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レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

1973年の0W16/0W17(2) Teuvo Länsivuoriのマシン

 250㏄第6戦・350㏄第7戦オランダから、サーリネンと同じフィンランド人Teuvo Länsivuoriに0W16、0W17が貸与されました。このレースが0W16の初登場です。

 その0W16。

 フェアリング、タンク、シートからTZ350のように見えますが、フレーム、スイングアームが0W17と同じで、排気管が0W17よりかなり長いので0W16とわかります。もちろん、前後ブレーキもTZと異なります。
 そのスイングアームですが、クッションユニット取付部の位置は「前側」です。

 これは350㏄第9戦スエーデンと思われる写真。基本的にオランダ時と同じ仕様ですが、前ブレーキパネル前側のプレートカバーのみTZのものが装着されているようです。

 Länsivuoriは350㏄クラスで0W16に乗り2勝、TZ350での1勝(ドイツ)と合わせ3勝し、単純合計得点ではアゴスチーニ(MVアグスタ)を上回ったのですが、優勝回数、2位入賞回数がアゴスチーニより少なかったため、有効得点差3点でランキング2位でした。

 そして、オランダでのLänsivuoriと0W17。フェアリングは0W17のものです。

 排気管は突き出し型です。スイングアームも別写真からすると前側型です。

 そして250㏄第9戦スエーデンと思われる写真。

 排気管突き出し型、スイングアームも前側型ですが、オランダとは異なりTZ250のフェアリングが装着されています。
 
 250㏄クラスでLänsivuoriは0W17で2勝しましたが、4勝したディーター・ブラウン(シーズンの大半でTD3(空冷)に乗り終盤でTZ250に)に敗れランキング2位。
 
 
参考

 マカオGPに河崎裕之が0W16に乗り出場しましたが、4周目にシフトペダルが破損し4位に留まりました。

 スイングアームは他の写真からすると「後側型」。



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1973年の0W16/0W17

 順番が前後しますが、1973年の0W16/0W17についても触れます。

 250㏄第1戦フランスでサーリネン、金谷が0W17に乗り、第2戦オーストリア、第3戦ドイツと3戦連続してサーリネン、金谷が1-2位を占めました。

 そして第4戦イタリアでの多重衝突事故でサーリネンが亡くなり、ヤマハがレース活動の一時休止を発表したのですが、第6戦オランダ(オランダは(本来第7戦だが、イタリアがレース不成立のため第6戦に)から0W17はサーリネンと同じフィンランド人のTeuvo Länsivuoriに貸与されました。そして、このオランダで350㏄の0W16も登場、Länsivuoriに貸与されました。

 その0W17ですが、排気管に2種類あったようです。

 第1戦フランスでのサーリネンと0W17。

 排気管前部がフェアンリングの下部前側から突き出しています。そして排気管後端が後車軸までは伸びていません。

 レース名不明(ドイツGP?)ですが、同じくサーリネンと0W17。

 こちらは排気管前部がフェアリング下部前側に突き出ていません。また、排気管の後端が後車軸まで届いています。下の金谷と0W17(ドイツGP?)の排気管も同じ型です。


 高速コースで知られるモンツァでの(運命の)第4戦イタリアのスタートの写真では、サーリネン、金谷、何れも「突き出る」タイプに乗りました。

 排気管に2種類あり、コースにより使い分けしていたようです。

   次にスイングアームについて。

 2枚目の写真の拡大。サーリネンのマシンです。


 3枚目の写真の拡大。金谷のマシンです。


 スイングアームにクッションユニットが取り付けられる場所がサーリネンのマシンより前にあります。

 なお、シーズン前半、世界GPに持ち込まれた0W17は(前にも書きましたが)

0W16-B-305
0W16-B-306
0W16-B-307

の3台と思われます。


1975年前半の0W17(3) セコットのマシン

 1975年シーズン前半、セコットのマシンのフレームが写った写真を見たことはありませんが、下の第1戦フランスでのスイングアーム写真からすると、1974年型0W16フレームと思われます。また、この写真ではわかりませんが、高井のマシンと異なり、後ブレーキドラムも1974年型0W16のままです。

 

 さて、前々回、セコットのマシンのフェアリングが1974年型と同型と書きました。

 下の写真は第1戦フランスの後、4月上旬、イモラ200の前座レースで撮影されたものと思われますが、かなりくたびれたフェアリングです。


 そして、これは1974年最終戦スペインの350㏄クラスでのアゴスチーニの0W16。

 
 右ゼッケン下のCHAMPION、Castrol、DUNLOPのステッカーの位置関係が全く同じこと、前ゼッケン右(写真向かって左)の黄色ステッカーも同じですし、フェアリング上部・ハンドルバー上側の切り欠きも同じことから、このセコットのマシンのフェアリングは1974年シーズン終了時のままと思われます。
 もちろん、第1戦フランスで使用されたフェアリングもこれと同じです。

