レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
今年の5月に発売された本です。最近にしては珍しい新作本ですので、出版されたこと自体は喜ばしいですね。
ただ、日本の本らしく結構誤りがあります。ロードレース関係の記述については、後日、公開校正したいと思いますが、レース関係以外でも気になる記述があります。
例えば、1971年に発売されたスズキGT750(2ストローク水冷並列3気筒)について
「~実績のあったCCIだった。GT750に採用するに際して、名称をSRIS(Suzuki Recycle Injection System:クランク室残留オイル還元燃焼方式」に改めたが~~1971(昭和46年)までにこのSRISの名称が全モデルに適用になっている。」(80頁)
つまり「CCISからSRISへ名称を変更した」ということですが、CCIとSRISは別のメカニズムです。著者はCCIからCCISに名称変更したことと勘違いしたのでしょうか?
GT750のサービスマニュアルの目次でも、CCISとSRISが並んでいます。
また、81頁写真説明で
「クランクシャフト中央からパワーを取り出すことを示す図~「センターパワーテイクオフ」は、ポルシェの傑作レーシングマシン917も採用していた」
とあり、80頁本文でも同様の記述があります。
まず、3気筒ですからクランクシャフト中央は2番気筒のクランクピンですね。
そして、ポルシェ917を例に出さずとも、1960年代の二輪レーサーエンジンで、クランクシャフトの気筒間位置から動力を取り出していることが多く、スズキ、ヤマハのロータリーディスクバルブ2気筒・4気筒、4ストロークではホンダ2気筒(一部機種)・4気筒・5気筒・6気筒などがこの方式でした。
著者は当時の2輪レーサーエンジンの動力取出方法を知らないのかもしれません。あるいはポルシェの名前を出すことでスズキの評価を上げようとしたのでしょうか?
なお、これらのエンジンではクランクシャフトとクラッチギア(変速機メインシャフト上)の間にジャックシャフト(動力取出シャフト)がありますし、ポルシェ917もジャックシャフトがあるのは同じです。
しかし、GT750ではジャックシャフトはなく、クランクシャフト上のギアが直接クラッチギアに繋がっています。
現存する0W69のフレームのバックボーン部に孔が2つあります。
これは左側。
写真では1つしかみえませんが、もう1つは燃料タンクのブリーザーホースの先のポリ容器で隠れています。
この孔はフレームの補強パイプを装着するためのものです。これは1984年デイトナで撮影されたロバーツ用0W69。
しかし、次のリンク先の写真ではロバーツ(No2)、ローソン(No21)の0W69に補強パイプはなく、バックボーン部の孔のみ写っています。
Yamaha’s Daytona Special, the OW69 (1984) – Rider Files
こちらのロバーツの走行中の写真でも同様です。
1984 DAYTONA 200 - Australian Motorcycle News
Throwback Thursday: Three For The King At Daytona - MotoAmerica
しかし、こちらの走行写真では補強パイプがあります。
(20+) Facebook
ただし、レース中の0W69のフェアリング左右にある冷却風取入口がないので、プラクティス中の写真です。
これはスタート時の写真で、補強パイプは装着されていません。
この写真は次の動画から切り出したもの。
なお、1983年型0W69ではこの孔は確認できません。1984年型で新たに設けられたものと思われます。