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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

ヤマハ250/350cc市販レーサーのクランクケース(12)

これまでの記述をまとめるとともに、若干補足します。以下の記述中、実際に形状等が変化した年については、ずれがある可能性が十分あります。

1 1972年
(1) 市販レーサーTD-3/TR-3のクランクケースは一般市販車DX250(DS7)/RX350(R5)のクランクケースと基本的に同じ形だが、市販レーサーのロワクランクケース左端ベアリング保持部にサークリップのための溝が加工されている。また、アッパー/ロワクランクケース前端のフレームマウント部の孔が一般市販車より大きくラバーブッシュが嵌められている。いずれも鋳造後の機械加工の差と思われる。
(2) 一般市販車のクランクケースベアリング保持部に鉄ライナーが鋳包みされている。市販レーサーでは鋳包みされていない可能性がある。
(3) クランクケースのアルミ合金、熱処理(有無を含む)が一般市販車と異なっている可能性がある。

2 1973~1975年
 一般市販車がRD250/350に(ピストンバルブ吸気→ピストン・リードバルブ吸気)、市販レーサーがTZ250/350に(空冷→水冷)にモデルチェンジ)
(1) 市販レーサーTZ250/350のクランクケースは一般市販車DX250(DS7)/RX350(R5)のクランクケースと基本的に同じと思われるが、若干の変更を受けた可能性がある。以下1-(1)に同じ。
(2) 一般市販車のクランクケースは、当初は72年と同じだったようだが、変速機メインシャフト右端カバープレートの装着用ネジ孔部追加等される。つまり、鋳型が一部変化している。市販レーサーのクランクケースは72年と同じと思われる。一般市販車と同様に変化した可能性がないことはないが、変速機メインシャフトカバープレートはパーツリスト上は装着されないまま。
(3) 1-(2)に同じ。
(4) 1-(3)に同じ。


3 1976~1980年
 一般市販車がRD250/400にモデルチェンジ。
(1) 一般市販車、市販レーサーのクランクケース右のクランクベアリング保持部周辺のリブが強化される等、共通した形状変化が見られる一方、それ以外(外部、内部)では、共通でない変化もある(これまで記述していないものもある)。一般市販車と市販レーサーのクランクケースの鋳型は共通ではないし、それぞれ72年型のクランクケースの鋳型とも異なる。
(2) 市販レーサーのクランクケースのベアリング保持部4か所にサークリップ用溝が加工される。
(3) 市販レーサーのクランクケースベアリング保持部に鉄ライナーが鋳包みされている。
(4) 1-(3)に同じ。

 ヤマハTZ250/350のクランクケースについて、「クランクケース打刻が1979年までDS7/R5のままだったから、クランクケースはDX250(DS7)/RX350(R5)と共通(あるいは流用品)」というような記述を見かけますが、当該ライター氏の判断基準がクランクケース打刻だけではないと信じたいと思います。

 そして、私が調べた限りでは、市販レーサーのクランクケースは一般市販車のクランクケースと「共通」でもないし「流用品」でもありません。「基本設計が共通」が適切ではないかと思います。
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