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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

現存するカワサキKR250エンジン



 シリンダー/シリンダーヘッドは前後別体
 シリンダー鋳込み数字は「125CC」
 スタッド前後ピッチ比は1.4


 からすると、1980-81年型です。
 注目すべきはシリンダーヘッド本体の冷却水出口に装着された連結パイプで、サーモスタットハウジングが設けられており、上に冷却水主出口、(向かって)左にバイパスがあります。


 なお、このエンジンにはエンジン番号がありません。ですから、世界GPの現場に持ち込まれなかったのではないかと思います。

 下は1980年フィンランドGPで撮影されたバリントンのKR250(既出)。上写真と撮影の方向が異なるので分りにくいですが、シリンダーヘッド左側(写真奥側)にサーモスタッドハウジングはなく、接続するホースの向きも上写真と異なっています。


 これはバルデの1982年型KR250(既出)で、サーモスタットハウジングはありません。


 1979年以前、KR250エンジンのシリンダー/シリンダーヘッドは2気筒一体で、シリンダーヘッドにはサーモスタットハウジングが設けられており、サーモスタットも装着されていました。
 1980年型になりシリンダー/シリンダーヘッドが2気筒別体になったのですが、最初の写真のようにサーモスタット装着型もあったのです。

 ただ、このタイプの連結パイプが実戦で使用されたかどうかは疑問です。

 「水冷」の目的は「水温を一定に保つ」ことではなく「エンジンの温度を下げる」です。サーモスタットを装着し(バイパス経路があったとしても)エンジン内の水の流れを抑制すれば、例え水温を一定に保ったとしてもエンジンの温度が高くなります。特に高温部のシリンダーヘッド、シリンダー排気ポート周辺が。

 当時、2ストローク500cc4気筒レーサーではサーモスタットを設けないのが常識になっていたのは当たり前のことです。





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Hervé GuilleuxのKR250

 1982年を最後にカワサキによる2ストロークロードレース活動は終わりますが、海外に残されたKR250/KR350の活躍は続きます。
 よく知られているのは、1983年のHervé GuilleuxとKR250で、スペインGPで優勝、ランキング4位となりました。この1983年250ccスペインGPがカワサキにとって最後のGP優勝です。

 オランダGPでのGuilleuxのKR250です。

 assen 1983 - YouTube から切り取ったものです。2分あたりから見てください。

 エンジンは1980-81年型と1982年型の区別ができませんが、後スイングアームが1982年型ですので、エンジンも1982年型なのでしょう。
 
 Guilleuxのマシンは元バルデのマシンといわれますが、そのとおりで、バルデが1982年に用いたKR250そのものだと考えます。





カワサキKR350が世界GP500ccに

  1982年頃、あるバイク販売店でレースビデオを映していて、その中に1982年500ccアルゼンチンGPのビデオがありました。ビデオ作品ではなく現地でテレビ放送を録画したもので、もちろん言語はスペイン語。

 店頭でビデオを見て気が付いたのは、KR350に乗ったマングがピットインする様子。アルゼンチンGPでは250㏄クラスはなかったので、マングは350ccに加えて余力で500ccにも出場したようです。

  レースの一部の映像がyoutubeにあります。映像は上の映像と同じでコメンタリーは英語です。


 5分25秒あたりから、ピットインするマングが写っています。


 スイングアームは新型のようです。

 MOTORCOURSE1982-83で記載されている予選結果は上位だけで、マングの名前はありませんから、あまりいいタイムではなかったのでしょう。

 さて、KR350のボア×ストロークは64×54.4mmあるいは64×54.39mmとされています。
 レギュレーションでは排気量を円周率3.1416で計算することになっていたはずですから、
 64×54.4→350.01cc
 64×54.39→349.95cc
になります。64mmといっても、64.00mmではなく63.97mm程度なのでしょう。

