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JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

全日本選手権での0W82

  1986年全日本選手権では、長谷川嘉久、片山信二に0W82が与えられ、シーズン終盤には奥村裕が復帰し、0W82勢に加わります。

 全日本で走った0W82は基本的にパワーバルブ仕様のようで、今のところ無パワーバルブ仕様は確認できません。


第3戦菅生


  1分35秒あたりで、ゼッケン2(片山)、ゼッケン98(長谷川)の0W82にパワーバルブコントローラーから伸びる2本のケーブルが見えます。

第5戦筑波

  32秒あたり。

 片山の0W82はパワーバルブです。


第8戦筑波

  18分33秒あたり。

 片山の0W82はパワーバルブです。18分44秒あたりからすると、長谷川の0W82もパワーバルブのように見えます。


  日本GPでは片山、長谷川、奥村が出場しましたが、映像からすると片山、長谷川のマシンはパワーバルブエンジンのようです。



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ヴィマーと平の0W82

 ヴィマーの0W82のパワーバルブの有無です。

 第1戦スペインGPレース後、ヴィマーが「ボクはパワーバルブの付いていないほうのマシーンを使っていたんだ」と語っています(グランプリ イラストレイテッド1986-7)。
 しかし、その後のレースでの状況はよくわかりません。

世界GP前のミサノ(イタリア)のレース(プラクティスかどうかは不明)。
Martin Wimmer (highsider.com)
 無パワーバルブ


オランダGPプラクティス ゼッケン4T(おそらく)YZR250-B-604
Martin Wimmer (highsider.com)
 無パワーバルブ

  ラバードと異なり、ヴィマーのマシンの写真は少ないのですが、ラバードと同様、無パワーバルブエンジンを多く使用したようです。
 
 平選手については、
下の平選手のインタビュー記事、そして少ない写真等からすると平選手はパワーバルブエンジンを使用することが多かったようです。

「彼(ラバード)の場合は、ヤマハの二タイプのエンジン、パワーバルブ付きと無しと。それで自分が乗った時、どうしても低速コーナーでバルブ付きが欲しいと思った所で、ラバードは高速仕様のバルブ無しを使ったりね。それで半クラッチを多用する~我々とは違うテクニックがある」(平忠彦写真集 きらめく汗のむこうに」(角川書店1987)

 参考まで、オランダGPプラクティスでのおそらくパワーバルブエンジンの(おそらく)YZR250-B-606。
Tadahiko Taira (highsider.com)

   下は第7戦ベルギーGPプラクティスの映像で、平選手が7:06 9:49 11:05 11:56あたりに登場しますが、無パワーバルブエンジンのようです。




ラバードの0W82の使い分け(2)

 世界選手権後のレースでは、

 日本GP(鈴鹿)は601に乗り優勝。
 スーパースプリント(富士)ヒート2は601に乗り優勝。

 下は日本GPのレース映像から切り出したもので、パワーバルブコントローラーから延びる2本のケーブルが見えます。


 テールカウルに1本線があります。


 なお、ライダースクラブ誌1986-11では「~予選ではYPVSなしで2分20秒493の1位、レースではYPVS装備で格闘戦に備えながら~」とあり、レースではYPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)エンジンが使用されたとしています。


 フジスピードウエイで行われたフジスーパースプリントは2ヒート制で、雨のヒート1でラバードがどちらのマシンに乗ったか確認できませんが、ドライになったヒート2で601に乗り優勝。

 高速コースのフジであれば無パワーバルブエンジン/602が適していたと思われますが、ヒート1は雨だったので601を選択し、ヒート2もそのまま601に乗ったようです。

 ヒート1とヒート2でマシンの変更がレギュレーションで認められなかったのかどうかは分りません。

(続く)



ラバードの0W82の使い分け

 ラバードの2台のヤマハ0W82には、

YZR250-B-601 にパワーバルブエンジン
YZR250-B-602 に無パワーバルブエンジン

が搭載されていたと思われます。

 写真、映像から、1986年、ラバードがどちらのマシンを選んだかを見てみます。601のみ赤字にしています。」


 第1戦スペイン(ハラマ)でラバードは602で選択しましたが、1周目に転倒。ところが、0W82に乗る平選手が他者に追突される等の多重衝突事故が起きており赤旗中断。ラバードは601で再レースに臨み優勝。
 第2戦イタリア(モンツァ)は602に乗り、アントン・マング(ホンダNSR250)に僅差の2位。

 第3戦ドイツ(ニュルブルク)は601で優勝。
 第4戦オーストリア(ザルツブルク)は602で優勝
 第5戦ユーゴスラビア(リエカ)は602でリタイア。
 第6戦オランダ(アッセン)は602で優勝。

