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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

メタノールは(航空用燃料として)高空で有利?

(5) naga on X: "メタノールみたいな含酸素燃料ってオクタン価高いし酸素含んでるからガソリンと比べて酸素少なくて済むから高空では有利だよねって話したら、知らんヤツ割り込んで来て酸素分子1個しかねーじゃんwって言われたんで質量比だと半分だけどな!って返したらブロックされた事あったな~" / X (twitter.com)


 メタノールはメタンを酸化(電子を奪う)した形ですので、燃焼に必要な酸素が少なくて済む分だけ発熱量も減少しています。モル当たり801→644kJ/molぐらいです。


JFRMCブログ 出力は燃料の発熱量に比例する? (tou3.com)

の計算方法で計算した混合気1モル当たりの発熱量kJは
メタン     72.8
イソオクタン  80.6
トルエン    81.2 
エタノール   77.3 
メタノール   75.8

ぐらいですので、普通のガソリン成分より不利になります。仮に「メタノールは高空で有利」が正しいなら、別の理由があるはずです。



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出力は燃料の発熱量に比例する?

『ハイオク車にレギュラーガソリンを入れたらどうなりますか?』 ホンダ インスパイア のみんなの質問 (yahoo.co.jp)

「ハイオクガソリンは、レギュラーとは異なる成分のため、発熱量がわずかに大きくなっています。レギュラーガソリン 34.5 MJ/L (低位発熱量では、32.8MJ/L)ハイオクガソリン 35.1 MJ/L (低位発熱量では、33.3MJ/L)出典は、資源エネルギー庁が作成したデータ(エネルギー源別標準発熱量(平成19年5月25日改訂)です。つまり 1.7% ハイオクの方が、出力が大きくなります。」

 さて、2018年版の標準発熱量は

エネルギー源別標準発熱量(2018年度改訂)の解説 (meti.go.jp)

プレミアム 31.8MJ/L  42.51MJ/kg
レギュラー 31.25MJ/L  43.1MJ/kg

 リッター当たり発熱量はプレミアム>レギュラーですが、kg当たり発熱量はレギュラー>プレミアムです。

 リッター当たり燃費ならリッター当たり発熱量に関係すると考えるのが自然ですが、ライター氏はなぜ出力がkg当たりではなくリッター当たり発熱量に関係すると考えたのでしょう? というか、リッター当たりもkg当たりも関係ありません。発熱量は吸気体積当たりで考えるべきです。



 燃料をエンジン内部に入れても空気(中の酸素)がなければ熱エネルギーになりません。エンジン排気量が大きいとトルクが大きくなるのは、エンジンという吸気ポンプに吸い込まれる空気量が多くなるからです。ただし、燃料も気体の形でエンジン内部に入るなら、その分だけ空気量が減ります。

 仮に、エンジン内部に入る前に燃料と空気が混合されているとします。

 メタンとイソオクタンの酸化反応式、発熱量(kJ/mol、低位発熱量)は次の通りとします。

メタン CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O + 801kJ
イソオクタン C8H18 + 12.5O2 → 8CO2 + 9H2O + 5120kJ

 仮に空気組成を酸素20%、窒素80%とし、反応にほとんど関係しない窒素を式に加えると

メタン 
CH4 + 2O2 +8N2 → CO2 + 2H2O + 8N2 + 801kJ (総モル数は11→11(変化なし))

イソオクタン 
C8H18 + 12.5O2 + 50N2 → 8CO2 + 9H2O + 50N2 + 5100kJ (総モル数は63.5→67)

ですから、混合気1モル当たりの発熱量(kJ/mol)は

メタン     801/11 = 72.8
イソオクタン  5120/63.5 = 80.6

 気体の温度、圧力が一定なら体積はモル数に比例しますので、吸気体積当たりの発熱量はこの数字に比例します。実際には、イソオクタンはかなりの割合で液体のまま燃焼室に入りますので、イソオクタンの吸気体積当たり発熱量はこれより大きくなります。
 
 天然ガス(主成分はメタン)を使用する自然吸気エンジンの出力が低い理由がある程度理解できると思います。

 この計算を(プレミアムガソリンに25%含まれる)トルエン、そしてエタノール、水素について行うと発熱量(kJ/吸気モル数)、モル数変化は

トルエン 81.2 (46→47)
エタノール 77.3 (16→17)
水素 68.3 (3.5→3)

 水素エンジンの出力が小さいことがわかります。

 ところで、イソオクタンの酸化反応では分子数が63.5→67と5.5%増加し、これは圧力上昇の方向ですが、一方で加熱すべき分子数の増加(温度低下の方向)でもあります。


 逆なのが水素で、反応後に分子数が14.3%減少します。


 このような分子数の変化、さらには排ガス中の各成分の比熱、比熱比、燃料気化熱を始め、多くの要素がトルク(回転数を乗じて出力)に影響します。ですから、イソオクタン、トルエン、エタノールについては、本計算結果ぐらいの差だけではトルクがどうなるかは分かりません。


 なお、文献により発熱量の数値が変わるので、上の計算は「燃料の体積当たりの発熱量で出力を議論することは無意味」を説明するための参考程度としてください。


プレミアム(ハイオク)ガソリンは燃えにくい?

