レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
https://global.honda/jp/news/2024/c241105c.html
V型3気筒の前に直列3気筒の1次慣性力の釣合いについて考えます。
1次慣性力はcosθ(θ:上死点からのクランク回転角)に比例します。各気筒の最大1次慣性力(上死点時、下死点時)をPとすると、1次慣性力は
Pcosθ
になります。クランクシャフトのバランスウエイトを0.5P相当分にすると、1次慣性力の不釣合いは
0.5Pcosθになります。バランスウエイトはシリンダーの縦方向だけでなく横方向に
0.5Psinθ
の力を出し、0.5Pcosθと0.5Psinθの合力は
(常時)0.5
となります。ピストンが上死点にあるときの力の向きは上死点方向ですが、クランクシャフトの回転方向とは逆方向に力の向きを変えていきます(1次不釣合い)。
下は直列3気筒の模式図で数字がある黒線はシリンダー、3色の太い線は各気筒のクランクピンの向き、3色の矢印は各気筒の1次不釣合いの向きを示します。
これを真横から見たのが下図です。
各気筒の1次不釣合いの合力はゼロになります。ただ、最初の図でわかるように偶力が生じていますが、この偶力は1本のバランサーシャフトで打ち消すことが可能です。
普通の直列4気筒(下図、短い矢印は2次慣性力)
であれば各気筒の1次不釣合いは釣合っていますし偶力も生じませんが、偶力が生ずることを許容するならヤマハのクロスプレーンクランクシャフトのようなクランクピン配列も可能です(下図)。
しかし、3気筒エンジンでは各気筒の1次不釣合いの向きを120度間隔で配置する方法以外で各気筒の1次不釣合いを釣り合わせることはできません※。
V型3気筒の1次不釣合いの釣り合わせを考える上で、このことがまず基本となります。
※1983年発売の某社の250㏄90度V型3気筒エンジンは中央気筒の往復運動質量を他気筒の2倍にすることにより1次不釣合いを釣り合わせていた。その弊害についてはここに書くまでもない。