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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

小慣性トルクエンジン

2007年に公開した

ビッグバン仮説

の続編として

小慣性トルクエンジン

を公開しました。


https://jfrmc.tou3.com/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96makes/20201223

でのKuboiさんとのやりとりを参考にしたものです。Kuboiさん、ありがとうございました。

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コメント

無題

Kuboiです。
言及して頂きありがとうございます。

ページを拝見しましたが、慣性トルクの計算式の係数が-m*r*ω^2となってるところ、正しくは-m*r^2*ω^2ではないでしょうか?
(「ビッグバン仮説」のページでは正しいので単なる抜けとは思いますが)

--
以下既に御存知でしたら申し訳ありませんが、いくつか説明させてください。

慣性トルクに関する優れた資料として、以下のものがあります。

繊維機械學會誌 8巻(1955) 7号 「繊維機械のための機構学 (6)」亘理厚
https://www.jstage.jst.go.jp/article/transjtmsj1948/8/7/8_7_498/_article/-char/ja/

上記資料のp.503における5.14式のCiが慣性トルクで、現在一般的な表記とすると慣性トルクTi=-m*a*v/ωとなります。
慣性トルクの導出方法は複数ありますが、私の見た中ではこのページ右下の脚注に書かれた仕事の関係から求めるのが最もシンプルなものかと思います。
(私はこれを知らなかったので自分でベクトル図を書いたりテイラー展開したり大変だったのですが)

p.501にはこれを級数として展開したものが7次まで掲載されていますが、aとvが既知であれば数式処理ソフト、例えばフリーウェアのwxMaxima(http://wxmaxima-developers.github.io/wxmaxima/)を使い容易に各次数成分の係数を求めることができます。

例えばwxMaximaを起動し、ウィンドウに以下のスクリプトを貼り付けてからShift+Enterキーを押してみてください。
(場合によってはブログの文字コードの関係でうまく動かない可能性もあります)

/* 往復質量の加速度aと速度vの積を求めるスクリプト */
/* Maximaの状態をリセット */
kill(all)$
/* 速度vを入力(係数r*w除く) */
v:sin(θ)+sin(2*θ)/(2*λ);
/* 加速度aを入力(係数r*w^2除く) */
a:(cos(θ)+cos(2*θ)/λ);
/* a*vを求め、三角関数を整理 */
trigrat(a*v);
/* 式の展開 */
expand(%);

--
ところで上記の慣性トルクTi=-m*a*v/ωという式は往復質量の運動エネルギー1/2*m*v^2を角度θで微分し、符号を正負逆にしたものとなります。(運動エネルギーの保存から)
私はこれがドゥカティV4エンジンの位相差70度という角度のカギと考えているのですが、長くなるためまた別の投稿で説明したいと思います。
【2025/02/01 20:21】 NAME[Kuboi] WEBLINK[] EDIT[〼]

 ご指摘ありがとうございます。
 rの2乗ですね。申し訳ありません。
 記事の方、修正しました。
【2025/02/01 21:32】 NAME[野田] WEBLINK[] EDIT[〼]

慣性トルクの振幅

続きが遅れ申し訳ありません。

さて、慣性トルクの計算式をテイラー展開し1/λ^3以下の項を無視した近似式において、4次までの各成分の係数は以下のようになります。(m*r^2*ω^2は省略)

1次:1/(4*λ)
2次:-1/2
3次:-3/(4*λ)
4次:-1/(4*λ^2)

ここで90度V型とした時点で最も大きい2次成分は打ち消されるので、単純に慣性トルクの振幅が小さいことが望ましいとすれば、次に打ち消すべきは2番目に大きい3次成分(1次成分の3倍の振幅)となるはずです。

その3次成分を打ち消すためには、以下のどちらかの位相差が必要となります。

A:180度の位相差(この場合は1次成分も同時に打ち消されるが、排気干渉が大きい)
B:60度の位相差

実際に90度V型4気筒エンジンの左右スローの位相差を角度βとし、β=0度からβ=180度まで変化させた慣性トルクの振幅を計算すると以下のようになります。
(連桿比λ=4.0の通常の直列4気筒を100%とする)
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgpAQylEN-3Syn45ihyphenhyphenMqSUEvwdHbzTGY09DJgoTl11pqG1M00YmxsjHW5wbEcP-QHvTEcNi8mREWO3rkjRv3xkk3nCYWf4hJVJ2qqLhubIrPgi9ccVVTGgzEyiX7938tUizuWYH74FPx3g/w800/Ti_amplitude.png

やはりβ=60度近傍の約57度(連桿比4の場合)に慣性トルクが小さくなる点があり、逆に120度の近傍では3次成分の重ね合わせにより慣性トルクが大きくなることが分かります。

位相差60度とドゥカティの70度では大した違いはないと言ってしまえばそれまでですが、やはりそこには何か意味があるのではないか?ということで検討を続けてみました。

(続く)
【2025/02/06 19:34】 NAME[Kuboi] WEBLINK[] EDIT[〼]

ピストン・クランク機構の運動エネルギーの保存

さて、元ヤマハの古沢政生氏がacademia.eduに掲載した「不等間隔爆発エンジンとモトGP」によれば

"直列4気筒エンジンのスロットルを閉じた時の回転数変動が最も少ない90度クランクを設計した"

とありますが、そもそも「なぜピストン・クランク機構で燃焼によるトルクを考えない場合でもクランク軸角速度が変動するのか?」と考えるとシンプルに「往復質量と回転体とで運動エネルギーが保存するから」という視点があります。
(もちろん、「慣性トルクの変動があるから」とも言えますが、両者は同じ運動を別の視点から見たことになります)

つまり往復質量の運動エネルギーが増減すれば回転体の運動エネルギー1/2*I*ω^2が変動する、従って角速度ωが変動するということになるわけです。

そのため、角速度ωの変動を少なくするためには各気筒の往復質量の運動エネルギーを足し合わせたものの変動を少なくする必要があります。

ここで往復質量の運動エネルギーを4次成分までの近似式とし、各成分の係数を比較(m*r^2*ω^2は省略)すると、

1次:1/(4*λ)
2次:-1/4
3次:-1/(4*λ)
4次:-1/(16*λ^2)

となり、慣性トルクの計算式では大きかった3次成分の影響が1次成分と同等となることが分かります。

ここで慣性トルクの検討と同様に90度V型4気筒エンジンの左右位相差を角度βとして「往復質量の運動エネルギーの和」の振幅を計算すると以下のようになります。
https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg4aF4nESSBZ6iMiHQi_9PcwcqHmE0iHQGZFEePVbOz0Qv_Q5pu38Y4ZfX0OM5w9a_IpPt6Yew8hOL1k6-xIFPj5cZTzMFKKcr7QmRzI4ywpS_fTsuXQCjIMZuCbbuMg2fDNkRgQCJtN_SW/s800/Krec_range.png

グラフからドゥカティの70度に極めて近いβ=約69度(λ=4.0の場合)に「往復質量の運動エネルギーの和」が小さくなる点があることが分かります。

ただしグラフからも分かるように70度と60度での差はわずかでもあり、排気系に関して小さい角度の方が有利な面があるとも思われるため、他のMotoGP参戦各メーカー(※注)はドゥカティとはまた違った角度としている可能性もありえそうです。(70度より大きい角度はまずないと思います)

※注 KTMのRC16はVバンク角86度と公表していますが、この場合の計算はおこなっていません。
【2025/02/06 19:37】 NAME[Kuboi] WEBLINK[] EDIT[〼]

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