防衛省、レールガン開発に本腰 SF・アニメが現実に?(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
「レールガン発射に必要な電力は、日本の家庭約7000世帯の年間使用量にあたる約25メガワットと膨大で」
から
「数秒に1回の連射を想定した場合、発射の度に約25メガワットの電力が必要だとする海外の研究もあり」
に修正されています。
修正前も修正後も意味不明です。ワットの意味を知らなくても新聞記者は務まります。今に始まったことではありませんが。
修正前について
年間使用量をメガワット(電力、秒当たりの電気エネルギー量)で示しています。
7000世帯の年間使用量を支える電力だとしてもおかしい。
世帯当たりの年間電気エネルギー消費量は4322kWhです(2017年度)。
www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2017/result3/detail1/index.html
平均電力は
4322/(24×365)=0.4934kWです。
7000世帯では
0.4934×7000/1000=3.45MW
桁が違います。
修正後について
こちらをお読みください。
レールガン - Wikipedi
「ズムウォルト級駆逐艦の~レールガンにもこの電力を供給し発射しようという計画である~15~30MW程度をレールガン発射に回せれば、毎分6 - 12発の連続射撃が可能だという。」
「計画では揚陸作戦支援に重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾運動エネルギーは64MJ(メガジュール・入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)を必要としている。」
要するに15~30MWはレールガンの連続発射中に供給される電力であって、「発射の度に」供給される電力ではありませんが、記者は「発射の度に」を「連続発射中」の意味に使っているのかもしれません。
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参考1
連続発射中にレールガンシステムに(電気を貯めるコンデンサーバンクを通じて)供給すべき電力Eaは、システム効率Fs(砲弾運動エネルギー/システム供給電気エネルギー)、発射速度r(1分当りの発射数)として
Ea=r×mv^2/(120000000Fs)
m:砲弾質量(kg)
V:砲口初速(m/s)
Wikipediaの記事を例にとると
Fs:0.3、r:12として
Ea=12×15×2500^2/(120000000×0.3)=31MW
Wikipedeaの記事に近くなりますね。というより、私は記事で紹介されたレールガンのシステム効率は0.3程度だということを言いたいのです。
さて、発射時、レールを通過する間の平均電力Nrは
Nr=mV^3/(4000000LFr) (MW)
L:レール長(m)
Fr:レール効率(砲弾運動エネルギー/レール消費電力)
Wikipediaの記事を例にとると
L:5m、Fr:0.4として
Nr=15×2500^3/(4000000×5×0.4)=29300MW
これが「発射の度に」という日本語に相当する電力ではないでしょうか。なお、レール長を長くすればNrは小さくなります。
参考2
発射の際に消費する電気エネルギーは
mv^2/(2000000Fr)=117MJ
(0.0326MWh)
砲弾質量15kgと仮定した上での計算ですが、修正後の記事は記者が電力を電気エネルギーの意味で使っているわけでもないようです。
参考3
防衛装備庁が以前に公表した資料はこちら。
防衛装備庁技術シンポジウム2020 (mod.go.jp)
参考4
Wikipediaの記事
「重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾運動エネルギーは64MJ(メガジュール・入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)」
の赤字部分ですが、計算すると
0.5×15×2500^2=46.8MJ
になります。64MJ、砲弾重量15kgですと、砲口初速は2920m/sです。