忍者ブログ

JFRMCブログ

レーシングマシンについての記事は「その他」にもあります。

ラバードの0W82の使い分け

 ラバードの2台のヤマハ0W82には、

YZR250-B-601 にパワーバルブエンジン
YZR250-B-602 に無パワーバルブエンジン

が搭載されていたと思われます。

 写真、映像から、1986年、ラバードがどちらのマシンを選んだかを見てみます。601のみ赤字にしています。」


 第1戦スペイン(ハラマ)でラバードは602で選択しましたが、1周目に転倒。ところが、0W82に乗る平選手が他者に追突される等の多重衝突事故が起きており赤旗中断。ラバードは601で再レースに臨み優勝。
 第2戦イタリア(モンツァ)は602に乗り、アントン・マング(ホンダNSR250)に僅差の2位。

 第3戦ドイツ(ニュルブルク)は601で優勝。
 第4戦オーストリア(ザルツブルク)は602で優勝
 第5戦ユーゴスラビア(リエカ)は602でリタイア。
 第6戦オランダ(アッセン)は602で優勝。

 第7戦ベルギー(スパ)は雨中のレース、601でリタイア。
 第8戦フランス(ポールリカール)は602で優勝。

 第9戦イギリス(シルバーストーン)は雨中のレース、601で2位。
 第10戦スエーデン(アンダーストープ)は602を選択、タイヤは前インターミディエイト、後カットスリックで、雨が上がった後のウエットでスタート。レース後半に雨が降り出しレース終了、優勝。
 第11戦サンマリノ(ミサノ)は602で転倒リタイア。平が優勝。

 ラバードが601を選択したのは、雨中のレース(ベルギー、イギリス)、ツィスティなコース(ドイツ)でした。加えてスペインで、レース中断後の再レースで601に乗っています。

 6回の優勝のうち601(パワーバルブ)によるものは2勝(スペイン、ドイツ)、602(無パワーバルブ)によるものが4勝(オーストリア、ユーゴスラビア、オランダ、スエーデン)です。

Carlos Lavado Yamaha YZR250 | With Phil Anysley | MCNewsの記述
He used this bike, which was fitted with power-valves, for wet weather races, winning two. His other bike, with no power-valves and used for dry races, had four wins.
の内、パワーバルブ、無パワーバルブの各々の優勝数そのものは正しいのですが、それ以外の記述は誤りです。パワーバルブエンジンによる2勝はウェットレースではなくドライレースで、無パワーバルブエンジンによる4勝のうち1勝(スエーデン)はウェットレースです。


(続く)



PR

ラバードの0W82のパワーバルブの有無とフレーム番号

 レーシングマシンのフレーム番号は

〇通関時に必要だから打刻
〇マシンを管理するために打刻

するだけのもので、フレームを交換しても、新フレーム番号は旧フレーム番号を踏襲することもあります。

 ただ、あるGPにおいて、同一フレーム番号のマシンが2台存在することは考えにくく、レーシングチームではマシンをフレーム番号で区別して管理、様々なデータを記録するのが通例です。

 
一般市販車ではナンバープレートが目立つ場所にあり、1台1台登録番号が異なりますが、レースの現場で、あるライダーに与えられた2台(以上)のマシンのゼッケン番号は同じなので、ゼッケン番号では区別できません。プラクティスではどちらか1台に「T」が付けられ区別可能になることがありますが、「T」マシンもレースでは「T」マークは剥がされ、もう1台と区別できなくなります。
 その一方で、フレームに打刻された小さなフレーム番号を確認するのは面倒です。

 そこで、レーシングチームの方針として、2台(以上)のマシンを区別するためにフェアリング、ステアリングトップブリッジ等に何らかの印が付けられることがあります。

 
 1986年のラバードのマシンを観察すると、第1戦スペインを除きフェアリングの前ゼッケン、テールカウルに短い黒線があります。

1本線
  

2本線
 

Carlos Lavado (highsider.com) の写真をトリミングしています。

  また、プラクティス時にゼッケン数字の傍に「T」があるマシンは、確認できた範囲では全て「2本線」でした。

 考えられる1本線・2本線とフレーム番号の関係は

YZR250-B-601→1本線/YZR250-B-602→2本線

YZR250-B-601→2本線/YZR250-B-602→1本線

のどちらかですが、前者の可能性が高いでしょう。後者ですと、チーム内でマシンの取り違えを起こす可能性が高まります。

 さて、ライダースクラブ誌1986-11のラバードのインタビュー記事でラバードは
パワーバルブエンジンと無パワーバルブエンジンの使い分けについて次のように語っており、ラバードがパワーバルブエンジン搭載車と無パワーバルブエンジン搭載車の2台をプラクティスで乗り比べていました。

