「1993年11月の新計量法施行によって、法定計量単位を、国際的に合意された「国際単位系(SI)」※に統一するために変わりました。」すべてをSI単位に切替えるには、計画的な準備が必要であるため、猶予期限を1999年9月30日として進められてきました。切替えの過渡期は、カタログの表示では、最高出力、最高馬力を従来のメートル単位とSI単位を併記しました」
これからすると計量法によるワット化は1993年11月の新計量法施行によることになります。
私の認識は次のとおりです。
〇旧計量法(1951年)では出力(工率)はワットが原則で、内燃機関に関しては仏馬力が「当分の間」用いることができる単位として存続。これは1992年制定(1993年施行)の新計量法でも変わらなかった。
〇自動車に関する単位は馬力だけではなく、新計量法施行に伴い自動車工業会でその取扱いが決められた。カタログ等、顧客の目にふれる単位については従来単位(出力についてはkW)を併記することとされた。
参考 「SI化マニュアル 新計量法への適用」((財)日本規格協会1995)
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JFRMCブログ 日本馬力 (tou3.com) で書いたように、現計量法、旧計量法(1951年制定)に日本馬力(1馬力=750W)の規定は見当たりません。
さて、物理学会誌15巻9号(1960)の巻頭言(木内正蔵)に次のように書かれています。
「仕事率の単位’馬力’には英馬力,仏馬力,日本馬力(=0.750kW)などがあつて混乱したのであるが,メ ートル法に基づいた現行の計量法ではこれらはいずれもとり入れられず,ワット,キロワット(W,kW)がもつばら仕事率単位に使用されることになつた。ただ廃止される単位にもそれぞれ猶予期間があつて,仏馬力は昭和36年末までは使用できることになつている。これは,毎秒75キログラム重・メートル=735.5Wの重力単位系のものである」(注:計量法施行法には英馬力、仏馬力のみ規定された)
また、諮問 (scj.go.jp)
は旧計量法制定前に「新法に規定すべき計量単位の範囲並にその定義」について商工省から日本学術会議に諮問したものですが、商工省案では効率の単位にキロワット、補助単位にワットと馬力を提案しています。
「キロワットの四千分の三」は「キロワットの四分の三」、「HF」は「HP」の誤りと思われますが、紙の元データをテキスト化するときのミスの可能性もあります。
これらのことからすると
〇旧計量法制定前、つまり度量衡法時代に日本馬力が存在していた
〇度量衡法自体、メートル法、ヤードポンド法も公定法だったので、馬力に3種類存在していた
と思われます。申し訳ありませんが調べきれませんでした。
旧計量法制定により日本馬力は計量単位としては姿を消したのですが、その残滓が今でも残っています。
旧計量法制定前の1950年制定の建築基準法の別表第1に馬力規定がありました。
〇住居地域内に建築してはならない建築物
三 左の各号に掲げる事業を営む工場
(二) 馬力数の合計が〇・二五以下※の原動機を使用する塗料の吹付
(五) 木材の引割若しくはかんな削り、裁縫、機織、ねん糸、組ひも、編物、製袋又はやすりの目立で馬力数の合計が一をこえる 原動機を使用するもの
(六) 印刷、製針又は石材の引割で馬力数の合計が二をこえる原動機を使用するもの
〇商業地域内に建築してはならない建築物
(六) 馬力数の合計が〇・二五をこえる原動機を使用する塗料の吹付
(※商業地域で規制するものを住居地域でも規制する規定が一号にある→住居地域では馬力に関係なく原動機を使用する塗料の吹付事業はできないという趣旨)
そして、これらの馬力規定が1959年4月に次のように改正されます。
0.25馬力→0.75キロワット
1馬力→0.75キロワット
2馬力→1.5馬力
1馬力、2馬力については1馬力=0.75キロワットとして換算されています。0.25馬力が0.75キロワットになった理由はよくわかりませんが、0.25馬力で規制する意味があまりない施設として見直しされたのでしょうか?
