忍者ブログ

JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

2ストロークエンジンのオイル混合比

https://x.com/komineya/status/1884480652151775706

「KTMの技術者を国内メーカーで取り合ってたら草(2stのオイル希薄燃焼の技術はここが一番進んでいた)」

「混合比1/60のEFI2st市販化に成功してるKTMの技術(者)を買ってしまえよヤマハ。」

 これはKTMのTPI(トランスファーポートインジェクション)エンジンのことで、「混合比1/60」は分離給油エンジンの燃料消費量/オイル消費量でしょう。

 ただ、「1/60」はTPIではない混合潤滑のモトクロッサーの数字のようです。TPIについては80:1~100:1という記事がありました。
https://www.tandem-style.com/bike/8357/

 
 混合仕様の代表として、国内ブランドのモトクロッサーですと、

2024年型ヤマハYZ250 ヤマルーブ2R(鉱物油)で1:30
2024年型カワサキKX112 エルフHTX976+(化学合成油)で1:32

です。1990年頃の国産市販ロードレーサーは1:30(化学合成油または化学合成油・植物油ミックス)が基本だったという記憶です。

 混合仕様の一般市販車ですと、

1973年 ベスバ125  1:50

1983年 アプリリア125(ロードスポーツ) 1:100

が記憶にあります。
 なお、バイクではありませんが、STIHLのチェーンソー(空冷)では純正オイルで1:50です。

 KTMの混合仕様で1:60指定はかなり良いようですが、使用条件(コース、ライダーの技量)、オイルの品質、インテナンス頻度によって混合比はかなり変わるので、これだけでは何ともいえません。

 2ストロークのトライアラーについての黒山一郎氏の記事はこちら。


 では、1:60がTPIエンジンのものだとした場合。

 分離給油ではスロットル開度等により混合比が変わるので、オイル消費量は混合仕様より少なくなります。1983年型ヤマハ・ジョグ(50㏄空冷スクーター)は混合比1:50あたり(実測)でした。また、水冷ロードスポーツ車ですとメーカー、車種によってかなり差があるようですが、某社では1/80~1/100(実測)でした。もちろん、使用条件で混合比は大きく変わります。


 さて、2ストロークのオイル必要量に影響するのは

空冷エンジン→ピストン・シリンダーの潤滑
水冷エンジン→クランクシャフト(特に大端部)の潤滑

です。混合であれ分離給油※であれ、オイルがガソリンと共にクランクケースに入り、ガソリンがある程度気化してからクランクシャフトのベアリングに付着します。それに対してKTMのTPIでは燃料がトランスファーポート(掃気ポート)に噴射されるので、オイルは別途クランクケースに供給されているはずで、そのオイルの状態は普通のエンジンよりよいはずです。

※直接、オイルをクランクシャフトに供給する機種を除く。

 国内ブランドの2ストロークバイクで燃焼室内直接燃料噴射を採用したものはなかった記憶ですが、国内ブランド船外機、PWCではヤマハ、カワサキ、トーハツが2ストローク直接燃料噴射エンジンを市販していました。これらのエンジンもクランクケースに直接オイルを供給していたはずですし、オイル消費量もキャブレターエンジンより減少していたはずです。

  トーハツはTLDI(two stroke Low pressure Direct Injection)について「TLDI船外機は、従来の2ストローク船外機に比べ、オイル消費量が少なく、煙も殆どありません。」としていました。
https://tohatsu.com/marine/jp/tech_info/faqs.html の「TLDI船外機にはどのオイルを使えば良いのですか?」

 「1/60」がTPIのものだとするなら、「ここが一番進んでいた」というようなものではないとしか思えません。
 なお、KTMのTPIは2023年型までで、2024年型からはTBI(スロットル・ボディ・インジェクション)になりました。つまり燃料供給位置はキャブレターと同じです。



 



PR

小慣性トルクエンジン

2007年に公開した

ビッグバン仮説

の続編として

小慣性トルクエンジン

を公開しました。


https://jfrmc.tou3.com/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96makes/20201223

でのKuboiさんとのやりとりを参考にしたものです。Kuboiさん、ありがとうございました。

航空機の記事

 かつてのF-1エンジンについて

「8気筒エンジンの最高出力時回転数は12気筒エンジンより1000rpm低く、12気筒エンジンと比べ無理のない余裕のある設計である」

と言えば笑われるだけです。しかし、第二次大戦中の航空機用ガソリンエンジンについての記事ではこのレベルが普通で、気筒あたり排気量が異なるエンジンの回転数を単純比較した記事をよく見かけます。

 「三菱航空エンジン史 大正六年から終戦まで」松岡久光 グランプリ出版2017  
「(中島)「誉」の最大回転数は3,000回転/分であり、(三菱)A20は2,900回転/分となっている」 「この差は一見小さいものに見られるが、主クランク軸受にかかる荷重は回転数の二乗に比例して大きくなり、これほどの高回転を採用していた発動機の信頼性に大きな影響を持つものになる」
 「先行していたアメリカのプラット社やライト社の2,000馬力クラスの対応発動機が、この回転数を2600ないし2700回転/分程度に抑えて、無理な値を採っていないことを見ても~日本側の高回転採用は背伸びしすぎていた感は免れないと思う」

