m3とすると、75m3では75×17.2/1000=1.3kgになります。噴霧量の方が多いのですが、室内換気はどうしていたのでしょうか?

3 試験は「電解強度 強」、「風量 強」の条件ですが、これでも連続運転時間は変わらないのでしょうか?

4 https://panasonic.jp/ziaino/oshiete.html#resuでは「塩素ガス定量分析」結果が「開放空間および閉鎖空間にて機器を運転し、吹出し空気中に含まれる塩素ガス濃度を測定」、「いずれも検出限界以下(0.1ppm未満)塩素ガスの環境基準は0.5ppm(TWA)」とあります。

 気体で「ppm」ということは「体積/体積」でしょう。吹出し口では次亜塩素酸はまだミストの水滴に含まれた状態だと思いますが、塩素濃度として測定されるのでしょうか?

5 「環境基準」といえば環境基本法に基づくものを指すのが日本の法令と思います。http://www.env.go.jp/kijun/taiki.html

 3でいう「環境基準」は何かと調べると、「(TWA)」とあるので
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000w7bi-att/2r9852000000w7nq.pdf の「ACGIH」のようですね。日本産業衛生学会の許容濃度はTWAではなく最大値です。こちらの「注」をご覧ください。
https://www.sanei.or.jp/images/contents/309/kyoyou.pdf

 EUリスク評価書だそうです。
https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/11872/p/1746,2908,2909/related/1


用語ぐらいちゃんと書いてほしいですね。私的基準ではなく公的な基準なのですから。

 で、塩素0.5ppmは25度1気圧ですと1.5mg/m3になります。

 1のF-MV4100の仕様は
噴霧量:タンク容量2.1L、連続運転時間6.5hrからすると5.4ml/分
送風量:6.5m3/分(「強」の場合)。

https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/11872/p/1746,2908,2909/related/1
では、本体トレー内濃度は10ppmということです。電解強度を3段階に調整できるのですが、10ppmはどの段階の濃度かわかりません。

 噴霧液の次亜塩素酸の塩素分の濃度を10mg/Lとすると、塩素分の噴霧量は10×5.4/1000=0.054mg/分
 吹出し口の塩素分濃度は
 10×5.4/(6.1×1000)=0.0089mg/m3

 部屋の換気を行わずにこれが18畳の部屋に蓄積することを考えます。部屋全体に速やかに均等に拡散し、塩素分が塩素ガスになるとすると、部屋の平均濃度は下グラフのとおり増加します。横軸が時間(分)、縦軸がppm(塩素ガス体積/室内空間)です。


 420分で(メーカーが「環境基準」としている)0.5ppmを越えます。もちろん、これは次亜塩素水濃度50mg/L、換気を行わない、ミストが部屋全体に速やかに均等に拡散し、塩素分が塩素ガスになる条件です。
 室内実験の詳細な条件はどうなっているのでしょうか?
(続く)

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ヤマハ0W54(1981年型YZR500)(11)

 1981年、0W54に乗るケニー・ロバーツはランキング3位に終わりました。0W54にはチャンピオンマシンになるだけの潜在能力がなかったのでしょうか?


 ロバーツが500㏄世界GPに参戦した6シーズンにおけるチャンピオン、レース数、チャンピオンの出走レース数、得点は次のとおり。

年  チャンピオン レース数 出走数 得点   無得点レース数
1978 ロバーツ    11      11    110          2
1979 ロバーツ    11      10    113           1 
1980 ロバーツ     8         8   87(120)           1
1981 ルッキネリ   11      11    105                2
1982 ウンチーニ   11      11    103              3   
1983 スペンサー    12      12   144(132)        1

   
※( )内は11レース換算値。
※レース数:トップライターによりボイコットされた1979年ベルギー、1982年フランスを除いたレース数。
※無得点レース数:出走(スタート位置に着いた状態)したレースで無得点だったもの。

 チャンピオンの獲得得点(11レース換算)を比較すれば、0W54が用いられた1981年は少ない方です。

 81年、ロバーツの得点は74でしたが、サンマリノを体調不良で欠場、オランダでスタート位置に着きながらブレーキ整備不良でスタートできませんでした。これ以外にも、オーストリアは後サスペンションユニット不調でリタイア、ウェットレースだったスウェーデンでタイヤ選択ミスでリタイアしています。また、フランスで後サスペンションユニットの不調、フィンランドではパワーバルブの故障で、リタイアこそしませんでしたが、低順位になりました。

 0W54といえば、嵩張る重たいエンジンが戦闘力を失わせていたといわれています。しかし、チャンピオンの獲得得点がそれほど多くなかった1981年の世界選手権を争う上では、信頼性の低さ(オーストリア、フランス、フィンランド)と不運(オランダ、サンマリノ)がロバーツの足を大きく引っ張ったと思えてなりません。

ヤマハ0W54(1981年型YZR500)(10)

