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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

KR250/KR350エンジン(7)

 前回紹介したオーストラリアに残るKR350。
Team Kawasaki Australia KR350 Prototype – MCNews

 これはエンジン単体(エンジン番号:61ES TKA05)の写真。


 そして、これは1983年に雑誌の取材に供されたKR350エンジン。

 シリンダーヘッドの冷却水ジョイント取付部の少し前(写真右側)のリブがありません。

 KR350は1978~82の5シーズンを戦い、その間にはシリンダーポート数・形状等も変更されたでしょうが、エンジン外観はあまり変化していません。
 
 さて、1979年以前のKR250は前後一体のシリンダー/シリンダーヘッドで、1978年型ではシリンダーヘッドのサーモスタットハウジングの位置・形状がKR350と異なりますが、1979年型KR250ではKR350とほぼ同じ位置・形状になり、エンジン外観はKR350に近くなりました。
 しかし、依然として次の点が異なります。

〇スタッド前後ピッチ比(既述)
〇シリンダーヘッド右側の冷却水入口のジョイントの(シリンダーヘッドへの)取付角度 350の方が寝ている。
〇排気口上の2つのリブの相対角度(既述)
〇シリンダーの鋳込み文字
  250:シリンダー右前・左後に「249CC」
  350:シリンダー右前のみに「350CC」

  1978年型では、サーモスタットハウジングが識別点に加わります。

(続く)



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KR250/KR350エンジン(6) 

 これは1978年夏頃に雑誌の取材に供された1978年鈴鹿8耐仕様KR350です。

KR250のシリンダースタッドボルトの前後ピッチ比
1975~81年型:1.4程度
1982年型  :1.8程度

ですが、1978年型KR350のスタッド前後ピッチ比は2.4程度です。シリンダーボアが250より10mm大きくなったことに伴いスタッド位置が変更されました。


 また、サーモスタットハウジングも1978年以前のKR250ではシリンダー左側中央部ですが、KR350では少し前に移動し、水出口が前気筒の点火プラグ横にあります。もちろん、ハウジングの形状そのものも異なります。

 さて、こちらの頁をご覧ください。オーストラリアに残るKR350です。
Team Kawasaki Australia KR350 Prototype – MCNews

 次の3基のエンジンの写真があります。

1 車体搭載エンジン エンジン番号:61ES-TKA01
2 エンジン単体     エンジン番号:61ES TKA05   
3 クランクケースのみ   エンジン番号:なし(本来の位置にはない)

 このうち3はKR250用クランクケースです。

「The bike originally featured a KR250 motor bored to 306cc.」
「In 1979 a full 350cc motor was installed and the bike was raced by Rick Perry in 1980, winning the 350cc ARRC.」

とあるので、3は306ccエンジンのものかもしれません。ストローク54.4mmで排気量306ccですと、ボアは59.8mm(305.6cc)、59.9mm(306.6cc)あたりになります。
 
  エンジン単体の写真(上記サイトの写真に加工)。


 青線で囲った部分のV字の2本のリブですが、小さい穴が開いていて、排気管を固定するスプリングを掛けるようになっています。このV字型リブは他の1978年型KR350でもはっきり観察でき、KR350は当初からこの形状でした。

 250ではV字ではなく2本のリブが平行です。下写真は1976年3月、スズカ BIG 2&4に出場したKR250。

 また、クランクケースの黄線で囲った部分の4本のリブがほぼ等間隔で並んでいるのに対し、上写真の250では等間隔ではありませんし、下写真のTE601-106(250㏄、左端(写真では下側)のリブはスタッドボルトの陰に隠れている)も、等間隔ではありません。

 
 また、250では赤矢印のリブが大きいのですが、上の350では小さいリブです。世界GPを走った350も同様で、これは1978年のカワサキUKチームのKR350エンジンで、黄矢印が指すリブがその奥のリブより小さいことが分ります。


 

(続く)

KR250/KR350エンジン(5)

