レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
今回のマシンは14馬力という報道です。
世界最高峰レースで日本チームが3部門全てで世界最速記録更新の快挙 50㏄エンジンで時速135キロ (msn.com)
以前、雑誌に掲載されたマシンでは最高出力9.56kW(13PS)/13500rpm・最大トルク4.8Nm(0.49kgf・m)/10800rpmでしたが、最高出力時のトルクを計算すると6.8Nm(6.9kgf・m)になってしまいます。何かおかしいのです。
capbolt on X: "雑誌に載ってるスペック表では ・最高出力: 9.56kW/13500rpm ・最大トルク:4.8Nm/10800rpm ということなんですけど、最高出力点13500rpmで最大トルクを出しても9.56kWは出ないよね。なにかが間違っている。 https://t.co/zmBLJyyWoE" / X
さて、今回の近兼マシンの記録を107.381(1km)とし、そのCdAが50㏄レーサーと比べてどの程度のものなのか試算してみます。
50㏄フルカウル・自然吸気の記録は158.164km/h(2014年、クライドラー)です。
世界GPに50㏄クラスがあったのは1982年までですが、1973年に既にチャンピオンマシン・クライドラーのスパフランコルシャンの最速ラップ速度が160km/hを超えており、その最高速は180km/h程度と考えられるにもかかわらず、2014年で158.164km/hは(ボンネビルの塩路の転がり抵抗が影響したとしても)低すぎます。
そこで、この記録と1960年代のスズキ50㏄レーサーの最高速(※1)の両方で、近兼マシンのCdA(空気抵抗係数✖前面投影面積)の50㏄レーサーに対する比率を求めてみました。
近兼マシンの最高出力を9PS(クランクシャフト換算、以下同じ)とすると、スズキ50㏄レーサーの最高出力を9PSにし、かつスズキ50㏄レーサーのCdAを1.95倍にすれば107.381km/hになります。
クライドラー(仮に20PSとした※2)を基準にすると、クライドラーを9PSかつCdAを1.44倍にすれば107.381km/hになります。
記事のように近兼マシンが14PSとすると、近兼マシンのCdAはスズキの3.03倍、クライドラーの2.23倍になります。
下画像は以前のマシンですが、2024年型も基本的に同じです。ライダーの後ろのカウルが効果的なドラッグシュートになっていますし、カウル表面積が大きいので、空気抵抗が大きいのは当然です。
2019年の記録が低レベルに終わったにも関わらず、その原因解析がまったくできずに再挑戦したのですから、今回の記録も納得です。
まあ、出来が悪くてもいいんです。それは自己責任ですから。ただ、低レベルの数字をいかにも「世界最高、日本のものづくりを証明」みたいに語ることは、50㏄レーサー、50㏄速度挑戦車の関係者に対する侮辱であり、多くの日本の技術者を貶めるものだと思います。
※1出典は スズキ・ホンダ・ヤマハ・他のマシン諸元と性能 (iom1960.com)
スズキの最高速は米津浜テストコース(1964年まで)及び竜洋テストコース(1964年12月竣工、それまでも一部完成した部分でテストが行われた)で測定されたものです。ですから直線がさらに長ければもう少し最高速が伸びるでしょう。
※2 前述のようにあまりにも低い数字であるため、実際は20PSを下回っていたと思われる。