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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

市販NR750とVFR750(4) 体積効率(3)

出典は
 Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)
中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。


 VFR750と比較し市販NR750の体積効率が低い回転数域が広くなっていることに関し、吸気管、排気管の形状、サイズ以外の要因の2つ目は

(2)市販NR750のバルブ面積、バルブ開口面積はV型8気筒としては小さい

です。

 出典の本文中に「NRの吸気バルブの全周長がVFRに比べて45%も長い」とあります。NRの吸気バルブ径は20mmですので、VFRの吸気バルブ径は27.5mm辺りになります。

 VFR750の吸気バルブ径を27.5mmとし、バルブ面積を比較すると
NR750:50.3c㎡
VFR750:47.5c㎡
で、NR750の吸気バルブ面積はVFR750の5.8%増に留まります。

 本来、4気筒・バルブ径27.5mmエンジンを8気筒化すれば、バルブ径27.5mmを2の1/3乗で除して
バルブ径:21.83mm
バルブ面積:59.9c㎡ (VFR750の26%増、NR750の19%増)
を確保できるにも関わらず。

NRの評価     HONDA (ganriki.net)
でも書きましたが、NR750のバルブ径は当時の一般市販車レベルより小さいのです。

 さて、
出典のFig.3.2に次の図があり、本文では吸気バルブの有効開口面積で比較しています。

 
 縦軸が「Geometrical~」になっていますが、これは誤りで、
http://www.jsae.or.jp/~dat1/mr/motor26/mr20072616.pdf
では
、「Effective Opening Area」になっています。そもそもGeometrical~がこんな曲線になるはずはありません。

(続く) 
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市販NR750とVFR750(3) 体積効率(2)

出典は
 Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)
中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」です。


 前回お示ししたように、VFR750と比較し市販NR750の体積効率が低い回転数域が広くなっています。体積効率は特に吸気管、排気管の形状、サイズが大きく影響しますが、ここでは他の要因として2つのことを指摘します。

(1)2吸気口が近接し、かつ同時に吸気する

 V型8気筒であれば各気筒の吸気行程は90度ずつずれています。しかし、NR750はV型8気筒を2気筒ずつ連結したような形のため、その2気筒分の吸気行程が重なっています。しかも、2気筒分繋いだために2気筒に比べシリンダー幅が18%短くなり、吸気口が隣接してしまいます。
 こちらに写真があります。
Honda NR750 fixing no.2 修理 その2 : SHINYO MAG / シンヨ マグ (livedoor.jp)

 このため、2ストロークV型4気筒で同時点火にしたのと同じことが起きると考えられます。
JFRMCブログ 同時点火化による出力低下(2) (tou3.com)
JFRMCブログ 同時点火化による出力低下 (tou3.com)


 

市販NR750とVFR750(2) 体積効率

 Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)
中、Vol.04の「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」のFig.3.3で、市販NR750とVFR750の体積効率が比較されています。

 体積効率については、
体積効率 [JSME Mechanical Engineering Dictionary]

 このFig.3.3の数値を読み取り、再現してみました。横軸はrpm/100、縦軸が体積効率(%)で、赤線がNR750、黒線がVFR750です。10000rpm以下でのNR750の体積効率の低さが目立ちますね。


 例によって、横軸を各エンジンの最高出力発生回転数比で整理しました。幅広い回転数比域でVFR750>NR750です。


 これにトルクを重ねます。左縦軸が体積効率(%)、右縦軸がトルク(kgf・m)。

 回転数比0.65前後で、2機種の体積効率とトルクの関係が変化することが分ります。


 

市販NR750とVFR750

 本田技術研究所のウェブサイトでテクニカルレビューが公開されています。
Technical Review 全論文一覧 | 本田技術研究所 論文サイト (hondarandd.jp)
Vol.04に「ホンダNR用楕円ピストンエンジンの開発」というペーパーがあり、市販NR750とVFR750のデータが比較されています。

 その中のFig.3.1の出力曲線から数値を読み取り、出力・トルク曲線を作成してみました。

赤線がNR750、黒線がVFR750、横軸がrpm/100、左縦軸が出力PS、右縦軸がトルク・kgf・mです。どの線が出力なのか、トルクなのかの説明は不要ですよね。
 
 なお、NR750の公表出力は130PSですが、Fig.3.1では127PS程度にしか見えません。VFR750(本来はVFR750F)の最高出力は仕向地によって異なるようですが、102~104PS程度と思われます、これもFig.3.1では98PSです。これは、個体差、測定条件(気温等、測定箇所(変速機出力軸なのか、クランクシャフト換算なのか)の差なのでしょう。
 本来はVF750ではなく、VFR750R(RC30)が比較対象でもよかったと思います。

 例によって、横軸の回転数を各エンジンの最高出力発生回転数に対する比率で整理しトルク曲線を作成してみました。

 赤線がNR750、黒線がVFR750です。

 図示した回転数比の範囲ではVF750の方がトルク変動が少ないように思えます。




NR750とRVF750の回転数相対化トルク曲線

 前回(リンク)書いたように「最高回転数が異なるエンジンのパワーバンドの広さを回転数の幅だけで比較することは無意味」です。

 さらに例を出すなら、NR750が9000~16000rpmのパワーバンド7000rmで、マツダ・ロードスター(ND)の1.5リットル4気筒エンジンのパワーバンド1500~7000rpmより「広い」ということは無意味なのです。

マツダ1.5リッター4気筒エンジンのトルク曲線(マツダ技報から引用(縦軸の数値を加筆) )

 

 そこで、NR750(NZ0B、NZ0a?)とRVF750(NW1C)のトルク曲線における横軸の回転数を、各エンジンの最高出力発生回転数に対する比率で整理してみました。

 例えば、この比率が0.8なら、実際の回転数はそれぞれ

RVF750(NW1C) 13000×0.8=10400rpm
NR750(NZ0B)  15000×0.8=12000rpm
NR750(NZ0A)  15750×0.8=12600rpm
になります。

 整理した結果です。

  なお、RACERS Volume.22によると、NW1Cのボアは市販車のボア70mmに対し70.4mmで750㏄を超過していた(レギュレーション適合)ので、グラフ中のMW1Cのトルクは実トルクに70/70.4の2乗を乗じて排気量750㏄に補正した値を表示しました。

 この図から、回転数比で見ればRVF750(NW1C)のパワーバンドの広さはNR750とほぼ同じで、パワーバンド内のトルクも大きいことが分ります。
・・・・・・・・・・・・・・・・
 なお、回転数比0.48~0.56あたりでは、トルクがNR750(NZ0B)>RVF750(NW1C)ですが、実はNR750の出力チューニングレベルはそれほど高くないことを考慮する必要があります。

 「排気量と回転数」で示したように、同一排気量なら回転数、出力は気筒数の1/3乗に比例します。NR750はバルブ、コネクティングロッド数が8気筒と同じなのですから「NRの評価」で書いたとおりこれを8気筒と見なし、NR750(NZ0B)の出力チューニングレベルをRVF750(NW1C)並とするなら(NW1Cの排気量が750㏄を若干超過していることは無視して)

最高出力は134.5×(8/4)^(1/3)=169PS > 155PS(NZ0B公表値)

最高出力発生回転数は
13000×(8/4)^(1/3)=16400rpm > 15000rpm(NZ0B公表値)

になります。つまり、NR750(NZ0B)の出力チューニングレベルは市販車ベースのRVF750に及ばす、逆にRVF750をデチューンすれば、そのパワーバンドはさらに広くなる可能性が高いでしょう。

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