以下はガソリンについての素人の意見です。ご留意ください。
・・・・・・・
「ハイオクガソリンは燃えにくいからオクタン価が高い」のような意見がよく見られます。


 「燃えにくい」は文学的表現であって科学的な表現でありません。計測できるものではないからです。軽油はガソリンより着火点(発火点)が低いのですが、「ガソリンは軽油より燃えにくい」ですか?

 着火点に注目すると、エネオスはレギュラーガソリン、プレミアム(ハイオク)ガソリンの着火点を約300℃としています。
燃料油|SDS(MSDS)|ENEOS (eneos.co.jp)

 一方、石油学会では

 
公益社団法人石油学会|石油豆知識[燃料] (sekiyu-gakkai.or.jp)


「高オクタン価とは,燃料が高温下でしばしの忍耐の後,ジワリと力強く燃えることで,着火温度が高い程オクタン価が高い。 一例を示すと,リサーチ法オクタン価が120以上のトルエンの自然着火温度は552℃, イソオクタン434℃,ノルマルヘプタン230℃である*。」とあります。


 私の理解は

〇仮に着火点が同じ2物質であっても、着火遅れは物質によって異なる。

〇着火温度は圧力の影響を大きく受けるし、物質によってその影響は異なる。
〇着火点以上の温度において、着火遅れは温度によって変化するし、その影響も物質によって異なる。
〇圧力も着火遅れに影響するし、その影響も物質によって異なる。
〇実際の運転条件では温度、圧力は刻々と変化するし、その変化速度が着火点、着火遅れに与える影響も物質によって異なる。
〇「着火温度が高い程オクタン価が高い」と単純に書くことは誤りに等しいと思う。

 ところで、エンジン内部、EGRに堆積するデポジットについては、芳香族成分に由来するものが多いのですが、これは芳香族分の極性に起因し、その量には炭素数も影響するようです。

EGRについて
22-doc-paper-11-ja.pdf (denso.com)

エンジン内部について

en (jst.go.jp)


 もちろん、これは芳香族成分の特性ということであって、「オクタン価が高いからデポジットが多い」ということではありません。「オクタン価が高い成分の中にはデポジットが多くなるものがある」ということです。


 さて、ガソリンに含まれる芳香族成分のうち、PRTR法対象物質のガソリン含有量(2021年5月現在、wt%)は次のとおり。

製油所・油槽所等における (paj.gr.jp) 表1.1から抜粋)

 あくまでPRTR法対象の芳香族に限りますが、プレミアム(ハイオク)では36%、レギュラーでは16.1%含有しています。

 プレミアムガソリンに「エンジン室内のキレイな状態を維持する成分」が添加されているのは、特別な価値ではなく必要だから添加されているのかと想像します。

 なお、プレミアムガソリンの効果として吸気弁のきれいさが示される理由は、

en (jst.go.jp)

から何となく想像できるような気がします。


1966年125㏄マン島(60.725km×3周)(2)

の映像です。


(20+) Facebook



UK: ISLE OF MAN TOURIST TROPHY MOTOR CYCLING -- 125 AND 350 C.C. EVENTS. - British Pathé (britishpathe.com)

 このレースに出場したホンダ、スズキ、ヤマハのライダーは次の通り(数字はレース順位)

ホンダ ルイジ・タベリ8、ラルフ・ブライアンズ7、マイク・ヘイルウッド6
スズキ ヒュー・アンダーソン3、フランク・ぺリス5
ヤマハ フィル・リード2、ビル・アイビー1、マイク・ダフ4

 つまり8人出場し8人が完走という意味でも記録的なレースでした。ただ、タベリ、ブライアンズは2周目以降、マシン不調で大きく遅れてしまいました。霧のためスタートが遅れたことが影響したのか・・・

 この他に、デイブ・シモンズがトーハツに乗り11位入賞。そしてカワサキの藤井敏雄がプラクティス中の事故で死亡しました。
 1966-世界選手権レ-ス 本文-1 (iom1960.com)




1966年125㏄マン島(60.725km×3周)

レース中のビル・アイビーとヤマハRA97(125㏄水冷2気筒9段変速)。この撮影地点はジンジャーホールです。

 アイビーは2周目、3周目にオーバーザトン(平均時速100マイル突破)まで20秒という最速ラップ記録(2周とも同タイム)を出し優勝しましたが、アイビーから2分近く遅れ6位入賞したマイク・ヘイルウッド(ホンダRC149(5気筒8段変速))でも前年のフィル・リード(ヤマハ)の優勝タイム記録を上回るという記録破りのレースでした。


 下は2010年のジンジャーホール。30度程曲がる高速コーナーで、上写真のRA97のバンク角が小さいのはこのため。背景に写る観客はどんな気持ちでアイビーを見たのでしょうか?


 ところで上写真の左端を拡大するとスズキX-90が写っていますね。



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