ロードライダー誌2015-8の72頁に次の記述があります。
「~ピストンバルブや~ロータリーディスクバルブは、1次圧縮を行うクランク室内の圧力とは無関係にポートタイミングを設定することができる」
「~無関係と言うと語弊があるので、クランク室の圧力と吸気ポートの開閉タイミングが常に一致するとは限らない・・・と言った方が良い」
「ところがこれを逆手にとり、混合気の慣性~を考慮したポートタイミングの設定が、上記2方式だと可能である。」
「~比較的近年まで、ピストンバルブやロータリーディスクバルブのレーシングマシンが多かったのは、こうした理由による。」
リードバルブは混合気の慣性を利用できないような書き方ですね。
クランクケースリードバルブも混合気の慣性を利用するのは同じです。というか混合気の慣性によって多くの混合気をクランクケースに押し込むことができます。ポートタイミングの設定を行う必要がないだけです。
ピストンバルブはピストンが上昇行程でも下降行程でも同じピストン位置で吸気ポートが開閉します(開き始め=閉じ終わり)。したがって、ピストンが下降行程になってクランクケース内圧力が高くなっても吸気ポートはすぐには閉じません。だから72頁中段にあるように「低回転で吹き返しが多くなり」ということが起きます。むしろ混合気の慣性(だけではありませんが)を利用しないとうまく作動しないのです。そして混合気の慣性等を利用したとしても限界があり、吸気期間を長く取ることができません。
リードバルブの弱点は吸気抵抗(リードバルブ自体の抵抗)であり、混合気の慣性を利用できないからではないのです。
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ところで、37頁のマシンのフレーム番号がYZR500-B-9601となっていますが、YZR500-B-9607の誤りです。同頁の左下端の写真に「9607」のプレートが写っています。
また、バイルがチーム・レイニーになっていますが、チーム・ロバーツだった記憶です。現在のヤマハのHPでもそうです。
http://global.yamaha-motor.com/race/wgp-50th/race_archive/season1990_99/1996/
他の頁でも、694㏄だったり695㏄だったり、0W19だったり0W20だったり統一がとれてない箇所がある等・・・これ以上は止めておきます。
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'89 WGP 500 特集です。42頁に「本誌ではVol.3において、'88年の第6戦西ドイツGPまで使用された下側チャンバー2本が左右降り出しのモデルがXR73で、第7戦オーストリアGPから登場した右2本出しのモデルがXR74と紹介していたが、今回の取材で真実はそうではなかったことが明らかになった。実はXR73は実車になることなく開発中止となったマシンだったのである」
Volume3での誤りはなぜ生じたのでしょうか?Volume3でもスズキ関係者に取材したはずなのに。スズキから提供されたこのような表
から勝手に1988年型第6戦以前がXR73、第7戦以降がXR74と勘違いし関係者に確認しなかったとしか思えません。
この記事を信用し、
http://www.geocities.jp/noda_keni/s/xr72/XR72.htm (修正済み)
の記事を書いたことを反省します。
公開公正しました。
http://jfrmc.ganriki.net/zakkan/kousei/kousei20.htm
でも、校正できないものがあります。「高速コースの3連戦」といった間違った認識を基にした記述です。
でも、1990年のYZR250は好きなマシンなので、このマシンのストリップ写真が掲載されただけでも嬉しいですし、特に本間選手の記事は興味深かったです。これが1000円なのですから、お買い得なことは間違いありませんが・・・
ところで、1986年の0W82についての記述もあるのですが、YPVSなしのバージョンがあったことの記述がありません。またいつかJFRMCで取り上げたいと思います。
前回、オーストラリアGPでのコシンスキーの「最終戦オーストラリアGPでの「完璧な」勝利」が記憶に残っていると書きました。しかし、RACERSではそれが全く異なるように記述されています(36-37頁)。
レースで、コシンスキーは明らかに余力を残しながらレースを展開します。決して
「サイドbyサイドの激しい戦いを繰り広げる」
「露骨に苛つくカルダスの前でコシンスキーはタイトル獲得に向かって全開の戦いを続ける」
ようなレース展開ではありませんでした。
このレース、タイトルを手にするためには、コシンスキーは優勝するだけではなく、カルドゥスを3位以下にする必要があります。独走してしまえば、ブラドルが戦意を損失してしまい、例えチームオーダーがないとはいえ(コシンスキーにその確証があるはずもない)、ブラドルの上位にカルドゥスが来てしまう可能性があります。ですから、コシンスキーはブラドルの背後につき、ブラドルの闘争心を刺激する作戦を採ったのです。
そして、残り2周に入りスリップストリームから抜け出したコシンスキーがトップに立つと、あっという間にブラドルとの差を広げ、最速ラップを記録、最終ラップにさらに最速ラップを更新し(ただ一人の1分36秒台=1分36秒681)、
たった2周でブラドルとの間に1秒987もの差を稼ぎ出しトップでゴールしました。
一方で、プラクティス2位だったカダローラ(YZR)も、カルドゥスを抑えるため、余力を残しながら3位争いを展開、終盤にカルドゥスを引き離しだします。
まさに、コシンスキー、カダローラ、2人の作戦どおりの展開となったのです。カルドゥスのシフトペダルが破損したことが、この「作戦」にとって予想外で不要な結果でした。
なお、カルドゥスのシフトペダルが破損したのは、残り2周に入ってからで、ピットインしたのはRACERSの記述「残り2周」ではなく、「残り1周」だった記憶です。リザルトではカルドゥスが26周のレースで24周したことになっていますが、25周でピットインしても(ピットがフィニッシュラインの手前にあるので)24周しかリザルトに残りません。
コシンスキーに対する「残り1周ピットサイン」に書かれた「CARDUS OUT」(37頁)の「OUT」は、「カルドゥスがピットインした」という意味ではなく、「カルドゥスが大きくスローダウン」という意味です。
(23日夜加筆)
第3戦スペインGPの記事(21頁)では「最終ラップ、
最終コーナーひとつ手前。その前のコーナーでトップを奪いそのまま逃げ切りにかかったカダローラの
インを、コシンスキーが鮮やかに差し返して劇的な勝利を収めたのである~「最終ラップの
最終コーナーで抜いてくるなんて信じられない」と、カダローラも脱帽」
いったい、ライター氏は、コシンスキーがカダローラを抜いたのは「最終コーナーひとつ手前」と「最終コーナー」のどちらと言いたのでしょうか。
「最終コーナーのアウト」が正解です。あのレースの映像を当時見た人なら強烈に印象に残っているでしょう。ライター氏はスペインGPもオーストラリアGPも見ていなかったのかな。見ていなかったら間違ってもいいというわけではありませんが。
スペインGP
http://www.youtube.com/watch?v=-Q58dDeweps
7分40秒あたりからご覧ください。