レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。
以前 JFRMCブログ 50㏄世界最速は117km/h?(4) (tou3.com)
で、下の画像で富士スピードウェイのストレートをCB125Rで走る伊藤真一のヘルメット高が近兼マシンに乗る近兼のヘルメット高より40cm高いと書きました。
それにも関わらず、15PSでバックミラー、方向指示器、ナンバープレート等を装着したCB125Rが124km/hで、(測定条件は異なるものの)公称14PSの近兼マシンの108km/hより早いのです。
私がよく例に出す1967年のスズキRK67(2ストローク水冷並列2気筒50㏄)は後車軸出力17.5PSで、竜洋テストコースで176km/hです。このマシンを近兼マシンを重ねると
ヘルメット高の差は260mm程度です。そして最低地上高はRK67の方が75mm程度高いこと、車体の全幅がRK67の方が小さい※ことから、両車の全面投影面積はほぼ同じではないかと思われます。
※capbolt on X: "ちゃんとしたスペック表が世にでたの地味に初めてか? https://t.co/HauccyaDcD" / X から、近兼マシンは全長:3.1m、全幅:0.58m。
RK67のハンドル幅は規則で45cm以上で、ほぼその数字と思われますので、フェアリングの幅は少し狭く、そのフェアリングに腕が収まっている。
次は1971年型クライドラー50㏄単気筒レーサー(1971年世界チャンピオンマシン)との比較。
クライドラーの全面投影面積は明らかにスズキRK67、近兼マシンより小さいですね。
なお、同一マシンの下写真でハンドルバーの先が伸ばされ曲がっていることが分りますが、これは実質的なハンドル幅(ライダーが握る部分)を規則より小さくしつつ規則を満足するために伸ばしたものですので、ライダーが握る部分の幅(車幅)は38cm程度でしょう。
なお、写真のクライドラーのライダーはあの「ヤルノ・サーリネン」で、特に身長が低い人ではありません。
2台を上下に並べると、
近兼マシンは1971年型クライドラーと比べると
〇前面投影面積が大きい
〇ライダー前の構造部前側が大きく開口している
〇ライダー後ろに長い「ドラッグシュート」を引っ張っている
ように思います。
何回も繰り返しますが、出来が悪くてもいいんです。それは自己責任ですから。
ただ、低レベルの数字をいかにも「世界最高、日本のものづくりを証明」みたいに語ることは、50㏄レーサー、50㏄速度挑戦車の関係者に対する侮辱であり、多くの日本の技術者を貶めるものだと思います。
この漫画です。
修理を観る - GOTTANI | 少年ジャンプ+ (shonenjumpplus.com)
私が小学校5年生ぐらいの時でしょうか、近所に小さな自転車・バイク店ができました。若いお兄さんの店でいかにも独立したばかりという様子でしたが、明るく手際もよく、次の自転車はここで買うんだろうなあと思っていました。
(昔のヤマハ・ニュースでこの店が取り上げられていました)
でも、中1になる頃に我家は遠くに引っ越ししたのですが、転居先の近くにも若い店主の自転車・バイク店があり、そこで待望の変速機付自転車を購入することになりました。そして、この店主にパンク修理の方法やいろんなことを教えてもらいました。
私にとって機械いじりの原点は自転車でしたし、手際のよい整備の様子を観た感動は今でも忘れられません。
私の息子も私が自転車のパンク修理したりバイクをいじっている姿を観ていましたが・・・
今回のマシンは14馬力という報道です。
世界最高峰レースで日本チームが3部門全てで世界最速記録更新の快挙 50㏄エンジンで時速135キロ (msn.com)
以前、雑誌に掲載されたマシンでは最高出力9.56kW(13PS)/13500rpm・最大トルク4.8Nm(0.49kgf・m)/10800rpmでしたが、最高出力時のトルクを計算すると6.8Nm(6.9kgf・m)になってしまいます。何かおかしいのです。
capbolt on X: "雑誌に載ってるスペック表では ・最高出力: 9.56kW/13500rpm ・最大トルク:4.8Nm/10800rpm ということなんですけど、最高出力点13500rpmで最大トルクを出しても9.56kWは出ないよね。なにかが間違っている。 https://t.co/zmBLJyyWoE" / X
さて、今回の近兼マシンの記録を107.381(1km)とし、そのCdAが50㏄レーサーと比べてどの程度のものなのか試算してみます。
50㏄フルカウル・自然吸気の記録は158.164km/h(2014年、クライドラー)です。
世界GPに50㏄クラスがあったのは1982年までですが、1973年に既にチャンピオンマシン・クライドラーのスパフランコルシャンの最速ラップ速度が160km/hを超えており、その最高速は180km/h程度と考えられるにもかかわらず、2014年で158.164km/hは(ボンネビルの塩路の転がり抵抗が影響したとしても)低すぎます。
そこで、この記録と1960年代のスズキ50㏄レーサーの最高速(※1)の両方で、近兼マシンのCdA(空気抵抗係数✖前面投影面積)の50㏄レーサーに対する比率を求めてみました。
近兼マシンの最高出力を9PS(クランクシャフト換算、以下同じ)とすると、スズキ50㏄レーサーの最高出力を9PSにし、かつスズキ50㏄レーサーのCdAを1.95倍にすれば107.381km/hになります。
クライドラー(仮に20PSとした※2)を基準にすると、クライドラーを9PSかつCdAを1.44倍にすれば107.381km/hになります。
記事のように近兼マシンが14PSとすると、近兼マシンのCdAはスズキの3.03倍、クライドラーの2.23倍になります。
下画像は以前のマシンですが、2024年型も基本的に同じです。ライダーの後ろのカウルが効果的なドラッグシュートになっていますし、カウル表面積が大きいので、空気抵抗が大きいのは当然です。
2019年の記録が低レベルに終わったにも関わらず、その原因解析がまったくできずに再挑戦したのですから、今回の記録も納得です。
まあ、出来が悪くてもいいんです。それは自己責任ですから。ただ、低レベルの数字をいかにも「世界最高、日本のものづくりを証明」みたいに語ることは、50㏄レーサー、50㏄速度挑戦車の関係者に対する侮辱であり、多くの日本の技術者を貶めるものだと思います。
※1出典は スズキ・ホンダ・ヤマハ・他のマシン諸元と性能 (iom1960.com)
スズキの最高速は米津浜テストコース(1964年まで)及び竜洋テストコース(1964年12月竣工、それまでも一部完成した部分でテストが行われた)で測定されたものです。ですから直線がさらに長ければもう少し最高速が伸びるでしょう。
※2 前述のようにあまりにも低い数字であるため、実際は20PSを下回っていたと思われる。