誤りの拡大生産には2種類ある。
その1 元々の記事が誤っているのに、その誤りに気が付かずそのまま転記する。
その2 元々の記事は誤っていないが、引用していることを隠すために変に改変、元々の記事の背景等を理解していないため、誤った記事になる。
公開公正で取り上げたRACERSの記事で、RACERSのライター氏がWikipediaを参考にしていると思われるものがあり、誤りの拡大生産のよい例となっている。
(以下、公開公正の抜粋です)
Volume42 94頁
Morbidelliの写真説明で「木工業」となっている。「モルビデリ」、「木工業」で検索すると、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%87%E3%83%AA がヒットする。この日本語版は英語版https://en.wikipedia.org/wiki/Morbidelliの”The firm began as a woodworking shop building furniture and wooden coach bodies for automobiles”を訳したようだ。英語版と同じ記述を他サイトでもよく見かける。
一方、 英語版の出典のリンク先では、”Giancarlo Morbidelli used his huge woodwork machinery firm to finance production of some superb race-bikes”となっている。英語版の記事を書いた人が「machinery」を抜かしたようだ。
Volume13 53頁
「並列3気筒では120度等間隔爆発にするとカップル振動が問題となり、180度不等間隔爆発にした場合は、同排気量の2気筒と同等か、単気筒の1/3倍程度の1次振動が発生するので~」
と似た次の文がWikipediaの「エンジンの振動」にあり、RACERSのライター氏はWikipediaの文を改変しRACERSに掲載したようだ。Wikipediaの文は言葉足らずではあるが誤りではない。
「直列3気筒エンジンでは等間隔爆発にすると偶力振動が問題となり、大きな排気量ではバランスシャフトの使用も検討される。180°クランクで不等間隔爆発にした場合は、同排気量の2気筒、単気筒エンジンの1/3程度の一次振動になる。」
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50頁で、NSR250が1992年型から75度Vになったことについて、「その結果、90度Vでは必要なかった1次バランサーが追加された」とあります。
http://jfrmc.ganriki.net/zatu/rc211v-balance.htm で書いたように、最大1次慣性力の50%釣り合うようにバランスウェイトを設定すると、V型2気筒の不釣り合いは
P(最大1次慣性力) × cos((d+v)/2) になります(dは2気筒間の位相差(度)、vはV角度)
90度Vの場合は最大1次慣性力×cos((90+90)/2)=ゼロ で1次慣性力は釣合ますが、2ストロークV型2気筒の左右のコンロッドが大きくずれていますので、慣性偶力は無視できないものになります。
75度Vに話を移すと、56頁で75度Vの点火間隔は105度になっています。この場合の1次慣性力の釣り合いは90度Vと同じになります。
したがって、「その結果、90度Vでは必要なかった1次バランサーが追加された」は56頁からすると誤りです。
一方、50頁の図、96頁のクランクシャフトの写真からすると、点火間隔は105度ではなく75度のようです。この場合、1次慣性力の不釣り合いは、0.26Pになり、バランサーシャフト1本では、完全に打ち消すことはできません。
http://jfrmc.ganriki.net/zakkan/kousei/kousei23.htm中、H1Rについて、次の文を追加しました。
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ライダースクラブ1983-11によるとH1がデイトナ200に登場したのは1969年で、ライダーはデイブ・シモンズ(記事はランディ・ホールによる)。また、Kawasaki RACERS by Ian Falloon, 2001 Haynesでは” Four modified H1s made the starting line at Daytona only weeks after the bike was available”、"~in December 1969, a limited production road racer, H1-R, became available" したがって、「H1R」がデイトナに出場したのは1970年から。
なお、この写真
http://ozebook.com/bikes/wp-content/uploads/2014/03/daytona-69sm.jpgからはシモンズのマシンはH1RではなくA7Rにも見える。