RACERS ブログ
http://racers.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/524racersvol9-5.html
で私のブログを読まれた方が書き込みされていますね。
RACERSの表紙のイラストの件、気がつかれた方も多いと思いますので、21と21Tの識別点(左側)を書きます。
1 スクリーン左側に書かれたライダー名がKennyかTairaか
2 フェアリング上下分割線に対するTECH21の位置
3 TECH21に対するYAMAHAの位置
4 YAMAHAに対するPLUSの位置
5 SHISEIDOのEの下にあるインレットの有無
6 テールカウルの21のカウル取り付けボルトに対する位置
7 テールカウル上のストライプ前端が伸びる位置
8 フレームに貼られた断熱材とフレームの孔の位置関係
が分りやすいですね。他にもあります。
もちろん、21Tはプラクティス時であって、本番では「T」は剥がされて「21」として出場しています。で、イラストですが、3、6を除き21で、3、6は21Tのものです。また、スイングアームのMICHELINの位置は21、21Tのいずれでもありません。
問題は、現存するマシンが21なのか21Tなのか、あるいは他のマシンの外装を変更したものなのかですが・・・近いうちに記事にしたいと思います。
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http://jfrmc.ganriki.net/zatu/pvs/pvs.htm の末尾に加筆した記事で紹介した
MotoGP Technology Second edition (by Neil Spalding, Haynes2010の訳本がスタジオ タック クリエイティブから出版されていましたので、借りて読んでみました。こなれていない直訳が多いのと、誤訳もあります。
直訳の例
原文93頁
Building an engine that performed similarly to the two-strokes on track, and then not doing enough to eliminate the difficulties going into the corners, meant that the Yamaha was outclassed by the old two-strokes during the first three Grands Prix.
訳本93頁
サーキットで2ストロークと同じような性能を発揮するエンジンを作りながら、コーナーに進入する際の困難さを排除することが充分できないことは、ヤマハが最初の3つのGPで、古い2ストロークに劣ることを意味した。
下線部は次のように訳した方がいいと思います。「コーナーに進入する時の困難さを解決できず、ヤマハはシーズン序盤の3つのGPで従来の2ストロークに劣る結果になった。」
誤訳の例
原文156頁
For more power, engine designers need to get the engine to breathe better, and more often. Bigger ports and valves help the breathing but, to maintain the mid-range power, the overlap between the inlet and exhaust phases has to be minimized. Despite the larger, heavier valves that the larger ports dictate, the valve opening period has to be as short as possible. That means the speed with which the valve is lifted from its seat to full lift and then back again has to be as high as possible.
訳本156頁
より多くのパワーを得るために、エンジン設計者はエンジンにもっと効率的に、もっと頻繁に呼吸をさせる必要があった。径がより大きいポートとバルブは吸排気を助けたが、ミッドレンジのパワーを維持するには吸気と排気の作用角のオーバーラップが最小限でなければならなかった。径のより大きなポートには大きくて重いバルブが必要
だが、バルブが開いている時間はできるだけ短くなければならない。つまり、バルブがシートに密着している状態からフルリフトまで開き、再び閉じるまでのスピードができるだけ速くなければならない。
下線部は「にもかかわらず、バルブが開くのに要する時間ができるだけ短くなければならない。つまり、バルブがバルブシートから最大リフトまで開くスピード、そして閉じるスピードができるだけ速くなければならない。」です。
バルブが開いている時間・リフトの面積を多く取りたいが、オーバーラップは小さくしたいので、バルブが開いていく速度、閉じていく速度を高くする必要があるということだと思います。
また、原文の「accelaration」は加速という意味と加速度という意味がありますし、162頁の「jerk」も「加加速度(あるいは躍度)」と訳さないと何のことかわかりません。このあたりは物理の話なので、訳者の限界なのでしょう。
まあ、訳文を読んでいておかしな記述は直訳、誤訳なので、本当はどうなのか推測する楽しみもあります。ただ、引用する場合は要注意です。
デスモドロミックバルブ駆動系について、
http://jfrmc.ganriki.net/zatu/pvs/pvs.htm で、
「デスモドロミックバルブ機構は、低回転ではバルブ駆動系の摩擦損失(フリクションロス)がバルブスプリングエンジンより小さいが、高回転では、むしろバルブスプリングエンジンより摩擦損失が大きくなると考えられる。」
と書いておりましたが、ドゥカティの監督が、「デスモのパワーロスが少ないのは低中回転」と語っていたことが分りました。上の頁の末尾に加筆しています。もちろん、この「低中回転」が具体的に何rpmなのかは分りませんが。
少し、気になったところを書きます。(5月29日加筆)
1985年8耐プラクティスでロバーツ/平はゼッケン21と21Tを用いましたが、レースで用いられたのは21Tです。で、今回のRACERS Vol09 の表紙はレース終盤、エンジントラブルでピットウォールにたどり着いた状況が描かれているようですが、実はレース使用マシンではなく、プラクティスでゼッケン21だったマシンです。
34頁の「064」について、「TT-F1に出場できるようにするには~ミニマム200台を生産する必要があった。」の200台は1000台の誤りだと思います。また同頁のイラストですが、以前に公開されていた写真が今回掲載されなかったのはなぜなのでしょう?
66頁で1986デイトナマシンのタコメーターがTZ500流用品となっていますが、0W76等YZR500用の誤り。そもそもFZ750(市販)のタコメーターは電気式でTZ500のタコメーターは機械式。わざわざ機械式タコメーター用ケーブル駆動部をFZ750エンジンに設ける訳がない。
74頁でキャブレターについて「'81~'82年のXJ「改」」とあるのはもちろん、'82~'83の誤り。
80頁の「~バルブ挟み角を小さくするのが有効である。バルブの傾きが小さくなればポートの曲がりが小さくなって吸入抵抗の低減につながり~」とあります。この文の後に「バルブ挟み角を小さくすると、それまで寝ていた吸気ポートの向きが起きてくる。この角度とシリンダー前傾角を合わせると、吸気ポートが垂直近くまで起き、水平方向に吸気が流れるサイドドラフトキャブレターだと、吸気通路を大きくねじ曲げないかぎり使えなくなってしまう。」とあるように、バルブ挟み角とポートの曲がりは基本的に無関係です。
その他、すでに http://racers.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/524racersvol9-b.html
のコメント欄で指摘されている85年8耐の開催日の誤りはご愛嬌として、今回の出来は非常によく、貴重な写真がなかったとしても980円以上の価値は十分あると思います。
標題の雑誌を購入しました。本号は1980年代半ばのヤマハ4ストローク750特集です。特に1986年デイトナ200で優勝したマシンについての記述は白眉といえるものです。マシンの詳細写真は8号以前より減少しているとは思いますが、全体の記述はそれを補って余りあります。
また、
http://www.geocities.jp/noda_keni/y/ou28/ou28.htm
で1982年型の機種記号について不明としていましたが、本号の記述から1983-84年型と同様、0U28である可能性が高いと思いますので、記述を修正しています。