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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

KR250/KR350のスイングアーム(3)

 現存するマシンについて書く予定にしていますが、その前に現存するマシンに時々見られる三角スイングアーム、加えて1982年型スイングアームについて書きます。

 RACERS Volume 42では71頁の三角スイングアームのKR250について「'83年向けの先行開発型。~スイングアーム右側の補強追加、マグネシウム削出しのリンク(ベルクランク)など、足回りのパーツが’82年仕様とは明らかに異なる」、「’82年からはアルミ製の三角スイングアームを採用。’83年先行開発型はマグ製ベルクランク」(72頁)としています。

 また、61頁のマングのゼッケン304KR250の写真に「1982 Daytona」とあります。そして81頁の同じゼッケン304KR250の写真について「’82年型では上部がベルクランクに接合するアルミ製三角スイングアームを採用。♯340はマンクのデイトナ車で~」と書かれています。

 しかし、私は
こちら(リンク)
 で、1980年後半にバリントンのKR250用の三角スイングアームが姿を見せていたこと。そして
こちら(リンク)
 で、1981年のピエルルイジ・コンフォルティのKR250のスイングアームに三角のものがあることを書きました。

 つまり、三角スイングアーム=1982年型ではないのです。

 しかも、RACERSで1982年デイトナとされた写真は、1982年ではなく1981年のものです。1982年のデイトナにマングは出場していません。ライダースクラブ誌1982-5にそのことが書かれています。
 こちらの1982年デイトナの記事にもマングの名前はありません。
Daytona’s 20th Annual International Lightweight Road Race – Rider Files (wordpress.com)
 
 また、1981-82年のKR250/KR350の写真を確認した限りでは

1981年
 世界GP以外で、マング(デイトナ)、コンフォルティのマシンで三角スイングアームを確認できる。

1982年
 三角スイングアームのマシンを確認できない。

です。

 RACERSのライター氏が「1982年型は三角スイングアーム」とした根拠を知りたいところです。まさか、1982年世界GPの写真を確認せず(1981年撮影のものを1982年と勘違いした)デイトナの写真だけを見て、「1982年世界GP第1戦の前のデイトナで三角スイングアームだったから1982年型は三角スイングアームと判断」ではないと思いますが・・・

 さて、1982年、三角スイングアームではなく、1981年までのものに似ている新型スイングアームがマング、バルデのマシンによく用いられました。

 こちらは現存する601F7821のスイングアーム(旧型)。


 これは1982年のバルデの新型スイングアーム。
左後端         右後端
 
 偏心シャフトを締め付けるボルトが2→1本になっていますし、横から見た後端形状も旧型と少し異なります。
 もちろん、これだけではなく(例えば)スイングアーム板厚、内部構造も異なる可能性があります。

 1982年に新型スイングアームを使用したのはマング、バルデで、限られた写真からすると、他のKR250/KR350ライダーのうちJean-Louis Guignabodet、ヘルバート・ハウフは旧型を使用しました。コンフォルティはどちらを使用したのか写真では分りませんが、おそらく旧型でしょう。

 私は次のストーリーではないかと推察します。

1 1980年シーズン後半に三角スイングアームをGPの現場でテストしたがバリントンの評価は低かった。
2 1981年、同じタイプ(あるいは若干の改良を加えた)三角スイングアームのKR250をマングのチームに貸与し、マングが1981年世界GP前のデイトナで使用したが、マングの評価は低く世界GPでは用いなかった。
3 コンフォルティのチームにも貸与されたが、コンフォルティは旧型スイングアームを使用した。コンフォルティは世界GPではイタリア、サンマリノ以外には出場しなかったようだ。
4 三角スイングーアームはこの時点で事実上お蔵入りになった。
5 1982年に(旧型に外見が似た)新型スイングアームがマング、バルデのチームに提供された(フレームも新型の可能性はある)。

 もちろん、このストーリーは、1982年シーズン中に三角スイングアームがマング、バルデのマシンに装着された写真がないことが前提です。



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1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(6)

JFRMCブログ 1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350 (tou3.com)

で書いたように、1978年鈴鹿8時間耐久レースのために2台のマシンを製作したようです。ただ、2台のマシンが鈴鹿に持ち込まれたかどうかは確信が持てません。フェアリングの横のライダー名(wada、kiyo)、メカニック名(awai、kato)の字体が異なるものがありますが、フェアリングを交換した可能性もあります。ゼッケン18ではなく18Tを確認できれば2台と分るのですが・・・