 おそらくミック・グラントの1977年型KR250の「改良型」シリンダー。














KR250/KR350エンジン(4)

 これはジャン・フランソワ・バルデの1982年型KR250エンジンで、スタッド前後ピッチ比が1.8程度になりました。


 シリンダーの鋳込み文字は「124.6CC」に変わりました。

 
 RACERS Volume 42 の86~88、92頁掲載のエンジン単体は、スタッド前後ピッチが1.8程度であること、下写真の1982年型のアッパークランクケースと同様に後シリンダー装着部後方の4つのリブが等間隔に並んでいること、
シリンダーの鋳込み1文字が「124.6CC」であることから1982年型と分ります。


 このエンジン単体のシリンダーについて、記事では「シリンダーのFの文字も後期のものである(シリンダーの仕様はA~Fまでは順番通り、その後M/R/Sと進む)」とあります。

 
  その写真では、前シリンダー/シリンダーヘッドに「F」、後シリンダーヘッドに「R」とマジックペンらしきもので書かれています。前回、紹介した下の1981年型エンジンでは後シリンダーに「R」と書かれています。このF/Rはfront/rearの略で、シリンダー等を前後を別々に管理するためのものです。他メーカー車でも、シリンダー等に気筒番号・記号が記入される例は珍しくありません。



 RACERS 86頁のエンジン単体のシリンダーを観察すると前:M-5、後:M-2と刻まれており、これが仕様を表しています。

 一方、88頁のシリンダー単体は、スタッドボルトが通る孔の位置が下写真の1982年型よりシリンダー中心に近く、シリンダーの鋳込文字が「125CC」なので、1980または1981年型と分ります。


 鋳込み数字の前(写真向かって左)に「?-2」と刻まれています。?は「E」のようにも見えます。


(続く)

KR250/KR350エンジン(3)

  KR250は1980年型になるとシリンダーヘッド/シリンダーヘッドが各気筒別体になり、サーモスタットは装着されません。世界GP250ccクラスは全10戦でしたが、これは第7戦フィンランドでのバリントンのマシン。

 シリンダーの鋳込み文字は「125CC」。


 これはアントン・マングのマシン。


 バリントンのマシンとシリンダー/シリンダーヘッド形状が異なること、冷却水パイプをシリンダーヘッドにボルトを用いず固定していること、そしてシリンダーに排気量を示す鋳込み文字がないことから、これらは現地で製作されたものと思われます。

 この年、マングはドイツカワサキ(Kawasaki Motoren GmbH)の予算削減により、マシン貸与のみになったのですが、Kawasaki RACERS by Ian Faloon, Haynes 2002では次のように記述されています。

 (バリントンのKR250エンジンのシリンダー/シリンダーヘッドが前後別体になったことに関して)Mang too had individual cylinders for his KR250, but Sepp Schlögl developed these independently.

  With Virtually no spares, many componets were specially constructed, including the crankshaft and primary drive, and wint tunnel developed faring.

 なお、他のKRはポンプから前後気筒にそれぞれ並列に流れますが、このマシンは直流で、流れはポンプ→前気筒→後気筒→ラジエーター→ポンプになっています。前後気筒で水温が異なるデメリットを承知の上で、冷却水の流速を上げてエンジンの高温部の温度を下げるためでしょう。

 次は1981年型。
 これは1982年シーズン前に試乗に供された1981年型で、シリンダー/シリンダーヘッドの外形は1980年型と同じです。


 これはマングのマシンで、シリンダー/シリンダーヘッド外形はマングの1980年仕様によく似ていますが、排気管路の角度が上のエンジン(1982シーズン前試乗車)と異なります。


 Kawasaki RACERS では次のように記述されており、1980年と同様、現地製作のシリンダー/シリンダーヘッドが使用されたと考えられます。

  As in the previous season, Mang and his engineer Sepp Schlögl developed their own cylinders, pistons, crankshafts and exhaust pipes.

 (続く)

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