「私のYZRは1台にはYPVSがつき、1台にはついてなかった。プラクティスで2台を交互に乗り込んで、そのサーキットに合った、タイムの良い方のマシンで走っていた」

 世界GP及び世界GP後の日本GP(鈴鹿)とスーパースプリント(富士)の写真、映像から、車体とエンジンのパワーバルブの有無を調べたところ、確認できた範囲では

1本線の0W82(おそらく601)
 パワーバルブエンジン

2本線の0W82(おそらく602) 無パワーバルブエンジン

でした。例えば、上に示した前ゼッケン「1本線」の写真はオランダGPプラクティス時のものですが(再掲)、

前ブレーキレバーの前方にパワーバルブコントローラーのプーリーから伸びる2本のケーブルが写っています。

 しかし、前回紹介した現存する602はパワーバルブで、私がかつて確認した601は無パワーバルブでした。

考えられることは
1 スーパースプリントの後、エンジンを積み替えた。

あるいは

2 実は1本線:602、2本線:601である。

 確たる証拠はありませんが、私は1の可能性が高いと思います。

(続く)



1986年型0W82のフレーム番号

 前回紹介したフレーム番号YZR250-B-602の他、次のフレーム番号の0W82を見たことがあります。

YZR250-B-601 無パワーバルブエンジン


YZR250-B-605 パワーバルブエンジン

   ゼッケン31のマルボロカラーは平忠彦選手のもの。

 1986年、世界GPで0W82を与えられたラバード、ヴィマー、平の1985年以前の世界GPでの実績、そして上に示したフレーム番号等から、3人に与えられた0W82のフレーム番号は次の通りだったと推定します。


YZR250-B-601   ラバード
YZR250-B-602 ラバード
YZR250-B-603 ヴィマー
YZR250-B-604 ヴィマー
YZR250-B-605 平
YZR250-B-606 平


 0W82は全日本選手権でも走り、長谷川嘉久、片山信二がシーズン当初から、終盤には奥村裕が加わり(復帰し)3人体制になります。そして片山選手がタイトルを手にしました。
 おそらく、

YZR250-B-607   YZR250-B-608 YZR250-B-609

 が国内テスト・全日本選手権用マシンに割り振られたフレーム番号だと思います。

(続く)

ヤマハ0W82(1985-86年型YZR250)

 ヤマハは1973年、1975年に250ccファクトリーマシン0W17を走らせましたが、1976年以降、市販レーサーTZ250、あるいはTZ250エンジン搭載車が250cc世界選手権を走るヤマハ車でした。そして、1982~84年はヤマハ車に乗るライダーがタイトルを手にしました。

 しかし、1985年、ホンダが世界選手権250ccクラスにファクトリーマシンRS250RW(NSR250)を登場させ、フレディー・スペンサーが第9戦までに7勝を挙げるようになると、ヤマハ市販レーサーベースのマシンではホンダに対抗することはできなくなってしまったのです。

 そして、第10戦イギリスで待望の250ccファクトリーマシン・0W82が登場、カルロス・ラバードに与えられました。 

 これは0W82の1986年シーズン前公開写真です。エンジンは0W81・500㏄V型4気筒のエンジンの右側半分のような250cc2軸60度V型2気筒で、後気筒は後方排気でテールカウル内にサイレンサーがあります。


 ラバードは第11戦スエーデンでも0W82に乗りましたが、この2GPでは優勝できず、最終戦サンマリノではTZ250に乗り優勝しました※。


 そして1986年、世界GPでヤマハはラバード、マーティン・ヴィマー、平忠彦の3人に0W82を与え、ラバードが6勝を挙げタイトルを手にし、平も最終戦サンマリノで優勝しました。

 この頃、ヤマハの2ストロークレーシングエンジンといえばパワーバルブ(YPVS:ヤマハ・パワー・バルブ・システム)が装着されるのが当然だったのですが、1986年型0W82にはパワーバルブの無い仕様もありました。

 上に示したシーズン前公開写真のマシンのエンジンは、無パワーバルブ仕様です。

 もちろん、実戦ではパワーバルブ仕様も登場しましたが、ラバードがレース毎にパワーバルブエンジンと無パワーバルブエンジンを使い分けしていたことが当時から知られていました。

 
 現存するYZR250-B-602(フレーム番号)です。
Carlos Lavado Yamaha YZR250 | With Phil Anysley | MCNews

 このエンジンはパワーバルブ仕様ですが、ラバードの無パワーバルブエンジンとの使い分けについて

He used this bike, which was fitted with power-valves, for wet weather races, winning two. His other bike, with no power-valves and used for dry races, had four wins.