 1978年8耐に持ち込まれたのが「2台」であることを前提に、これまで私が書いた(1980年以降に確認された)2台の8耐仕様KR350と、実際に1978年8耐に持ち込まれたKR350との関係を整理しました。想像が入っています。


プラクティスのみ用いられたマシン

  ↓
 1978年の雑誌取材

  ↓
 1980年シーズン前公表写真

  ↓
 1983年雑誌取材・フジモーターミュージアム展示

 -/601F-7807



レース出場マシン

  ↓
 2006年カワサキワールド展示

 -/601F7821

1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(6)

  下は1980シーズン前とされるKR350の公表写真で、テールカウルの形状、サイレンサー別体の排気管からすると1978年型ではないように見えます。  

 しかし、バックボーンとダウンチューブを結ぶプレートに穴が見えます。

 そして、スイングアームピボット周辺の拡大写真。

 スイングアームピボット上下の穴とステッププレートの穴もあることから、元8耐仕様車らしいと分ります。

 このマシンは、1983年には下写真の状態になったと思われます。
1983年に雑誌の取材に供されたKR350です。

 赤矢印が示すバッテリー台、フレームのスイングアームピボット部上下の穴、バックボーンとダウンチューブを繋ぐプレートの穴、ステップレートの穴等から、元1978年8耐仕様車と分ります。


  このマシンは1983年に開館したフジモーターミュージアムに展示された-/601F-7807ではないかと思います。



(続く)



1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(5)

 カワサキワールドで開館(2006年)からリニューアル(2016)まで展示されたKR350。

-/601F7821(エンジン番号不明)


 排気管は1978年型とは異なりサイレンサー別体ですし、外装は1982年のアントン・マング車のものです。

 しかし、バッテリー台(黄矢印)があります。


 もちろん、スイングアームピボット上下の穴(写真では上のみ写っています)、ステッププレートの穴、(写真は添付しませんが)バックボーンとダウンチューブを結ぶプレート上の2つの穴もあります。

 このマシンのフレームは元1978年8耐仕様車です。

 なお、このマシンのフェアリング左後下端に穴が開いて排気管が見えています。


 1982年実戦でのマング車はこちら。

 
実戦でのマシンはフェアリングの穴の全域で排気管がはみ出ていますが、カワサキワールドのマシンではフェアリングの穴の後半分は排気管がはみ出ておらず、穴が排気管に対して大き過ぎます。

 また、1982年のマングのKR350で用いられた排気サイレンサー(上写真が典型)と、カワサキワールドのマシンの排気
サイレンサーは異なります。

 上のマシンのフェアリングはこのマシン本来のものではありません。

(続く)

1978年鈴鹿8時間耐久レースに出場したKR350(4) シフトパターン

 1978年鈴鹿8時間耐久レースの後、雑誌の特集記事のために取材に供されたKR350。


 シフトペダルを踏みこむとシフトシャフトは時計回り(右回り)します。記事では鈴鹿での清原選手の走行写真もあり、このマシンのシフトパターンは清原仕様でしょう。

 1978年筑波フェスティバルでの清原とカワサキKR350。


 これもシフトペダルを踏みこむとシフトシャフトは時計廻り(右回り)します。

 おそらく、清原選手は市販車(の試作車)のテストライダー経験が長かったため、1ダウン5アップのシフトパターンを好んだでしょう。ですから、上写真のシフトシャフトの動きは1ダウン5アップと思われます。


 一方、1978年8耐でのKR350。



もう1台。


 どちらもシフトペダルを踏みこむとシフトシャフトが反時計回り(左回り)しますので、1アップ5ダウン(いわゆるレーサーパターン)になります。


 清原選手がこのパターンを積極的に選ぶとは考えにくく、清原選手と組んだ和田選手が1アップ5ダウンを好んだのでしょう。8時間で撮影されたマシンはいずれも和田仕様のパターンということになります 。


 ペダルの上下どちらにもシフトロッドを装着できるので、ピットイン毎にパターンを変更することも可能ですが、他の写真からすると、清原選手は和田選手に合わせ1アップ5ダウンにしていました。


 

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