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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

真の最高速(2)

 前回、取りあげた1967年ルマン24時間での最高速の続きです。
 このレース、フォードGT Mk4とフェラーリ330P4との真っ向勝負になり、フォードが優勝、フェラーリが2位になりました。
 この2車とポルシェ910、907の諸元、最高速等は次のとおりです。


km/h ルマンで計測された最高速(910の速度は推定)
m/s  上の速度をm/sに換算
PS  最高出力(仏馬力) GT Mk4は500HP(英馬力)を仏馬力に換算
W  上の出力をワットに換算
factor ワットをm/sの3乗で割ったもの(CdAと比例関係)
  GT Mk4のファクターを100とした場合の他車のファクター
幅  車体の全幅(m)
  車体の全高(m)
factor修正 各車の全幅、全高が異なるため、各車の全幅、全高をGT Mk4と同じにした場合のfactor(概ねCdに比例関係にあると仮定)
 GT Mk4のファクター修正を100とした場合の他車のファクター修正

 なお、907はロングテールのルマン仕様なので、ファクター修正が特に小さな数字になっています。

 前回書いたように、最高速は風向・風速、気温(出力、空気抵抗)等々の影響を受けますし、何より公表諸元、特に最高出力が信用できるか、という問題はありますが、「最も美しいレーシングカー」と評されることがある330P4のCdはGT Mk4より10%以上大きかったようです。
 もちろん、Cdだけでレーシングカーの空力を評価できませんが、直線の長いコースでは大きな意味を持つことは言うまでもありません。

 

データ出典
ポルシェ 906/910/907/908/917(檜垣和夫、二玄社2006)
フォードGT(檜垣和夫、二玄社2006)
フェラーリ P/P2/P3/P4/DINO/LM/512S/M/312P/PB(檜垣和夫、二玄社2007)

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真の最高速

 真の最高速は、加速が終わり速度一定になった状態、かつ最高出力を発揮した状態の速度とします。しかし、サーキットで記録される最高速は直線部分がそれほど長くないため、加速する余力を残した状態で減速せざるを得ません。ですから、サーキットでの最高速には車重(以下、体重を含む)も大きく影響します。

 しかし、真の最高速に影響するのはCdA(空気抵抗係数Cd×前面面積A)と最高出力で、車重はあまり影響しません。1989年以前のルマン24時間レースではHunaudièresストレートにシケインがなく直線長(緩いベンドを含む)が約5.7km※1もありましたので、真の最高速に近い速度が記録されたのではないかと考えます。

 1967年のルマン24時間に出場したポルシェ910、907は何れも2リッター水平対向6気筒で最高出力は220PSでした。

CdAは
 910(ショートテール) 0.462㎡(推定※2)
 907(ロングテール)  0.352㎡

ルマンでの最高速は
 910 267km/h(推定、出典では907は910より30km/h近く速く、とある)
 907 295km/h

(出典:「ポルシェ 906/910/907/908/917」(檜垣和夫、二玄社2006)

 真の最高速は出力/CdAの1/3乗に略比例しますので、910を基準にし、そのCdAを907と同等にすると

 267×(0.462/0.352)^(1/3)=293 km/h

 実測値とほぼ同じ数字になります。もちろん、最高速は風向・風速、気温(出力、空気抵抗)等々の影響を受けるので、計算値と実測値の差が2km/h程度しかないというのは奇跡的です。


※ wikipedia、toyotagazooracing.comでは約6kmとなっているが、google(下)では5.7km程度に見える。


※2 出典の次の数値、記述を参考にした。
906 空気抵抗係数0.346
910ロングテール仕様 前面面積1.319㎡
「910~ホイール径が13インチとなり、前面投影面積が減ったにもかかわらず、空気抵抗は906とさほど変わらなかった。つまり空気抵抗係数は906より悪化していたのである」

点火プラグで出力が変化するか?

 第2次大戦中の日本の軍用機にアメリカ製点火プラグを装着しアメリカ製ガソリン、アメリカ製エンジンオイルを使用すると性能が向上したと言われますが、その「性能」は推測値のようです。

  なお、日本で里帰り飛行し、現在、知覧に展示されている陸軍四式戦闘機・疾風は戦中の日本製点火プラグが装着されていますので、アメリカでのテスト、里帰り飛行は日本製点火プラグを使用していたのでしょう。

https://x.com/A6M232/status/1861981960396325015


 さて、Xで議論になっているのが、「点火プラグで最高出力が変わるか?」

https://x.com/naga_888888/status/1861734471705489699 

https://x.com/naga_888888/status/1861904173102760278

 ただ、「これ良く言われてるのですが、プラグ変えて馬力上がります?(失火しっぱなしで火が付かないとかなら別話)」は少し違うかなと思います。

 デンソーのウェブサイトではイリジウムプラグによる1.4%出力向上を謳っています。
https://am.denso.com/plug/products/iridiumpower

 ただし、今どき珍しい2ストロークエンジンでのテストです。4ストロークではそんなに出力向上しないのではないでしょうか?


 さて、デンソーでは点火プラグで火花が飛んでも※失火する理由について

https://am.denso.com/plug/basic/spark/

「電極が熱を吸収する消炎作用の方が火炎核の発熱作用より大きいと、火炎核は消滅、失火します」

としています。つまり、失火しない場合も発熱作用が消炎作用との綱引きに勝った結果ですし、綱引きが発熱作用の圧勝になれば燃焼効率(本来得られる熱エネルギーに対する比率)、燃焼速度が向上するでしょう。

 さて、ロータスF-1チームは1976年まではチャンピオンの点火プラグを使用していたのですが、1977年からNGKになりました。1976年の富士のF-1レースでコジマF-1等日本チームのNGKプラグに着目したのがきっかけだそうです。

 DFVエンジンによるベンチテストがコスワースで1976年12月16日に行われ、NGK点火プラグによる3HPの最高出力向上が確認されたとのこと(オートスポーツ1977-3-1(三栄書房))。0.6%程度ですね。

 このように点火プラグを変えるだけで(キャブレター等、点火時期を調整したとしても)得られる最高出力向上はかなり限定的なものになるのではないかと思います。戦中に日本製点火プラグとアメリカ製点火プラグのどちらが最高出力に関して優秀だったのかは分りませんが、飛行機の最高速に影響するほどのものではないでしょう。


※「失火」はmisfireの訳ですが、デンソーでは

https://am.denso.com/plug/basic/spark/

●点火プラグで火花が飛んだが着火しなかった
●点火プラグに火花が飛ばないため着火しなかった

の何れも「失火」としています。どちらも混合気に着火しなかったのですから誤りではありません。

 ただ、失火が起きた時は原因を区別して議論する必要があります。

 なお、失火は「過失による火事」の意味が普通ですので、あまりいいエンジン専門用語ではありません。消火もエンジン以外の意味が普通ですので、滅火ぐらいが適当でしょうか。




紫電改展示館

 愛媛県愛南町にある紫電改展示館に行ってきました。愛媛県でも高知県に近いところです。
https://ainan-marugoto.jp/spot/sidenkaitenjikan/

 紫電改が海中から引き揚げられた場所。展示館近くの展望所にあったレリーフです。


 


 兵庫県加西市鶉野町にある紫電改実物大模型とは異なる実物ですし、操縦士は戦死したのです。1時間程展示館に居ましたが少し涙が出てきました。




1963年日本GP

の転写シールです。61年前のものですが、まだ使えるかな?

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