レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
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1970年に登場した一般市販車RX350(R5)のエンジン打刻はR5で、350㏄空冷市販レーサーTR-3のエンジン打刻もR5、水冷市販レーサーTZ350のエンジン打刻も(いつまでかは私の中では不確かですが)R5でした。このことをもって「TR-3、TZ350のクランクケースはR5と共通」という記述もあるようです。RX350とDX250(DS7)のクランクケースは共通で、TD-3、TZ250のクランクケースも350㏄と共通ですから、250市販レーサーのクランクケースも一般市販車ものと共通ということになります。
下はR5のクランクケースです。
これは1977年ころの(R5の打刻のある)TZ350のクランクケースです。
青で囲んだ部分にねじ孔部分が追加されています(右側は実際には穴は開いていません)。また、クランクシャフトベアリング保持部周辺に赤線で囲んだリブが追加されているだけでなく、保持部そのものが太くなっているように見えます。
RX350と1977年ころのTZ350のクランクケースは、異なる型で製造されていることが分ります。エンジン打刻だけで同一部品かどうかの判断はできないのです。
そもそも一般市販車でも、エンジン打刻の型式を示す記号(下の例ではABC)が同じであっても、〇、△が異なるとクランケースの型が異なることがあります。
例
ABC-〇◇◇◇◇◇
ABC-△◇◇◇◇◇
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1970年に一般市販車であるヤマハDX250(輸出名DS7)、RX350(同R5)が登場し、ヤマハの250ccと350ccの並列2気筒エンジンのクランクケースが共通化されました。そしてこれら一般市販車のエンジンをベースに空冷市販レーサーのTD-3/TR-3のエンジンが製作されたのです。
1973年には一般市販車がモデルチェンジしピストンバルブ吸気→ピストンリードバルブ吸気になりましたが、市販レーサーはピストンバルブ吸気のまま水冷化したTZ250/TZ350にモデルチェンジしました。
これらマシンのクランクケースの基本型は同じで、この基本型のクランクケースが用いられた最後のマシンは250cc一般市販車RZ250Rです。1988年にマイナーチェンジされたものが最終型となりました。このマシンの製造停止がいつかは知りませんが、このクランクケースが登場してから基本型を保ちながら約20年間、様々なマシンに用いられたことは特筆すべきことだと思います。
さて、基本型は同じであっても、全く同じではありません。例えば1979年に発表された水冷のRZ250/RZ350(RD250LC/RD350LC)では冷却水が通るごく短い経路がクランクケースを設けられましたから、以前の空冷版からクランクケースが変更されたことが分ります。
で、一般市販車が水冷になる前の空冷市販車、水冷市販レーサーについて、クランクケースの部品番号中の機種を示す3文字がどうなっているか整理しました。
一部、不明な機種もありますが、一般市販車とレーサーではクランクケースの機種記号が異なり、一般市販車/レーサー、それぞれの区分で250と350(400)のクランクケースが共通であることが分ります。
ですから、一般市販車とレーサーではクランクケースが異なると思われます。では、その差は「メーカーサイドで市販車用クランクケースに追加工してレース用にする」程度のものなのでしょうか?
(続く)