 例えばボアを64.10mmに拡げれば351.1ccになり、500㏄クラスに出場できます。

  当時のカワサキの競技用モデルシリンダーは、ELEX(線爆溶射)シリンダーだと思いますが、この「KR350」は


1 ELEXシリンダーのままボアを僅かに拡大
2 数mmボアを拡大しメッキシリンダーに変更(ドイツ等でELEX加工は困難?)
3 (カワサキとは関係なく)オリジナルシリンダーを製作

したのでしょうか。


 もう一つの可能性としては「350㏄のままだった」があります。レギュレーション違反ですが、他チームから抗議されなければ排気量測定されることはあまりないため、違反は見過ごされることが大半ですし、発覚したとしても(排気量超過と異なり)悪質ではないと見なされ大きな処分は受けなかった事例があった記憶です。


   ところで、Mangのカタカナ表記は「マンク」とされることがほとんどですが、私は「マング」としています。こちらのサイトを参考にしました。
ドイツ語のカタカナ表記 (fc2.com)

 リンク先でも書かれていますが、ドイツは方言による読みの差が大きいようですので、マンクが間違いとは言い切れないのですが、標準的にはマングだと思われます。

 ドイツ語ナレーションの動画ではMangのgが聞き取れないことが大半ですが、発音のきれいな方(アナウンサー?)の発音を聞きますとgが濁って聞こえます。

 そういえば何とかリンクというサーキットがありますね。リンクはドイツ語のRingのことだそうです。




現存するKR350

JFRMCブログ 1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(6) (tou3.com) などで、元1978年鈴鹿8耐仕様の2台のKR350

JFRMCブログ KR250/KR350エンジン(6) (tou3.com) でオーストラリアに現存するKR350を取りあげましたが、それ以外のKR350です。



-/601F-7805

 RACERS Volume 42 84頁のマシンです。


     テールカウル:1979年シーズン中に登場した新型。ただし、旧型も引き続き用いられた。
 カラーリング:1979年カワサキUK仕様


 1979年シーズン後、日本に帰ってきたマシンのようです。

 
 RACERSの写真で、後
気筒排気管に「C-21」と書かれています。1978年筑波フェスティバルに出場したKR350の前気筒排気管(下側排気管)には「C-12」と書かれていました。

JFRMCブログ 1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(3) (tou3.com)
でも書きましたが、排気管の種類と製造番号を表しているのでしょう。

 1978年シーズン末で「C-12」で、1979年シーズン終了後に日本に帰ってきたマシンが「C-21」ですから、「C」が仕様、数字が製造番号を表す可能性が高いと思います。


 海外にも多くのKR350が残っています。「kawasaki kr350」で探すことができます。








現存するKR250(6)

 こちらのマシン
Bonhams : The ex-Kork Ballington, World Championship-winning,1978 Kawasaki KR250 Racing Motorcycle Frame no. to be advised

 エンジンは1979年型ですが、カラーリングは1978年仕様です。スイングアーム・後クッションユニットは1978年以降のものです。しかし、肝心のフレームは?


 これは現存する61E-051/601F-7810 。

 クランクケース(ギアボックス部)のブリーザーがフレーム(バックボーン部)に繋がっており、フレームがキャッチタンクの役割を果たしています。スイングアームピボット左上のボルトはキャッチタンクのドレインプラグになります。
 実戦の写真で確認できた1978年型以降のフレームも同様ですが、1977年型以前はこのようになっていません。

 上のマシンは1977年型以前と同様、フレームにブリーザーパイプが繋がっていませんし、フレームにドレンボルトもありません。

 1978年型フレームの中には、フレームをブリーザーキャッチタンクにしていなかったものがあった可能性もありますが、前述のように実戦の写真で確認できないこと、私が確認した7台の601F-78××(または601F78××)すべてがフレームをブリーザーキャッチタンクにしていた※ことから、その可能性は非常に低いと考えます。

 このフレームは1977年型の可能性が非常に高いと考えます。


 ※フレーム番号が601F-78××(または601F78××)であっても、1979年以降に新造され、古い番号が打刻された可能性はあります。


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