 4ストロークエンジンではクランクシャフトとシリンダーヘッドの位置が、エンジンの重心高を大きく左右しますが、2ストロークエンジンではシリンダーヘッドは小さく、クランクシャフトの搭載位置が重心高に大きく影響します。

 これは、1980年シーズン前に竜洋テストコースで公開されたスズキXR34(1980年型スズキRGB500)で、前後車軸を結ぶ空色線と、これと平行なクランクシャフト中心を通る黄線を加筆したものです。
 
 そして、80シーズン後に竜洋テストコースで公開されたXR34M2。
  

 そして、ヤマハ0W45(79年型YZR500)の公表写真。斜め前から撮影した写真ですので、黄線はクランクシャフト右端ではなく、その内側のクランクシャフトがあるであろう位置から引いています。
 
 XR34/XR34M2の2軸のクランクシャフトの平均高と0W45のクランクシャフト高はあまり変わらないようです。 

 そして、これは0W54の公表写真に加筆したもの。
 
 0W54の2軸クランクシャフト平均高が0W45より3㎝程度高いように見えます。


 さらに、これは0W54公表写真に前後車軸を結ぶ空色線と、これと平行な変速機カウンターシャフト(出力軸)先端中心(スプロケット中心)を通る白線を加筆したものです。
 
 前クランクシャフト中心が白線より上にあるように見えます。上のXR34、XR34M2(白線は加筆していませんが)の写真と見比べれば、前クランクシャフト位置が高く見えます。

 
各車のタイヤ径が異なること、写真撮影位置が異なり、比較方法が適切ではないことは承知の上であえて言うなら、シーズン当初、0W54エンジン重心の位置が他車より高かった可能性が高いと考えます。
 
 こちら(リンク)で書いたように、実戦ではA~C型フレームが用いられましたが、MOTOCOURSEによると、フランスで、続いてオランダで導入された2種のフレームは、それぞれエンジン搭載位置が下げられたということです。エンジン搭載位置を下げるにしても、チェーンスプロケットが取り付けられる変速機カウンターシャフトの高さは大きく変えられません。搭載位置を下げるなら、変速機カウンターシャフトを中心にエンジン全体を前傾させる必要があります。
 
シーズン前公表写真のマシン、A型ではシリンダーの路面に対する前傾角が30度程度だったものがB、C型では40度程度になったのはこのためです。


 レーシングマシンにとってエンジンの重心位置をどこに置くかが、レーシングマシンのハンドリングに大きく影響することは言うまでもありません。もちろん、エンジンの押しがけ始動のときのライダーの体感重さ(ふらつき)にも影響します。

 ライダーに不評だった0W54のハンドリングの原因の一つは、そのエンジン重心位置だったことは間違いないと思います。そして、それ以外にもいくつか原因として想像できる要素があります。

1 それまでのピストンバルブとは異なる
ロータリーディスクバルブエンジンの出力特性(その特性を調整しきれなかった)
2 長い前後長のエンジンを抱えるフレームの剛性、剛性バランスが並列4気筒車から変化したこと
3 新たに採用した16インチタイヤ

4 81年から倒立になった後クッションユニットの耐久性
 グッドイヤータイヤの性能(1981年限りでレースから撤退)

 1~4、そして重心位置、何れも「準備不足」が共通する要素だと思います。そして、ライバルのスズキXR35(1981年型RGΓ500)より5㎏程度大きな車重は、上の問題点に比べれば取るに足らないと考えています。
(続く)

霧状電解水を用いた空気浄化技術(修正あり)

 最近話題の技術ですが、ちょっと古くて申し訳ないのですが、効果と安全性についてのペーパーを読んでみました。素人の疑問点を書きます。
http://solmind.com/hclo/funnmu/7711.pdf


実験条件は
1 浮遊細菌に対する効果
(1)電解ミスト遊離残留塩素濃度 10±3mg/L
(2)対照 水ミスト噴霧

2 浮遊ウイルス
(1)電解ミスト遊離残留塩素濃度 約5mg/L
(2)対照 ミストなし、水ミスト噴霧

3 アレルゲン物質抗原性
(1)電解ミスト遊離残留塩素濃度 約100mg/L
(2)対照 無処理、水ミスト

 疑問点は
A 狙う効果によって、なぜこんなに条件が異る? ウイルスに対しては5mg/Lで効果があるのに対して、浮遊細菌に対して10mg/Lでないと効果がないのでしょうか?

B 浮遊細菌に関する実験で、対照に「ミストなし」がないのはなぜ? ミストなしでも効果がある?