 以上のことから、
セコットのマシンも基本的な成り立ちは高井の0W17と同じで、高井の手記のとおりアゴスチーニの0W16を改修したものと考えられます。

 なお、フェアリングの違いから、0W16→0W17への改修は、高井の0W17は日本で、セコットの0W17は日本以外で行われたものと思います。

 さて、セコットの第2戦の写真がありませんが、250㏄第3戦ドイツの写真を見るとフェアリングは75年型が装着されています。

 そして、250㏄第4戦イタリアで使用したマシンは、それまでの3戦と異なりTZ250フェアリングが装着されています(下写真)。

 このマシンがTZ250なのか「0W17+TZ250フェアリング」なのか確証はありませんが、常識的には「0W17+TZ250フェアリング」と考えるべきでしょう。ただ、ドイツでセコットが転倒リタイアしていることから、このレースのみTZを使用した可能性はあると考えます。

1975年シーズン前半の0W17(2) 高井のマシン

 下写真は第1戦フランスでの高井のマシンですが、スイングアームがTZとは異なる角型断面です。


 次に、下の第2戦スペインでの高井のマシン。

 スイングアームが第1戦時と同じく箱型断面であることが分りますし、フレームパイプの取り回しがTZと異なり、1974年以前の0W16/0W17のものです。
 下の写真において各色が1本のパイプを示していますが、上のスペインGPの写真は下の1974年型0W16と同じです。なお、1973年型0W16/0W17も1974年型と同じ取り回しです。

TZフレーム


1974年型0W16フレーム


  もちろん、0W17とTZ250ではクランクケースが異なるので、フレームがTZでない以上、エンジンもTZではなく0W17であることは言うまでもありません。   

  以上のことから(高井の手記とは異なり)高井のマシンは0W17であり、

〇1974年型0W16を250㏄に改修したもの
〇クッションユニットはサーマルフロー付の新型
〇フェアングは1975年型0W16のもの

と考えられます。

 なお、スペインGPの写真から、後ブレーキドラムはTZのものと思われます。


1975年シーズン前半の0W17

 1975年250㏄クラス第1戦フランスから第5戦イタリアまで高井幾次郎が参戦しました。第3戦オーストリアで250ccクラスは開催されなかった(予定どおり)ので、250ccクラスには4戦出場しました。戦績は次のとおりです。なお、リタイア原因の記述はMOTORCYCLE YEAR 1975/76(英語版)によります。こんな本です。
Motorcycle Year 1975 / 76 No. 1 book published by Edita - l'art et l'automobile (arteauto.com)

250㏄第1戦フランス 0W17に乗るジョニー・セコットとの接戦の末に2位。
250㏄第2戦スペイン リタイア(コンロッド大端部)
250㏄第3戦ドイツ  リタイア(足痙攣)
250㏄第4戦イタリア リタイア(コンロッド大端部)

 プラクティスの順位は次のとおりです。
250㏄第1戦フランス  1
250㏄第2戦スペイン 10 
250㏄第3戦ドイツ   4 
250㏄第4戦イタリア  3

 さて、オートバイ誌1975-6に掲載された第1戦フランスGP等についての高井選手の手記では、高井、そしてセコットのマシンについて次のように記述されています。

「3月10日、(デイトナ200で)7位入賞した河崎裕之さんにデイトナビーチ・エアポートまで送ってもらい、一路、ヤマハのヨーロッパの基地であるオランダ、アムステルダムに向かう。」
「ここで知らされたことは、最初予定されていたモノクロス・サス付0W16(250㏄)が、スタンダードのサーマルフロー付きのTZ250に変更されたことだった。」
「~このフランスGPの250/350ccクラスに~J・セコットが~出場するということだ。マシンは、昨年アゴスチーニが使用した0W16をスケール・ダウンした250㏄である。」

 この記事からすると、高井のマシンはTZ250、セコットのマシンは0W17ということになります。
 なお、サーマルフローとは通常のツインショックのクッションユニットの外側に冷却フィン付オイルタンクを設けたものです。

https://global.yamaha-motor.com/jp/stories/offroadmania/ch3/

 実際はどうだったのか、フェアリングから見ていきます。

 第1戦フランスでの高井。

 同じくセコット。

 
 両車のフェアリングのカラーリングは0W16/0W17のものですが、2車のフェアリング形状が異なります。いずれもTZ250のものとは大きく異なります。

 第1戦での高井、セコットの0W17のフェアリングを、下の1974年、1975年の0W16のフェアリングと比較すると、セコットのフェアリングは1974年型0W16、高井のフェアリングは1975年型0W16と同じようです。

 1974年スペインでのアゴスチーニと0W16。


 1975年スペインでのアゴスチーニと0W16。


(続く)






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