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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

ホンダの八木氏等

が書いた1960年代のホンダレーサーに関する次の論文があります。

世界二輪グランプリレースに出場したホンダ レース用エンジンの開発史」 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)(論文1)

「ホンダの二輪レース用機関の出力特性 -機関諸元の選定- 」本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)(論文2)

 非常に参考になるのですが、一方で記述、数値におかしなところが散見されるので悩みの種でもあります。

 論文2に掲載されたエンジン出力曲線はRACERS Volume70の97頁にそのまま掲載されています。次の画像は125㏄エンジンの性能曲線図から切り出して線を加筆したもの。



RC145:15.15kW(20.6PS)/13000rpm
RC146:16.5kW(22.5PS)/15000rpm

辺りです。
 一方、論文1では
RC145:22.5PS/14000rpm
RC146:22PS/15000rpm
となっています。

 論文2のグラフのRC145の数値は明らかに他エンジン(おそらく2RC143)の値と取り違えていると思われますし、RC146の出力も論文1と異なっています。

 雑誌等の記事で「RC146の出力はRC145に及ばなかった」となっているのは論文1の記述によるようですが、論文2からすると同値になります。

 エンジン出力には個体差があるので、RC146の出力数値が2つあったとしても不思議ではないのですが、他機種のエンジン出力と比較する際には要注意という見本かなと思います。
 市販車のエンジンの「これが〇〇の出力」というようなものではないのです。

 なお、元々の数値はPSで測定されており論文2作成のためkW換算する際に1PS=0.7355kWではなく0.75kWで換算したのかなとも思いましたが、RC148等々については論文1と論文2で数値に差がありませんでした。


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ホンダRC146/2RC146/4RC146

この3機種のホンダ125㏄4気筒について、よく知られた区別は

RC146
 1963年日本GPで登場した2バルブ型

2RC146
 1964シーズンを走った4バルブ型

4RC146
 1965年第5戦マン島で登場した新4バルブ型

です。この区分についてはいくつか疑問があります。

〇1963年日本GPを伝える当時の雑誌記事では車名を「2RC146」としていた。
〇1964年東ドイツGPで撮影されたとされるマシン


と、1964年最終戦日本GPで撮影されたマシン


では、エンジンの形が異なるが、2つとも2RC146エンジンなのか?
 後者は現存する4RC146エンジン(4RC146E-405)

に酷似している。


〇現存する4RC46E-405の「405」の4は改良型を示すと思われる。例えば現存するRC181エンジンは1967年型で、RC181E-301、RC181-302と機種名に続く数字は「3」から始まり、現存する66年型エンジンは「1」から始まっている。
 1965年第5戦マン島で登場し、ヨーロッパでは第6戦オランダまでしか走らず、以後、5気筒RC148の開発に傾注することになった(最終戦日本GPで登場)はずなのに、なぜ現存する4RC146のエンジン番号が「405」なのか?

 というようなことを記事にしようと思います。

ホンダ 4RC146

1965年型ホンダ125㏄4気筒です。これは1998年に撮影した動画から切り出したもの。

 エンジン番号は4RC146E-405でした。という訳で、ホンダ125㏄4気筒について少し書こうとしています。

 私がこのマシンを初めて見たのは1980年開催のホンダモータースポーツ展(鈴鹿サーキット)でした。それから44年も経ってしまいました。

 このマシン、1970年代になって初めて公に姿を見せたのは1973年で、ホンダ創立25年記念行事として、荒川テストコースで走行したレーシングマシン(2輪、4輪)の中の1台でした。

 当時のホンダ社員による写真をごらんください。黒地に白数字6のマシンです。

『素顔の本田宗一郎と社員たち/3代社長の3ショット (永久保存版)Soichiro Honda and Three Tops of Honda/The memorial run of glorious racers』白金(東京)の旅行記・ブログ by yamada423さん【フォートラベル】 (4travel.jp)

 ホンダが本田宗一郎の強烈な個性が引っ張る会社だったことが、これらの写真からも理解できるように思います。それにしても、51年経って写真に写る少なくない方が故人となっていることに寂しさを覚えます。

メタノールは(航空用燃料として)高空で有利?