 と書かれています。
 1986年、ラバードが優勝したのはスペイン、ドイツ、オーストリア、ユーゴスラビア、オランダ、スエーデンで、ウエットレースだったのはスエーデンだけです。
 他のウエットレースはベルギー、イギリスで、ベルギーではリタイア、イギリスでは2位でした。

 ですから、上の記述は誤りです。また、ウェットレースだったスエーデンでは無パワーバルブエンジンが使用されたものと考えています。
 ただ、

パワーバルブエンジン:2勝
無パワーバルブエンジン:4勝

に関しては、そのとおりだと考えます。
・・・・・・・・・・・

ヤマハ世界GP500勝記念サイト

Movistar Yamaha MotoGP |Bikes
では0W82の優勝回数を「8」、優勝年を「1985、1986」としています。これは1986年の0W82の7勝に加えて、1985年のサンマリノGPをカウントしたものです。

 誰が編纂したのか知りませんが、当時のヤマハ自身の記録どころか雑誌や年鑑の記事を調べることなく、「0W82は1985年イギリスグランプリで登場したのだから、それ以降の戦績は全て0W82によるもの」と決めつけて数字を「創造」したのでしょう。この程度の方が編纂していますので、他にもかなり誤りがあります。

 これは1985年最終戦サンマリノの映像です。


 2分40秒あたりから見ると、ラバードのマシン下側左右に排気サイレンサーが見え、テールカウルにサイレンサーが見えないので、明らかにTZ250( 直列2気筒)と分ります。ただし、1985年型TZ250はスチールパイプフレームですが、ラバードが乗ったのはアルミ・ツインチューブフレームのTZ250プロトタイプです。

(続く)




ヤマハ0W35(10) 高井幾次郎選手

 高井幾次郎選手が1978年スペインGPに参戦したことにほとんど触れられることがありません。ヤマハのWGP参戦50周年記念サイト中の1978年の頁にも高井選手の名前はありません。
 1978年 - レース情報 | ヤマハ発動機 (yamaha-motor.com)
 
 まず、別冊モーターサイクリスト79-8の記事を紹介します。


 「昨年(注:1978年)も、ヨーロッパへ今年を同じような目的で飛んだが、転倒によるケガのため、その結果は不振に終わった。初戦、フランス・イモラ(注:青字はポールリカールの誤り。4月9日開催のMOTO JOUNAL 200)での750㏄世界選手権は4位とまずまずの出足だったものの、スペインでのGP500では先行するマシンの転倒に巻き込まれ転倒骨折、すぐにベルギーに戻って手術。予定されたオーストリアGP500は観戦。続くフランスでのGP500は手術の糸が取れないまま練習開始したが再び転倒、イタリアでのGP500はケガの治らないうちに走り出したものの、手が満足に上がらない状態だったために、ドクターストップ」

 ライダースクラブ78-7中、スペインGPの記事では
「~高井が周遅れのマシンと接触転倒してしまい、鎖骨を折ってしまったのだ。惜しいことに、スタートで出遅れた高井が、やっとチェコット、シーン、ベーカーのセカンド・グループに追いついた直後の出来事だったのである」

 2誌の赤字の記述が異なっています。

 このレース、0W35Kに乗るロバーツ、セコット、片山、スズキXR22に乗るシーン、ヘネン、XR14に乗るベーカー、何れも完走していますので、ライダースクラブ誌の記述が正しいと思われます。
 なお、高井はスペインGPプラクティスでシーンに0.1秒遅れの6位でした。

 スペインGPでの転倒がなかったらどんな結果になったのかと思わざるを得ません。

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 4
5 7 8
13 14 18
20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

リンク

カテゴリー

フリーエリア

最新CM

[12/08 野田]
[12/08 野田]
[12/08 TFR_BIGMOSA]
[12/06 野田]
[12/06 TFR_BIGMOSA]
[12/06 野田]
[12/06 TFR_BIGMOSA]
[12/05 TFR_BIGMOSA]
[12/05 野田]
[12/05 TFR_BIGMOSA]

最新記事

最新TB

プロフィール

HN:
野田健一
性別:
男性

バーコード

RSS

ブログ内検索

アーカイブ

最古記事

P R

カウンター

アクセス解析