上図のコーナーからの脱出速度と、コーナーに続く直線での加速時間について考えます。
次のとおり仮定します。
〇直線加速距離700m
〇出力は120PS一定(後車軸)
〇走行抵抗は空気抵抗のみ
〇マシン質量210㎏(ライダー、燃料を含む)
〇真の最高速300km/h(直線長が非常に長いコースに合わせて減速比を調整した状態での最高速)
コーナー脱出速度が80km/h(低速コーナー)と200km/h(高速コーナー)の加速に寄与する出力は次のとおり。
〇コーナー脱出速度80km/h
コーナー脱出時に加速に寄与する出力 120×(1-(80/300)3)=117.7 PS
〇コーナー脱出速度200km/h
コーナー脱出時に加速に寄与する出力 120×(1-(200/300)3)=84.4 PS
直線で加速すればするほど加速出力が減少します。
さらに
加速度a=P/mv(P:出力、m:質量)
ですので、速度上昇とともに加速度が小さくなります。
これらの関係から、700m加速するのに要する時間を計算します。そして、コーナー脱出速度を10%上げた時も同様に加速時間を計算してみました。
低速コーナー
80km/h 11.56秒
88km/h 11.47秒(0.09秒短縮)
高速コーナー
200km/h 9.90秒
220km/h 9.59秒(0.31秒短縮)
高速コーナーの方がコーナー脱出速度を1割上昇させた効果が大きいことがわかります。
200km/hの1割上昇ではなく、80km/hと同じ8km/h上昇で計算してみても
208km/h 9.78秒(0.12秒短縮)
となり、脱出速度上昇による直線加速時間短縮効果が低速コーナーより大きいのです。
もてぎのダウンヒルストレートでの加速距離は650m程度と思われますが、その手前のヘアピンは30R・180度程度の低速コーナーですので、その脱出速度の直線タイムへの影響は鈴鹿のスプーン(60R・110度程度)に比べると小さなものです。しかも、直線での加速開始直後のスリップストリームの効果も低く、もてぎのこのセクションは、ライダーのテクニックより出力差が(鈴鹿サーキットのスプーンより)表れやすいと言えるでしょう。
なお、上記計算は一定の条件の下での試算であり、個々の数字を保証するものではありません。あくまで脱出速度の差により直線加速時間がどの程度変化するかを推定するためのものであることに御留意ください。
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