私がときどき訪問しているサイトに「市民のための環境学ガイド」がある。
http://www.yasuienv.net/
その中の「安心 最高の贅沢」
http://www.yasuienv.net/ShokuCent.htm
に次の記述がある。
「現在の日本の基準は、
すでに述べたように、食料自給率が39%しかないこの国なのに、50%の食品が汚染されていると仮定されている。コープふくしまのデータを真実と考え、それに大きすぎる安全係数を考えた場合でも、今ならば、
20%が汚染されているという程度と仮定することが現実的ではないだろうか。現状は最低でも2.5倍程度厳しすぎるということである。」
おそらく著者の安井氏は食料自給率を質量ベースと考えているのだろう。実は農水省が公表している39%という食料自給率は「カロリーベース」である。農水省のサイトにもはっきり書いてあるし、生産額ベースなら66%であることも隠していない。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html・・・・(1)
「食料自給率が低い→日本の農業はだめだ」というためには66%より39%の方が都合がよいので、この数字のみが一人歩きし、安井氏も39%がカロリーベースであることに気が付かなかったのだろう。
質量ベースの品目別食料自給率は上の頁からリンクしている次の頁で公開されている。
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/pdf/23sankou4.pdf・・・・(2)
また、質量ベースの品目別の国内生産量・輸入量統計は、
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html の「食料需給表」・・・(3)
にある。
(3)から単純計算すると質量ベースの食料自給率は全体で51%程度のようであり、上の「50%の食品が汚染されていると仮定されている」のも妥当ということになる。
ただ、(2)で輸入飼料を考慮した自給率も示されているように、肉、牛乳、食用油、しょうゆ等について輸入飼料・原材料を考慮すれば、51%という数字はさらに小さくなる。とはいうものの、出てきた数字を何のために使うか、そのためにどのように「自給率」を計算するのがよいかをよく検討する必要がある。
バイクや車に限らず、世の中には様々な「一見科学的」な文があふれており、そこでは「燃費効率」、「熱効率」、「燃焼効率」等々の「~率」がよく登場する。しかし、その定義やその算出方法、算出元データの計測方法・入手方法までよく知っている人はあまりいない。一般的には「そんなことを知る必要はない」と思われているようだが、その「~率」を用いて議論する場合には必ず知っておく必要がある。そうでなければ、本来、その「~率」を用いることができないケースであってもその「~率」用いられ、誤った結論を導くことになりかねないのである。
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