(5) naga on X: "メタノールみたいな含酸素燃料ってオクタン価高いし酸素含んでるからガソリンと比べて酸素少なくて済むから高空では有利だよねって話したら、知らんヤツ割り込んで来て酸素分子1個しかねーじゃんwって言われたんで質量比だと半分だけどな!って返したらブロックされた事あったな~" / X (twitter.com)


 メタノールはメタンを酸化(電子を奪う)した形ですので、燃焼に必要な酸素が少なくて済む分だけ発熱量も減少しています。モル当たり801→644kJ/molぐらいです。


JFRMCブログ 出力は燃料の発熱量に比例する? (tou3.com)

の計算方法で計算した混合気1モル当たりの発熱量kJは
メタン     72.8
イソオクタン  80.6
トルエン    81.2 
エタノール   77.3 
メタノール   75.8

ぐらいですので、普通のガソリン成分より不利になります。仮に「メタノールは高空で有利」が正しいなら、別の理由があるはずです。



出力は燃料の発熱量に比例する?

『ハイオク車にレギュラーガソリンを入れたらどうなりますか?』 ホンダ インスパイア のみんなの質問 (yahoo.co.jp)

「ハイオクガソリンは、レギュラーとは異なる成分のため、発熱量がわずかに大きくなっています。レギュラーガソリン 34.5 MJ/L (低位発熱量では、32.8MJ/L)ハイオクガソリン 35.1 MJ/L (低位発熱量では、33.3MJ/L)出典は、資源エネルギー庁が作成したデータ(エネルギー源別標準発熱量(平成19年5月25日改訂)です。つまり 1.7% ハイオクの方が、出力が大きくなります。」

 さて、2018年版の標準発熱量は

エネルギー源別標準発熱量(2018年度改訂)の解説 (meti.go.jp)

プレミアム 31.8MJ/L  42.51MJ/kg
レギュラー 31.25MJ/L  43.1MJ/kg

 リッター当たり発熱量はプレミアム>レギュラーですが、kg当たり発熱量はレギュラー>プレミアムです。

 リッター当たり燃費ならリッター当たり発熱量に関係すると考えるのが自然ですが、ライター氏はなぜ出力がkg当たりではなくリッター当たり発熱量に関係すると考えたのでしょう? というか、リッター当たりもkg当たりも関係ありません。発熱量は吸気体積当たりで考えるべきです。



 燃料をエンジン内部に入れても空気(中の酸素)がなければ熱エネルギーになりません。エンジン排気量が大きいとトルクが大きくなるのは、エンジンという吸気ポンプに吸い込まれる空気量が多くなるからです。ただし、燃料も気体の形でエンジン内部に入るなら、その分だけ空気量が減ります。

 仮に、エンジン内部に入る前に燃料と空気が混合されているとします。

 メタンとイソオクタンの酸化反応式、発熱量(kJ/mol、低位発熱量)は次の通りとします。

メタン CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O + 801kJ
イソオクタン C8H18 + 12.5O2 → 8CO2 + 9H2O + 5120kJ

 仮に空気組成を酸素20%、窒素80%とし、反応にほとんど関係しない窒素を式に加えると

メタン 
CH4 + 2O2 +8N2 → CO2 + 2H2O + 8N2 + 801kJ (総モル数は11→11(変化なし))

イソオクタン 
C8H18 + 12.5O2 + 50N2 → 8CO2 + 9H2O + 50N2 + 5100kJ (総モル数は63.5→67)

ですから、混合気1モル当たりの発熱量(kJ/mol)は

メタン     801/11 = 72.8
イソオクタン  5120/63.5 = 80.6

 気体の温度、圧力が一定なら体積はモル数に比例しますので、吸気体積当たりの発熱量はこの数字に比例します。実際には、イソオクタンはかなりの割合で液体のまま燃焼室に入りますので、イソオクタンの吸気体積当たり発熱量はこれより大きくなります。
 
 天然ガス(主成分はメタン)を使用する自然吸気エンジンの出力が低い理由がある程度理解できると思います。

 この計算を(プレミアムガソリンに25%含まれる)トルエン、そしてエタノール、水素について行うと発熱量(kJ/吸気モル数)、モル数変化は

トルエン 81.2 (46→47)
エタノール 77.3 (16→17)
水素 68.3 (3.5→3)

 水素エンジンの出力が小さいことがわかります。

 ところで、イソオクタンの酸化反応では分子数が63.5→67と5.5%増加し、これは圧力上昇の方向ですが、一方で加熱すべき分子数の増加(温度低下の方向)でもあります。


 逆なのが水素で、反応後に分子数が14.3%減少します。


 このような分子数の変化、さらには排ガス中の各成分の比熱、比熱比、燃料気化熱を始め、多くの要素がトルク(回転数を乗じて出力)に影響します。ですから、イソオクタン、トルエン、エタノールについては、本計算結果ぐらいの差だけではトルクがどうなるかは分かりません。


 なお、文献により発熱量の数値が変わるので、上の計算は「燃料の体積当たりの発熱量で出力を議論することは無意味」を説明するための参考程度としてください。


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