レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
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アブガスが日本国内レースで用いられた頃の日本のガソリンエンジン航空機の状況を日本航空機全集 1991年版(鳳文書林出版販売 、1991年1月)で調べてみました。
民間機のガソリンエンジン機の機種毎に、そのエンジン出力(複数エンジン機は合計出力)と登録基数を乗じて、次の指定燃料別に全機種を積算してみました。
Grade100(100/130、100LL等)
Grade91/96
Grade80/87
Grade115/145を指定するガソリンエンジン機はありません。また、他にオクタン価73を要求するエンジンが2基計130HPありますが無視しています。
上の3種の燃料を要求するエンジン出力の比率は下の円グラフのとおりです。
私の数え誤りがある可能性はありますが、Grade100が大半です。これからすると、当時、飛行場で供給されていたアブガスはGrade100が一般的でした。
これに加え、自衛隊ガソリンエンジン機、つまり航空自衛隊のT-3、海上自衛隊のKM-2でもGrade100が指定されていました。
アブガスを供給する製油所、輸入元の立場からすると、全てGrade100に統一してほしいところだったでしょう。
さて、Grade80、Grade91の航空法オクタンは80以上、91以上で、これらのモーター法オクタン価もほぼ同値であると思われます。Grade91であれば自動車用ハイオクガソリンのモーター法オクタン価よりすこし高いと思われますが、Grade91を要求する機種は少数でした。
ですから、当時、レース用に用いられたアブガスはGrade100と思われます。 PR
航空用ガソリンのJIS(1991)では
となっています。JIS1968では
現在と異なり91/96についても規定されており、モーター法オクタン価も規定されていますが、その他の数字はJIS1991と同じです。
一方、アメリカでは現在は次の規格のようです。115/145がありませんが、この表とは別に規定されているのでしょうか?AVGAS 115-145 (warteraviation.com)からするとモーター法オクタン価115以上、出力価(Performance number)145以上の規定があるようです。
(avgas100llspecsastmd910_2011.pdf (aviation-fuel.com)から作成)
Motor Octane Numberがモーター法オクタン価、Aviation Lean Ratingが航空法オクタン価、 下から2段目のOctane numberが過給法オクタン価でしょう。
かつて、使用されていたレース用ガソリンは
FIA F1の規格(リサーチ法オクタン価102、モーター法オクタン価92)
P91-102_燃料及び燃焼システムの開発.pdf (engine-design.tokyo)
に適合するものだったと思われます。鈴鹿サーキット近くのシェルで販売されていたアブガスはこれよりオクタン価が高かったでしょうから、モーター法オクタン価99.6以上(または100以上)、あるいは同115(または116)以上だったと思われます。
では当時、日本の空を飛んでいたガソリンエンジン使用航空機はどんなガソリンを使用していたのでしょうか?