 安全性試験としてラットの90日間吸入毒性試験を実施しています。

対照群 ユニット内の遊離残留塩素濃度 電解ミスト中の遊離残留塩素濃度
       mg/L           μg/m3・h
対照群     0                                              0
A群     10±5                                         2.3±1.2
B群                  65±15                                     15.0±3.4
C群                 125±25                                    29.0±5.8

 「ユニット」が「電解水霧化ユニット」なら、この濃度は電解水そのものの濃度でしょう。電解ミスト中の遊離残留塩素濃度の単位μg/m3・hは、普通は「濃度〇μg/m3のものを1時間」という意味だと思いますが、90日間の実験のはずなのにどういう意味なのかわかりません。

 「h」を無視して考えますと、上のABCでは単位がmg/Lなのに、こちらは「μg/m3」ですから、百万分の1の濃度です。全く効果がない濃度での吸入実験ということになりますが、意味があるのでしょうか。

 元文献はこちらですので、転記ミスの可能性はあります。
https://ci.nii.ac.jp/naid/10015597365

    どうも同じ「電解ミスト中の遊離残留塩素濃度」であっても、「電解ミスト涙滴中の遊離残留塩素濃度(単位はmg/L(液体)」と「空中の電解ミスト中の遊離残留塩素(単位はμg/m3(空間)」の違いのようです。

 そもそも、この実験方法で何が分るのでしょうか? この方法で、アスベストやPM2.5、窒素酸化物、硫黄酸化物といった大気汚染物質の健康影響を全て評価できるのでしょうか?

 
メーカーさんは、この評価方法だけで「安全」を謳っているようですが、安全の意味を理解しているのでしょうか?


 というわけで、素人には実験の内容、そして実験自体の意義にも疑問だらけのペーパーでした。

ヤマハ0W54(1981年型YZR500)(9)

 RACERS Volume 19(三栄書房2013)によると、81年にヤマハ0W54のライバルとなったスズキXR35(81年型RGΓ500)の半乾燥重量(オイル、冷却水のみ含む)は130.4kg(スチールフレーム型)です。では0W54の半乾燥重量はどの程度だったのでしょうか?

 
RACERS Volume 02(三栄書房2010)に、0W54について次のような記述があります。

「Q17 0W54の性能は前モデルである0W53を凌駕したか? A 最大出力は上がったが、車重も増えた。その重さたるや「開発ライダーの金谷、高井の両氏から”重戦車”と酷評された」と奥氏」

 RACERS Volume 19では
「エンジン形式の変化に伴って重心位置が大きく変わり、それに車重の重さも加わって、なかなか良好なハンドリングを実現できす~」

 これらの記述からすると、0W54の半乾燥重量は相当なものと思われるでしょう。
 
 
ヤマハの市販レーサー・80年型TZ500の半乾燥重量は145kg、ヤマハ0W48の半乾燥重量は135~138kgと思われます(末尾の「参考」)。

 0W54が、0W48をベースにした0W53より重くて「ハンドリングが重戦車」なら、0W54の半乾燥重量は145~150㎏辺りなのでしょうか?


 TEAM SUZUKI by Ray Battersby, Osprey 1982/ Parker House 2008によれば、500㏄第2戦ドイツGPの車検時、スズキの岡本満、Martyn Ogborneが0W54の重量測定を見に行ったところ、136kgだったということです。このとき、0W54に燃料が残っていた可能性もありますから、この数字は「136kg以下」と理解すべきでしょう。

 そして、RACERS Volume 02によると0W60は0W54より車重を10㎏近くダウンということです。0W54の半乾燥重量を136㎏とするなら、0W60の半乾燥重量は127㎏程度になり、それでもXR40(82年型RGΓ500)より6㎏程度重かったことになります。0W54の半乾燥重量を145~150㎏と仮定するなら、82年にもなって、ヤマハ500(0W60)がスズキ500より15~20㎏も重かったことになってしまいます。

 これらのことから、TEAM SUZUKIの記述は妥当であり、0W54はスズキXR35のせいぜい5㎏増し程度の半乾燥重量で、0W48とほぼ同じだった考えます。XR35のスチールフレームに対して0W54はアルミフレームですから、エンジン単体の重量差は8㎏程度でしょうか。

 冒頭のRACERS Volume 02の記述のうち、金谷、高井の「重戦車」評価はライダーの感覚評価(官能評価)ですが、「車重も増えた」はライター氏の想像のようです。

 0W54のハンドリングに対するライダー(ロバーツを含む)の評価が低かった原因は、その車重によるのではないのです。
(続く)
・・・・・・・・・・
参考
 ヤマハの市販レーサー・80年型TZ500の公表重量は138㎏で、水・オイル4kg、フェアリング3kgを足すと半乾燥重量145kgになります。1980年日本GPで3位入賞した水谷のTZ500のレース後の車重が147kg、レース前日(土曜日)の車検時の糟野のTZ500が145kgという数字がこれを裏付けます。

 一方、1980年日本GPで優勝した高井のヤマハ0W48はレース後に142kgでした。高井は独走、水谷は転倒し再スタートしての追い上げで、二人のマシンの燃料消費量に差があるでしょうから、0W48の半乾燥重量は135~138kg程度だと思われます。http://jfrmc.ganriki.net/ow48/ow48-1.htm

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