 「悲劇の発動機「誉」」前間孝則 草思社2007
「(田中監督官の回想)「誉」と同クラスのエンジンであるR2800やR3350などの毎分の回転は2600とか2800で、「誉」みたいに3000じゃない。悠々と回っている。大量生産向きにゆとりのある設計しているんだなあと、あらためて感じました」
「(著者の記述)世界を見渡すとき、傑作エンジンで毎分3000回転に達しているのは「マーリン」である~稀有な例であって、他国のメーカーがたやすく真似できるシロモノではない」  

 レーシングエンジンでは、最大回転数は気筒あたり排気量の1/3乗に略比例します。下表は記事に登場するエンジンについて、排気量、気筒あたり排気量等々、誉の回転数を3000rpmとしてこの1/3乗則により換算した各エンジンの回転数(右端列)を整理したもの。換算式はA20を例にとると 3000×(1.99/2.31)^(1/3)=2855 。
 誉の3000rpmをA20の気筒あたり排気量に換算すると2855rpmで、A20の公称2900rpmより小さな数字になります。これは誉の3000rpmという数字は(A20との対比で)その気筒あたり排気量からすると低めの数字であることを示します。
 本表の引用記事中の各エンジンの回転数は、その気筒あたり排気量からすると(マーリンを除いて)概ね同じレベルのように見えます。  
 
 著者達は、回転数が制限因子だというなら、なぜ回転数が制限因子になるかを理解すべです。上の記事で「主クランク軸受にかかる荷重は回転数の二乗に比例して大きくなり」とあります。確かに慣性力は回転数の二乗に比例するが、同時に(気筒数が同じなら)


エンジンストロークと往復運動部質量に比例する
 ↓
排気量の4/3乗に略比例する

ことを全く理解せず、排気量差を無視して回転数を単純比較しているのです。

最高速(9)

 かつて、マン島TTレースの公式練習時、最高速測定がハイランダー地点の0.1マイル区間(160.9344m)で行われていました。

 どんな場所かは、この車載カメラの映像の2分10秒あたりからご覧ください。

 2分56秒ちょっとで、道路の右側にある白い建物がハイランダーです。

 これは1967年の測定結果です。

 太字が4ストローク、他は2ストロークで、machine欄の数字は気筒数です。

 250㏄のアイビーの速度が際立っており、350㏄クラスより早く500㏄トップのヘイルウッド(ホンダ)に迫る速度です。
 125㏄のアイビーの速度も排気量差からすると、同レベルといっていいでしょう。

 ただ、マン島プラクティスでの最高速は普通のサーキットでの最高速とは異なる次の要素があります。

●1周60.7kmもあるため、公式練習は「コースに慣れる」が他のサーキットより大事。抑え気味で走行している比率が他サーキットより大きいと思われる。
●公式練習は125~500㏄の4クラス(だったと思う)混合で行われるため、直線でのマシンによる速度差が大きい。映像で分るようにコースは狭く、しかも走路が少し曲がる箇所もあるため、ライダーは普通のサーキット以上に前をよく見る必要があるし、速度を落とさざるを得ないこともある。
●ライダーは胸を燃料タンクに着けるような伏姿勢は取りにくいと思われる。



 なお、おそらくホンダ500㏄4気筒はモンツァやスパ・フランコルシャンであれば260km/hを超えていただろうと思います。

最高速(8)

https://jfrmc.tou3.com/Date/20241215/1/

で、次のように書きました。

 MOTOGPの最高速度記録は366.1lm/hです。記録されたムジェロの直線長は1.2km程度ですので、「真の最高速」には不十分な直線長です。現代のMOTOGPレーサーの真の最高速は400km/hに達するでしょうか?
  
 ムジェロ

 
 マシンの諸元等を次のとおり設定します。
●直線に入って全力加速開始時の200km/h
●出力280PS
●直線での平均出力263PS(回転数が変化するので)
●出力伝達効率0.87
●後輪平均出力=263×0.87=228.8PS
●バイク重量233㎏(水、オイル、燃料(10㎏)、ライダーを含む)
●真の最高速=390km/h


 200km/hから390km/hに達するまでの走行距離、走行時間を計算したのが次のグラフです。


 ムジェロのストレート終わりから250mでブレーキ開始とすると366km/hまでの加速距離は950m、上の試算では960mでほぼ同じ数字になりました(加速時間は11.4秒)。

 真の最高速を400km/hにすると加速距離は850mになり、少し短すぎます。
 ですから、今のMOTOGPマシンの真の最高速は400km/hに達しないと思います。

 なお、真の最高速390km/hの場合、シケインのないポール・リカールでの最高速は380km/h前後になります。1980年代からすると、とんでもない速度ですね。

カレンダー

08 2025/09 10
S M T W T F S
1 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

リンク

カテゴリー

フリーエリア

最新CM

[08/23 野田]
[02/01 Kuboi]
[01/19 野田]
[01/18 Kuboi]
[01/16 野田]
[01/16 野田]
[01/14 Kuboi]
[01/13 野田]
[01/13 Kuboi]
[01/13 野田]

最新記事

最新TB

プロフィール

HN:
野田健一
性別:
男性

バーコード

RSS

ブログ内検索

アーカイブ

最古記事

P R

カウンター

アクセス解析