(続く)
アブガス100LLの性状は次のとおりで、モーターオクタン価min.99.6、出力価min.130です。アブガス100/130も同じオクタン価、出力価です。
AVGAS-100LL-Product-data-sheet.pdf (warteraviation.com)
115/145の性状は次のとおりで、モーターオクタン価min.115 出力価min.145です。
AVGAS 115-145 (warteraviation.com)
前回、紹介した航空事故調査報告書
AA2007-7-1-JA201X.pdf (mlit.go.jp)
では「 オクタン価とは、アンチノック性を表す数値で100が最大値である。 」とありますし、
この本147頁
Amazon.co.jp: 現代ミリタリー・ロジスティクス入門―軍事作戦を支える人・モノ・仕事 (-) : 孝司, 井上: Japanese Books
でも
そもそも、ある燃料のアンチノック性がイソオクタンを上回っている場合でも、計算上、オクタン価を求められます。その燃料とn-ヘプタン(オクタン価=ゼロ)を1:1で混合して、混合燃料のオクタン価が60なら、ある燃料のオクタン価は120ということになります。
もちろん、JISではこんな方法ではなく、4エチル鉛添加、トルエン混合によって調製した高オクタン標準燃料を使用してオクタン価100を越える燃料のオクタン価を測定しています。
エルフのレース用ガソリンは次のとおりで、各製品の頁をご覧いただければ、オクタン価100を越えるものがあります。
レース用ガソリン | Elf Japan (elf-lub.jp)
また、主な化学物質のリサーチ法オクタン価、モーター法オクタン価は次の文献の表2をご覧ください。
ja (jst.go.jp)
航空事故調査報告書
AA2007-7-1-JA201X.pdf (mlit.go.jp)
「オクタン価*6については、2.12.2(1)に記述したとおり、同機の飛行規程では、使用燃料をAVGAS100/130又はAVGAS100LLとしており、自動車用プレミアム・ガソリンのオクタン価は98~100程度であることから、両者に差はない。」
「*6 オクタン価とは、アンチノック性を表す数値で100が最大値である。 」
オクタン価測定法に複数あることも、オクタン価が100を越えるものがあることも知らない委員の方々による報告書です。
さて、1990年前後、国内二輪レースでもアブガスが用いられており、鈴鹿サーキット近くのシェルのスタンドでも、歩道側の給油機でアブガスを販売していました。
当時のサイクルサウンズ誌には、アブガスのオクタン価は110~120とする記事がありました。
また、この本
Amazon.co.jp: RSマニュアル―RS125 250Rをマスターする (SANKAIDO MOTOR BOOKS―HRCレーシングハンドブック) : 亮一, 新井, 裕, 鈴木, サイクルサウンズ: Japanese Books
では105と書いてあった記憶です。
どちらも基礎知識なく取材した記事ですのであまり信用できません。ただ、日本で自動車用ガソリンのオクタン価がリサーチ法で示されていますが、ハイオク(プレミアム)のオクタン価が99.5前後であることからすると、アブガスのリサーチ法オクタン価は100以上でしょう。
アブガスには
82UL
80/87
91/96
100/130
100LL
115/145
がありますが、鈴鹿サーキット近くのシェルで売っていたのはどれなのでしょうか?
(続く)
かなり間違えています。
下の画像は上の動画から切り出したもの。
RC211Vの点火間隔を「76-76-208-76-284度」としていますが、2006年秋にホンダが「75.5-104.5-180-75.5-284.5度」と公表済です。75.5度を76度と表記していることはともかく、「76-76-・・・」では1次慣性力が釣り合いません。
動画中の13分31秒からの図の一部を拡大した下図では
(クリックして拡大)
正しい点火間隔が示されています。
また、動画中の13分31秒からの図の一番下で、「360°クランク90°V4=ヤマハ・直4クロスフロー」(クロスフローはクロスプレーンの誤り)としていますが、ヤマハ・直4クロスプレーンの点火間隔は「270-180-90-180度」と公表されています。
クロスプレーン型クランクシャフト - ヤマハ バイク ブログ|ヤマハ発動機株式会社 (yamaha-motor.co.jp)
そもそも直列4気筒エンジンで90-270-90-270度点火間隔であれば、バランサーシャフト1本で1次慣性力を偶力を残さず釣り合わせることはできません。
既に点火間隔の答えが多くのサイト、雑誌、書物にあるのに残念です。
なお、近接点火そのものによる効果について、ヤマハは否定しています。
(99+) 08JSAE_CROSSPLANE.pdf | MASAO FURUSAWA - Academia.edu
また、RC211Vのエンジンレイアウトの発明者である山下ノボル氏も、当初
「L4等間隔爆発のトルク変動振幅の大きさが目につき,2ストロークと同じく不等間隔爆発に絶対的な優位性があるかどうかはセンスとして迷うところである」(a (jst.go.jp)
としていたことから分るように、RC211Vの近接点火の優位性に大きな期待をしていませんでした。