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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

テクニカルコース(6)

 下は1983 British motorcycle Grand Prix - Wikipedia のコース図に加筆したもので、JFRMCブログ テクニカルコース に載せた図を修正したものです。

黒数字 直線長(m) 推定
青数字 コーナー半径(m) R 推定
赤数字 変速機段番号 
 
 中央上のBecketts(60R)で2速に落とすだけで、他は3速以上の高速コーナーで、その高速コーナーに350~720mの直線が続きます。

 さて、こちらは1988年の鈴鹿の航空写真に加筆したもの。地図空中写真トップ

です。コース中央下のコーナー(デグナーカーブ)は1987年シーズン中に2つのコーナーになりましたが、1986年時点では80Rの単一コーナーでした。

 直線手前にある高速コーナーは、最終コーナー(250R)、100・180R複合コーナー(ダンロップコーナー)、130Rですが、コーナーに続く直線が長いのはホームストレート(800m)で、他の2つに続く直線は200m程度です。
 ただし、250Rは手前にシケインがあるため、250Rへの進入は
シルバーストーンの最終コーナー(240R、Woodcote)より容易です。
 
 そして、西ストレートは長いのですが、その前のスプーンカーブ (60R)は高速コーナーとはいえないでしょう。
 鈴鹿はシルバーストーンよりコーナー脱出速度が直線タイムに与える影響が少ないのです。


JFRMCブログ テクニカルコース(2)で書いたように、スロットル全開時間、全開率(スロットル全開時間/ラップタイム)は

1983年シルバーストーン(ケニー・ロバーツ) 25秒  27~28%(その他:72~73%)
1986年鈴鹿(平忠彦) 25秒 18~19%(その他:81~82%)

程度です。これだけ見ると、その他(ブレーキング+コーナーリング)の割合が大きい鈴鹿の方がライダーのテクニックの差がラップタイムに表れやすいように感じられるかもしれませんが、この数値だけでは何も分らないのです。

 そして、高速コーナーでは速度が高いため、ライダーがマシンの挙動からミスに気が付いて修正を開始するまでの許容時間(修正が間に合う時間)が短くなります。240Rでは60Rでの反応時間の1/2でライダーが対処する必要があります。高速コーナーでは低速コーナーより正確なマシンコントロールが要求されるのです。そして、ライダーのミスにより転倒した場合のリスクも低速コーナーより大きいでしょう。

 「シルバーストーンはライダーにcourage and skillを要求するサーキット」なのです。

 付け加えるなら、シルバーストーンでは直線に入った時の速度が高いため、スリップストリームを使いやすく、出力の低いマシンであっても接戦に持ち込めば十分勝機があります。

 私は、シルバーストーンは、コーナーの多い「テクニカルコース」とは別の意味での「テクニカルコース」だと考えています。

※ロバーツは最終コーナー(Woodcote)を4速(Techniques of Motor Cycle Road Racing by Kenny Roberts, Hazleton 1988)、Abbey(170R)も4速で走る(1979年、Kenny Roberts by Barry Coleman, Arthur Barker 1982) としている。他地点は推定。

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テクニカルコース(5)




 上図のコーナーからの脱出速度と、コーナーに続く直線での加速時間について考えます。

 次のとおり仮定します。
〇直線加速距離700m
〇出力は120PS一定(後車軸)
〇走行抵抗は空気抵抗のみ
〇マシン質量210㎏(ライダー、燃料を含む)
〇真の最高速300km/h(直線長が非常に長いコースに合わせて減速比を調整した状態での最高速)

 コーナー脱出速度を80km/h(低速コーナー)と200km/h(高速コーナー)とした場合の、加速に寄与する出力は次のとおり。

〇コーナー脱出速度80km/h
コーナー脱出時に加速に寄与する出力 120×(1-(80/300)3)=117.7 PS
〇コーナー脱出速度200km/h
コーナー脱出時に加速に寄与する出力 120×(1-(200/300)3)=84.4 PS

 直線で加速すればするほど加速出力が減少します。
 
 さらに
 加速度a=P/mv(P:出力、m:質量)

