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JFRMCブログ ノートン チャレンジP86(3)
で書いたように、このエンジンはクランクシャフトのバランス率をゼロにすることによって、バランサーシャフトで一次慣性力が釣り合う構造です。
さて、
一次慣性力=質量×クランク半径×(2×円周率×rpm/60)2×cosθ
(θ=上死点からの回転角、クランク半径=ストローク/2)
二次慣性力=質量×(クランク半径/コンロッド長)×クランク半径×(2×円周率×rpm/60)2×cos2θ
です。二次慣性力はcos2θに比例するので、クランクシャフトと同速回転のバランサーシャフトで打ち消すことはできません。
P86(750㏄360度クランク並列2気筒)と500㏄単気筒を次の条件で比較してみます。
〇ストローク/ボア比は同じ→P86のストローク長は500㏄単気筒の0.909倍
〇P86の往復運動部分質量(2気筒分)は500㏄単気筒の1.5倍
〇クランク半径/コンロッド長は0.25で同じ
〇バランス率はゼロで同じ
〇P86回転数/500㏄単気筒回転数=1.3※
500㏄単気筒の最大一次慣性力(上死点)を1として、500㏄単気筒の一次慣性力+二次慣性力、P86の二次慣性力(一次慣性力はバランサーシャフトで釣り合っている)を求めたのが下のグラフ。
このグラフでは、500㏄単気筒の方が振動が大きいように思われるかもしれませんが、500㏄単気筒の実エンジンではクランクシャフトにバランスウエイトが設けられるので、例えば、バランス率50%なら一次慣性力が50%打ち消され、横方向にバランスウエイトの遠心力が0.5sinθ(上死点でゼロ、90度回転時に0.5)働きます。振動が散らされたような形ですね。
ですから、P86エンジンの振動は500㏄単気筒より小さいとはいえないのです。むしろ、P86の振動は500㏄単気筒より周期が短く、一般的だったクレードルタイプのフレームに搭載されたとしても、ライダーには振動が激しいと感じられるでしょう。
そのエンジンにサブフレームがダンパーなしで装着されていたのなら、車体の振動は激しいものだったでしょうし、ダンパーを介して装着されていたのなら、P86のハンドリングはどんなものだったのでしょうか?
※最高出力発生回転数を500㏄単気筒:7500rpm、P86:9750rpmとして、9750/7500=1.3。コーナーリング中もこの比率が維持されると仮定した。