レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
第2次大戦中の日本の軍用機にアメリカ製点火プラグを装着しアメリカ製ガソリン、アメリカ製エンジンオイルを使用すると性能が向上したと言われますが、その「性能」は推測値のようです。
なお、日本で里帰り飛行し、現在、知覧に展示されている陸軍四式戦闘機・疾風は戦中の日本製点火プラグが装着されていますので、アメリカでのテスト、里帰り飛行は日本製点火プラグを使用していたのでしょう。
https://x.com/A6M232/status/1861981960396325015
さて、Xで議論になっているのが、「点火プラグで最高出力が変わるか?」
https://x.com/naga_888888/status/1861734471705489699
https://x.com/naga_888888/status/1861904173102760278
ただ、「これ良く言われてるのですが、プラグ変えて馬力上がります?(失火しっぱなしで火が付かないとかなら別話)」は少し違うかなと思います。
デンソーのウェブサイトではイリジウムプラグによる1.4%出力向上を謳っています。
https://am.denso.com/plug/products/iridiumpower
ただし、今どき珍しい2ストロークエンジンでのテストです。4ストロークではそんなに出力向上しないのではないでしょうか?
さて、デンソーでは点火プラグで火花が飛んでも※失火する理由について
https://am.denso.com/plug/basic/spark/
「電極が熱を吸収する消炎作用の方が火炎核の発熱作用より大きいと、火炎核は消滅、失火します」
としています。つまり、失火しない場合も発熱作用が消炎作用との綱引きに勝った結果ですし、綱引きが発熱作用の圧勝になれば燃焼効率(本来得られる熱エネルギーに対する比率)、燃焼速度が向上するでしょう。
さて、ロータスF-1チームは1976年まではチャンピオンの点火プラグを使用していたのですが、1977年からNGKになりました。1976年の富士のF-1レースでコジマF-1等日本チームのNGKプラグに着目したのがきっかけだそうです。
DFVエンジンによるベンチテストがコスワースで1976年12月16日に行われ、NGK点火プラグによる3HPの最高出力向上が確認されたとのこと(オートスポーツ1977-3-1(三栄書房))。0.6%程度ですね。
このように点火プラグを変えるだけで(キャブレター等、点火時期を調整したとしても)得られる最高出力向上はかなり限定的なものになるのではないかと思います。戦中に日本製点火プラグとアメリカ製点火プラグのどちらが最高出力に関して優秀だったのかは分りませんが、飛行機の最高速に影響するほどのものではないでしょう。
※「失火」はmisfireの訳ですが、デンソーでは
https://am.denso.com/plug/basic/spark/
●点火プラグで火花が飛んだが着火しなかった
●点火プラグに火花が飛ばないため着火しなかった
の何れも「失火」としています。どちらも混合気に着火しなかったのですから誤りではありません。
ただ、失火が起きた時は原因を区別して議論する必要があります。
なお、失火は「過失による火事」の意味が普通ですので、あまりいいエンジン専門用語ではありません。消火もエンジン以外の意味が普通ですので、滅火ぐらいが適当でしょうか。
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