ですので、速度上昇とともに加速度が小さくなります。

 これらの関係から、700m加速するのに要する時間を計算します。そして、コーナー脱出速度を10%上げた時も同様に加速時間を計算してみました。

低速コーナー
80km/h 11.56秒
88km/h 11.47秒(0.09秒短縮)

高速コーナー
200km/h 9.90秒
220km/h 9.59秒(0.31秒短縮)

 高速コーナーの方がコーナー脱出速度を1割上昇させた効果が大きいことがわかります。

 200km/hの1割上昇ではなく、80km/hと同じ8km/h上昇で計算してみても

208km/h 9.78秒(0.12秒短縮)

となり、脱出速度上昇による直線加速時間短縮効果が低速コーナーより大きいのです。


 もてぎのダウンヒルストレートでの加速距離は650m程度と思われますが、その手前のヘアピンは30R・180度程度の低速コーナーですので、その脱出速度の直線タイムへの影響は鈴鹿のスプーン(60R・110度程度)に比べると小さなものです
 そして、接戦になった時、直線での加速開始直後のスリップストリームの効果も低く、もてぎのこのセクションは、ライダーのテクニックより出力差が(鈴鹿サーキットのスプーンより)表れやすいと言えるでしょう。


 なお、上記計算は一定の条件の下での試算であり、個々の数字を保証するものではありません。あくまで脱出速度の差により直線加速時間がどの程度変化するかを推定するためのものであることに御留意ください。

テクニカルコース(4)

JFRMCブログ テクニカルコース(3)

ケニー・ロバーツの言う
〇低速コーナーより高速コーナー、特に高速セクションに繋がる高速コーナーがラップタイムを短縮する上で重要
〇重要なコーナーを攻めても0.1秒も稼げない。高速Sを攻めれば0.5秒稼げる

について考えます。
 下の図のようなコースを想定します。
 実際とは異なりますが、半径R(メートル)のコーナーの速度Vで等速走行するとします。
 遠心加速度=V2/R ですから、速度はRの0.5乗に比例し、コーナー通過時間もRの0.5乗に比例します。

 20R(半径20m)の速度が60km/hとして、Rと速度(km/h)、コーナー通過時間(秒)の関係は下図になります。

 
 60Rでは95km/h・3.6秒、200Rでは174km/h ・6.5秒です。高速コーナーは低速コーナーより通過時間が長いため、各コーナー通過時間がラップタイムに占める割合が大きくなります。

 そして、ロバーツの言が示すように、直線の前の高速コーナーはさらに大きな意味を持ちます(続く)。










 




 

テクニカルコース(3)

 ケニー・ロバーツ自身は次のように語っています(Techniques of Motor Cycle Road Racing by Kenny Roberts, Hazleton 1988)。

 To sort the bike during practice you should pick out the most important corners, usually the fast ones leading into fast sections, where your speed is going to be most vital. I didn't work on low gear corners at all. I don't waste my time there because it makes so little difference to lap times. The effort is better spent on the fast corners.
The main thing is to get the corners that are going to make the biggest difference to lap times down pat. You can go around the other corners as hard as you like, with everything dragging on the ground, and you will not even pick up a tenth in lap time. But go through a set of fast esses just right, at 100 percent, and you will pick up half a second.

 要するに
〇低速コーナーより高速コーナー、特に高速セクションに繋がる高速コーナーがラップタイムを短縮する上で重要
〇低速コーナーを攻めても0.1秒も稼げない。高速Sを攻めれば0.5秒稼げる

ということです。

 

テクニカルコース(2)

 1983年500㏄イギリスGPでの映像です。


  この映像からロバーツ(ヤマハ0W70)のスロットル全開時間を推測します。ロバーツはブレーキ開始と同時に全伏姿勢からさっと頭を上げるので、スロットルを閉じたタイミングが分りやすいです。

 映像のラップタイムは1分29秒前後ですが、スロットル全開時間は25秒程度で、ラップタイムに占める割合は27~28%程度です。

 一方、1986年500㏄日本GPでの平忠彦(ヤマハ0W81)のスロットル全開時間は25秒程度、ラップタイムの18~19%程度でした。

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