1951年に旧計量法、計量法施行法により英馬力は1958年12月31日に計量法上効力を失いました。仏馬力も当初は同日に効力を失う予定でしたが、旧計量法改正により1961年12月31日まで効力延長された後に効力を失いました(内燃機関については再改正により当分の間効力が継続)。
このような時期に建築基準法が改正されたのですが、おそらく多くの法律、政令、省令等で、この時期前後※に統一的に1馬力=0.75kWで改正されたものと思われます。
※この建築基準法の改正は単位の見直し以外の規定の改正もあったので、「ついでに」単位を見直したのでしょう。ですから法律によって改正時期が異なったかもしれません。
また、1968年制定の騒音規制法施行令では当初からワット表示でしたが、0.75kWの倍数のものが見られます。
別表第一(第一条関係)
一 金属加工機械
イ 圧延機械(原動機の定格出力の合計が二二・五キロワット以上のものに限る。)
ハ ベンディングマシン(ロール式のものであつて、原動機の定格出力が三・七五キロワット以上のものに限る。)
(他にもありますが省略)
そんなわけで今でも日本馬力は姿を変えて生き残っているのです。
馬力に仏馬力(PS)と英馬力(イギリス、アメリカのHP)があることが知られています。
馬力 - Wikipedia では、日本における馬力について次のとおり記述されています。
1999年施行の新計量法では、仏馬力のみを暫定的に採用した。すなわち計量法附則第6条と計量単位令第11条は、「仏馬力は、内燃機関に関する取引又は証明その他の政令で定める取引又は証明(=外燃機関に関する取引又は証明)に用いる場合にあっては、当分の間、工率の法定計量単位とみなす。」とし[7]、計量単位令第11条第2項は、1仏馬力 = (正確に)735.5ワットと定義している[8]。
(略)
特に自動車用エンジンについては、キロワット (kW)表示は新計量法導入から20年以上経過した現在においても、個人ユーザーから事業者レベルに至るまでほとんど浸透しておらず、カタログにはkWを主として、依然としてPSが併記されている。
過去の経緯
日本の旧計量法では、1馬力は英馬力とも仏馬力とも違い、仏馬力をベースに重力加速度を(正確に)10 m/s2として計算した750ワットとしていた。これを日本馬力と呼んでいたことがある。日本馬力は1999年施行の計量法で廃止された。
読んでいて???だらけです。
現行の計量法(1992年制定)は1993年に施行されましたが、計量法制定により削除された単位については単位ごとに3段階(1995年9月30日、1997年9月30日、1999年9月30日)の移行期間が設けられました。しかし、工率(仕事率)ではkgf・m/sのみ1999年9月30日までの猶予規定がありましたが馬力の規定はありませんでした。
これはWikiにあるように計量法附則第6条及び計量単位令第11条により仏馬力が内燃機関等について「当分の間」使用できることとされたからです。
さて、現計量法施行までは旧計量法(1951年制定)が適用されていました。旧計量法制定により工率の単位はワットになったのですが、既存の単位について整理するために計量法施行法が1951年に制定され、同法第9条で馬力について定められていました。
計量法施行法第9条 英馬力及び仏馬力は、昭和33年12月31日までは、新法による法定計量単位とみなす。
2 英馬力は、746ワツトの工率をいう。
3 仏馬力は、735.5ワツトの工率をいう。
昭和33年=1958年です。英馬力はそのまま期限を迎えましたが、仏馬力については1958年改正により1961年12月31日まで延長され、さらに1961年改正により「仏馬力は、内燃機関に関する計量その他の政令で定める計量については、当分の間は、新法による法定計量単位とみなす。」とされ、1992年に旧計量法、旧計量法施行法が廃止されるまでそのままでした。
一方、1960年頃のJIS(日本工業規格、現日本産業規格)におけるkWとPS(仏馬力)の状況は次の通り(出典:馬力に関する座談会発言要旨および資料(日本機械学会誌第63巻501号))。
つまり、当時も今も馬力といえば仏馬力であって、日本馬力(1馬力=750W)が自動車、バイクで用いられたことはありませんでした。輸出製品の出力をわざわざ日本馬力で表記する意味がありませんし、元々、1958年で使用停止になるはずだった仏馬力が当分の間使用できるようになったのも、海外で使用されている「馬力」を廃止することの不利益が大きな理由でした。
馬力 - Wikipediaの「日本の旧計量法では、1馬力は英馬力とも仏馬力とも違い、仏馬力をベースに重力加速度を(正確に)10 m/sとしていた。これを日本馬力と呼んでいたことがある。日本馬力は1999年施行の計量法で廃止された」の根拠がわかりません。
「旧計量法」とは1951年計量法のようですが、この旧計量法には前述のように馬力の規定はなく、計量法施行法には英馬力と仏馬力しか見当たりません。
(続く)
〇それまでは1馬力=750ワット
というネット記事をよくみます。
1983年鈴鹿8時間耐久レースでグレーム・クロスビー/ロブ・フィリスが乗ったモリワキ・ヨシムラスズキGSX1000の騒音測定。測定は金曜日午前の予選後に行われた記憶です。
ストローク66mmなので測定回転数は5000rpm。
排気管から50cmの位置決めをするための細棒が見えませんが、他のマシンの騒音測定で細棒が写っているものもあります。たまたま写らなかったか、マシンによって細棒を使用したりしなかったりしたのかは記憶がありません。
このマシンはGSX1000(4バルブ)をヨシムラがチューンしモリワキ製アルミフレームの車体に搭載したもので、出場チームはヨシムラ。
クロスビー/フィリスは予選で1位、レースでは首位争いの中、エンジントラブルで遅れてしまい13位でした。
優勝マシンはスズキ・フランスからエントリーしたスズキGS1000R(XR41)で、GS1000ヨシムラチューンエンジン(2バルブ)をスズキ製車体(アルミフレーム)に搭載したものです。