 第7戦ベルギー(スパ)は雨中のレース、601でリタイア。
 第8戦フランス(ポールリカール)は602で優勝。

 第9戦イギリス(シルバーストーン)は雨中のレース、601で2位。
 第10戦スエーデン(アンダーストープ)は602を選択、タイヤは前インターミディエイト、後カットスリックで、雨が上がった後のウエットでスタート。レース後半に雨が降り出しレース終了、優勝。
 第11戦サンマリノ(ミサノ)は602で転倒リタイア。平が優勝。

 ラバードが601を選択したのは、雨中のレース(ベルギー、イギリス)、ツィスティなコース(ドイツ)でした。加えてスペインで、レース中断後の再レースで601に乗っています。

 6回の優勝のうち601(パワーバルブ)によるものは2勝(スペイン、ドイツ)、602(無パワーバルブ)によるものが4勝(オーストリア、ユーゴスラビア、オランダ、スエーデン)です。

Carlos Lavado Yamaha YZR250 | With Phil Anysley | MCNewsの記述
He used this bike, which was fitted with power-valves, for wet weather races, winning two. His other bike, with no power-valves and used for dry races, had four wins.
の内、パワーバルブ、無パワーバルブの各々の優勝数そのものは正しいのですが、それ以外の記述は誤りです。パワーバルブエンジンによる2勝はウェットレースではなくドライレースで、無パワーバルブエンジンによる4勝のうち1勝(スエーデン)はウェットレースです。


(続く)



ラバードの0W82のパワーバルブの有無とフレーム番号

 レーシングマシンのフレーム番号は

〇通関時に必要だから打刻
〇マシンを管理するために打刻

するだけのもので、フレームを交換しても、新フレーム番号は旧フレーム番号を踏襲することもあります。

 ただ、あるGPにおいて、同一フレーム番号のマシンが2台存在することは考えにくく、レーシングチームではマシンをフレーム番号で区別して管理、様々なデータを記録するのが通例です。

 
一般市販車ではナンバープレートが目立つ場所にあり、1台1台登録番号が異なりますが、レースの現場で、あるライダーに与えられた2台(以上)のマシンのゼッケン番号は同じなので、ゼッケン番号では区別できません。プラクティスではどちらか1台に「T」が付けられ区別可能になることがありますが、「T」マシンもレースでは「T」マークは剥がされ、もう1台と区別できなくなります。
 その一方で、フレームに打刻された小さなフレーム番号を確認するのは面倒です。

 そこで、レーシングチームの方針として、2台(以上)のマシンを区別するためにフェアリング、ステアリングトップブリッジ等に何らかの印が付けられることがあります。

 
 1986年のラバードのマシンを観察すると、第1戦スペインを除きフェアリングの前ゼッケン、テールカウルに短い黒線があります。

1本線
  

2本線
 

Carlos Lavado (highsider.com) の写真をトリミングしています。

  また、プラクティス時にゼッケン数字の傍に「T」があるマシンは、確認できた範囲では全て「2本線」でした。

 考えられる1本線・2本線とフレーム番号の関係は

YZR250-B-601→1本線/YZR250-B-602→2本線

YZR250-B-601→2本線/YZR250-B-602→1本線

のどちらかですが、前者の可能性が高いでしょう。後者ですと、チーム内でマシンの取り違えを起こす可能性が高まります。

 さて、ライダースクラブ誌1986-11のラバードのインタビュー記事でラバードは
パワーバルブエンジンと無パワーバルブエンジンの使い分けについて次のように語っており、ラバードがパワーバルブエンジン搭載車と無パワーバルブエンジン搭載車の2台をプラクティスで乗り比べていました。

「私のYZRは1台にはYPVSがつき、1台にはついてなかった。プラクティスで2台を交互に乗り込んで、そのサーキットに合った、タイムの良い方のマシンで走っていた」

 世界GP及び世界GP後の日本GP(鈴鹿)とスーパースプリント(富士)の写真、映像から、車体とエンジンのパワーバルブの有無を調べたところ、確認できた範囲では

1本線の0W82(おそらく601)
 パワーバルブエンジン

2本線の0W82(おそらく602) 無パワーバルブエンジン

でした。例えば、上に示した前ゼッケン「1本線」の写真はオランダGPプラクティス時のものですが(再掲)、

前ブレーキレバーの前方にパワーバルブコントローラーのプーリーから伸びる2本のケーブルが写っています。

 しかし、前回紹介した現存する602はパワーバルブで、私がかつて確認した601は無パワーバルブでした。

考えられることは
1 スーパースプリントの後、エンジンを積み替えた。

あるいは

2 実は1本線:602、2本線:601である。

 確たる証拠はありませんが、私は1の可能性が高いと思います。

(続く)



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