レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
56頁「アルコールも炭化水素だ」
57頁図「アルコール ●エタノール(C2H6O) ●メタノールCH3OH) ●ETBE」
59頁左列「第2世代は、原材料となるバイオマスからアルコール(エタノール(メタノールの誤記?)、エタノール、ETBE)を合成し~」
59頁左列「ER100は~ワインの絞りかすから製造~ワインの絞りかすだからアルコール系で「~酔っぱらうじゃないか?」という笑い話があるが、アルコール(メタノール、エタノール)は炭化水素でワインそのものではないから、そんな心配はない」
ライターさん、根本的に理解不足のような気がします。
アルコールは分子中に炭素と水素がありますが、炭化水素ではありません。
ETBEはアルコールではなくエーテルです。普通、エタノールとイソブテンから合成されます。
最後の文、ライターさんは「ワインはワインだから酔うのであって、ワインに含まれるエタノールによって酔うのではない」という理解のようです。
スズキチームが使用した燃料についての記述(56~59頁)があります。
下表はこの記述と次のサイトからから作成したもので、2024年、2025年の各年に使用した燃料の性状です。
MOTO R40 FIM | Elf Japan
excellium Racing 100
なお、59頁の「エクセリウム100の基本的スペック」の「蒸気圧(15℃)」は蒸気圧(37.8℃)の誤り、「蒸留(37.8℃)」は留分(100℃)の誤りです。
さて、スズキの技術者のコメント(83頁左列)では「去年の燃料より比重が軽いので、同じ重量だと体積が増えるわけです~~去年の感覚で『これくらいの距離は走るだろう』と思ったら~全然走らない」とあり、燃費悪化の原因が小比重燃料のようですが、これは技術者の勘違いでしょう。燃料の比重は2025年の方が大きいです。
100mLの燃料中の酸素原子を除いたC、H原子の質量は
R40 FIM 100×0.733×(100-3.69)/100=70.6 g
ER100 100×0.755×(100-6.00)/100=71.0 g
ほぼ同じです。しかし、酸素原子含有率が高いということは、炭素、水素が酸化している割合が多いということで、その分、発熱量は小さくなります。
また、上表の性状からすると、ER100はR40 FIMより若干気化しにくいようですし、技術者のコメント(83頁左列)でも「その他には若干ですが、揮発しにくい成分があったようなので、エンジンオイルの希釈には気を付けていました」とあります。ですから、昨年より、点火直前の混合気の濃淡が大きく、これも僅かな燃費悪化を招いた可能性もあります。
https://jfrmc.tou3.com/%E6%9C%AC%E3%83%BB%E9%9B%91%E8%AA%8C/racers%E3%80%80vol.76%20%E3%80%80tz500-6-
で書いた内容を整理しました。
https://jfrmc.ganriki.net/zakkan/kousei/kousei38.htm
にも追加しています。
まあ、こういうテーマのムックを出版すれば内容はともかく買ってくれるだろうということなのでしょう。コストをかけずに利益を出すには仕方ないのかもしれません。